路地のアイスと独占グミ(百合注意)
真夜中に虚しく唸る室外機を机代わりにコンビニ袋、缶ビール。グミとアイスが乗せられていた。
缶ビールを呷ってもほとんど飲み干されて味はよくわからなかった。一方のアイスは汗をかいて室外機を困らせている。頭の上の冷たい水は天雨に野ざらし路地裏の雨とはまたどうにも違うらしい。
お菓子の趣味はなかなか悪くない。私の餌付けを忘れずにいたであろうチョイスに感心しつつ、動物を象ったグミを直接舌に乗せる。
「赤ちゃんを作る部屋にバイ菌が入ったの」
犯人は私だった。
しいは最後まで口をつぐんだ。直接会うのは小学生以来、本当にそれっきりだ。
「しいちゃんが家出したの」
先生が娘の面倒ごとの電話を寄越したのが夜中11時半過ぎ。しいがコンビニで道草食ってここにたどり着くまで私は塾のある建物の2階ベランダからしいがやってくるのを見守る羽目になった。
泥酔して帰宅し玄関に寝そべった娘に避妊だけはしなさいと先生が声を掛けたのに対し、しいは思い出したくない記憶を振りかざしたそうだ。
室外機の唸り声に似た可愛げの無いいびきが暗闇に響く。
塾の勉強に追い付けなくなった。私の友達グループの話に上手くまざれなかった。でも私のやることにあれこれと口を挟んだ。いじめの収拾がつかなくなった。男子の告白にしいはあっさりとOKの返事をした。
小学生の頃に抱いた嫉妬と独占がグミの甘さと交じり舌から脳に信号を送る。唾液は支配を欲し、鼓膜は悲鳴を欲した。
全てはわたしのために
胸が膨らむのも、血を吐くのも、背が伸びるのも、生え揃えるのも
全てはわたしのために
地面に寝転がったしいを踏まないように跨がる。手狭な隙間でロマンチックに欠けていてる。どうしようやっぱり部屋に連れ込みたいな。
むくり
急にしいが塾の壁に寄りかかりながら立とうとする。突発的な行動に私は戸惑いつつも邪魔にならないように体をそらしたが、振り上げた腕をぶつけた拍子に今度は私の身体にも絡み付いてくる。
煩わしい手つきを鎮圧するも、こと切れた蝉の幼虫さながら抱きついたまま固まってしまう。もたれ掛かったその重きを私はいったいいつ捨ててしまったのだろうか。
いつまでも抱き締めたかった。あたまを撫でたら無邪気に笑うしいのそばにずっと居たかった。何気なく喋っていくらでも世話を焼きたかった。
全ては彼女のために
恋バナに花を咲かせたかった。受験勉強の苦しみを互いに分かち合いたかった。一緒に夢を語らいたかった。
現実はなかなか上手く行かない。
しいがちゃんと起きたら、溶けてしまわぬよう私の部屋に連れ去るぐらいは許してもらいたいと思う。




