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魔力持ちだとバレちゃダメなんてムリゲーじゃん!

もう何回目になるかもわからない家族会議だが、集合時に全員がほほえんでるのは初めてだ。いや、ホント思い切って人体実験してみてよかったよ!

「キリエラの体から魔力を放出しきれば、小児喘息の症状の治癒も可能になるというのは本当にいいニュースです。我々が何の手がかりも見つけられなかったのに…。桐江さんには感謝してもしきれませんな」とご満悦のアル父上。

いやいや、そう言われると医者冥利につきますが、まだ解決しきれたわけじゃないところがツライ。


「はい、これで合の月に儀式をしても、また反発して別人と交換されちゃうってことが起ることは多分ないと思いますが、キリエラさんの体質が変わったわけではないので、これからも食事改善と体力増強は必要ですね。効果があった料理メニューとか筋トレ手順をメモしてありますから、キリーちゃんが戻ったらどうか続けてお試しください。それと、ピンチのときには魔力尽きさせて回復魔法で治療するという手が使えるとしても、魔力量が今のままとは限らないんですよね?」

そう、体重と同じように成長と同時に魔力量も増えるらしいのだ。今だって東京スカイツリー作って壊したぐらいでやっと底がみえてきたかな、ぐらいのキリエラちゃんの魔力がこれ以上増えたらどうするか、対策を練っておくべきだろう。


「常時魔力開放できるように、実験場でも作るか…」と腕を組むアル父上。

実験場?研究室みたいな?

「アル、実験場作るのは我が家であっても魔法省の認可がいるんじゃなかった?キリエラの魔力のことが知られたら…」と顔をしかめるウリエラママ。

え、なんかまずいの?


二人の顔を見比べてたら、後ろに控えてたいつも察しのいいリエルが教えてくれた。

「お嬢様、魔力量が多すぎる者は他国からスカウトされたり狙われたりするので、魔法省の監視が入る場合があるんです。まあ大抵は魔法省で高い地位につくとか国政に携わるとかするので、その監視も長い間ではないのですが」

するとウリエラママの表情がガラッと変わった。

「キリエラは普通の令嬢として過ごすのよ!なんで魔法省の奇人変人仲間にならないといけないの!」と、いきなりプンスカするウリエラママ。な、なんか魔法省の方々に偏見ありません?

「桐江さんの国には魔法がないんだよね。でも代わりになるものはあるだろう?」

代わりになるもの?燃料って意味なら石油とか電気とかだけど…。


「この国は自然がもたらすエネルギーに魔力を加えることで快適な生活を営めるようにしている。川の水をただ使うんじゃなく、浄化魔法をかけたり隆起魔法で流れを変えて生活水源にするとかね」

なるほどなるほど。でもこの話はどこに行くんだろう。

「で、その魔法にも一回掛けたら半永久的に効果が続くものと、ちょこちょこ掛け直さなきゃならないものがある。桐江さんの国でも動力源にメンテナンスが必要になることが、多分あると思うのだが?」


ありますあります。病院のクーラーはちょっと掃除を怠ると真夏日にストライキしやがるからね!ここにきてやっとアル父上の言いたいことが何となく分かってきた。

「魔力量の多いものは魔法省でそのメンテナンス係にされるってことですか?」

困ったような顔をしてアル父上がうなずく。

「我々公爵のような貴族は、大抵は魔力を持ってても領地経営とかの建前があるので、魔法省勤めを強要されることはないんだがね。万一の場合、たとえば大規模な災害が起きたときとかに、強制的に徴用されることはあるが、そのくらいなんだ。でも半端なく魔力量の多い者は、貴族であろうと容赦なく魔法省からスカウトが来ることが多い。結構子どもの頃から魔力が多いか少ないかは分かるものでね。で、ウリエラが嫌ってるのは彼らが超しつこいからで…」

「しつこいなんてものじゃないのよ、アル!ファルミ侯爵令嬢の話はあなたも知ってるでしょ!あんな目に私はキリーを遭わせたくないの!絶対!」

何があったんだろう、ファルミ家…。おそるおそる聞いてみたら、なるほどちょっとひどい話だった。


この世界では辺境に魔物が出る。作物を荒らし人を襲うたぐいで、昔の日本での狼みたいなものだと思われる。それが5年前ぐらいはかなり頻繁に出没するようになって、そこの住人はみな困っていたらしい。魔法省でも魔物の侵入を防ぐために色々やってたらしいが、これこそちょこちょこメンテナンスが必要なタイプなもので魔力も人手も足りなくてどうしよう、ってなってたようだ。


ちょうどその頃ファルミ侯爵令嬢は適齢期、婚約も整った時分だったのだがいきなり彼女の婚約者が辺境対策本部に飛ばされた。婚約者が子爵家の出だったのがネックだったらしく、侯爵家の口添えがあっても断ることができなかったそうだ。そりゃそうだ、いわば王命だしね。だけどその婚約者殿は文官で武力にも魔法にもからっきし自信がなかったそうで、魔物にうっかり遭遇して戦って命を落とす前にと涙ながらに侯爵令嬢に婚約破棄を申し入れたらしい。一応下の身分から申し出るって相当な覚悟だよね、私が学んだこの世界の常識からすると。


その心根に打たれた令嬢は、魔法省に直談判して自分も辺境担当魔法師として婚約者の任期中限定ということで派遣してもらい、毎日毎夜魔物対策に明け暮れたそうだ。

「あれだけ小さい頃からしつっこい魔法省の誘いを、ファルミ侯爵がシャットダウンしてたっていうのに、本当に諦めが悪いったらないわよ。恋人同士を引き裂く真似までして無理やり魔法を使う役回りをさせるなんて。彼女ふっくらしたご令嬢だったのに、王都に戻ってきたときはガリガリになってたのよ!私のキリーがあんな目にあったらと思うと…」と目元を赤くしながら涙ぐむウリエラママ。


「あのときもファルミ侯爵は、魔石生産量を増やすことで何とかならないかと魔法省に打診したらしいが、辺境では予測ができないことが多すぎるから実地で行ってもらわないとダメって言われたらしいしなぁ」とアル父上もぼやく。

魔石?魔石が関係あるんだろうか?

またまた私の表情を読んだらしいリエルが教えてくれた。

「いま家庭で使われている魔石は、奥様や旦那様のような魔力持ちの方々が義務として毎月数を定めて制作しているものなのです。たとえばお嬢様の部屋に置かれている簡易加湿器は、奥様が作られた水魔石と旦那様が作られた火魔石を利用してます」

そうなんだ!貴族ってだけで暮らせるわけじゃないのね、この世界。よくよく聞くと、国に収める分以外に余分に作ったものは販売して良いそうで、それも公爵家の収入源の一つになっているという。

魔石、魔石かぁ。これ何とか利用できないかなぁ?


「あの、キリエラさんの魔力の話に戻りますけど、魔力尽きさせるために毎回土山を築いてたら、いずれ魔法省の方々に伝わると思います。その実験場を作るっていうのもまずいんですよね。だったらお二人と同じやり方で魔石に込めるのはどうでしょうか?」

我ながらグッドアイデアだと思ったのだが、そうでもない?

目の前の二人は首を傾げている。どうでもいいけど同じ角度に傾げているのがさすが夫婦って感じだ。

「私とウリエラの方法だと、魔力が尽きるまでやるのは、かなりの時間と大量の魔石が必要そうな気がするなぁ」とアル父上。となりでウリエラママもうんうん頷いている。どういうこと?


「まず魔石を、そうだな50個用意してテーブルの上に並べる。ざっと言うとその全体にブワッと中級火魔法をかける感じだね。こうするとだいたい1ヶ月ぐらいはお湯を沸かすぐらいの熱を発する火魔石ができるのでそれを封鎖箱に入れて保管し、必要なときに魔力を持つ者が触れて使うんだ。キリエラの魔力量だと、やってみないと分からないけど、多分1ヶ月使える以上の魔力が注入されることになるだろうから、魔石のほうが耐えられるのかな…」

ここでも魔力放出コントロールの問題かぁ。なんとなくだけど魔力を流すときって一気注入って感じなんだよね、私の場合。点滴みたいに落ちる速度を調整できる機能がついてればいいんだけど。病院にいたとき嫌がるお子様たちに有無を言わせず一息に注射してたことを思い出して、昔も今も変わらないじゃんとちょっとヘコむ。


「ちなみに、魔石の方を強くするとか、大量の魔力受け入れ容量を持つ魔石を入手するなんてこと、できますか?」

「そういう容量が大きい魔石は辺境の結界とか王宮周辺の守りに使われるから、出た時点でほぼ王家と魔法省のものになるのよ、残念だけど。ええと、魔石を強くするっていうのは、できるのかしら、アル?」あやふやな口調で問いかけるウリエルママ。

「そういう発想をしたことがないからなぁ。桐江さんは別の世界から来たせいか、面白いことを思いつきますね。通常強化魔法は生物にかけるものだが…。石には効くのかなぁ」とアル父上も自信なさげだ。

「わかりました。なるべく見られないようなところでちょっと実験してみます。ちなみに今回荒らしちゃった森ですがどうなってますか」

「あ、あそこですか。突風被害にあったということにしてそのままにしてますよ。というか元に戻すためには何人か魔法師を呼ばないと、とてもできないので」

サーセン、私もあんなことになるとは思わなかったんです。でもこれでよい実験場ができたとも言える。


「じゃ、あそこでこっそり魔石とか利用して大量に魔力注入する方法、探してみます。リエル、また悪いけどつきあってね」

にっこり笑いかけながら言うと、リエルは渋い顔をしながらも頷く。

「あそこなら屋敷からも周囲からも見られることはありませんからよいですが…。でもちゃんと日焼け止めを塗って、体調が悪くなったら、すぐにおやめになるとどうかお約束ください!」

わかったわかったと心配顔のリエルをいなし、第ウン回家族会議は終了となった。次回も実りある報告会にしたいものだよ、ホント。


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