表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣国に輿入れした王女付きモフモフ侍女ですが、本当の王女は私なんです〜立場と声を奪われましたが、命の危機に晒されているので傍観します〜  作者: 江本マシメサ
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/80

コミック第4巻発売記念『王妃業を頑張るルヴィ』

 王宮では月に一度、国内の有力貴族のご夫人方が集まって、お茶会が開かれる。

 正直、苦手な部類の集まりだった。

 そんな私の気持ちを陛下は察したようで、「ルヴィ、お茶会をなくそうか」なんて提案をしてくれたが、即座に断った。

 王宮でのお茶会は歴史ある定例行事。私の我が儘でなくすわけにはいかないから。

 参加する大貴族のご夫人方は、年上のお方ばかり。

 全身から自信が溢れていて、物怖じしそうになる。

 けれども私が臆すれば、王妃らしくないと思われてしまう。

 堂々としていなければ、と自らを揮い立たせるのだ。

 本当の自分を押し殺し、王妃として相応しい振る舞いをする。

 そんなお茶会が今日も今日とて行われるのだ。

 大きな円卓に、十名ほどのご夫人方が集まっていた。

 流行りのお菓子に、香り高い紅茶、それから品のあるテーブルウェア。

 今日のために一生懸命、侍女と選んだ。

 お気に召していただけるか、ドキドキである。


「王妃様、今日のお菓子、とってもおいしいですわ」

「本当に! 紅茶もすばらしくて」

「食器も美しいですわ」


 合格をいただけたようで、ほっと胸をなで下ろす。

 それから一人一人話しかけ、ドレスや髪型、宝飾品などを褒めたり、子どもの近況などを聞いたり、と一生懸命話題を振る。

 ご夫人方から王妃に話しかけてはいけない、という慣習があるようで、気の利いた会話を展開させなければならないのだ。


 そんな中、初めて目にする、ご夫人方の中では比較的若い新顔に気付く。

 彼女の名前はマリーア。アンドン侯爵の後妻で、貫禄があるものの二十歳に満たないという。地方領主の三女で、社交界にはあまり馴染めていない、と侍女が個人的な情報を耳打ちしてくれた。

 なんて声をかけようか、なんて考えている間に、マリーアのほうから話しかけてしまった。


「王妃様! 初めまして! マリーアと申します!」


 場の空気が一気に冷え込んだ。

 ご夫人のほうから話しかけてはいけないルールがあるのに、彼女は知らなかったのか、破ってしまったのだ。

 こういう場合、無視するのがいいのだろう。

 けれども子犬みたいなきゅるきゅるの瞳で見つめる彼女を、無視できない。

 こうなったら、と苦し紛れの対応を返す。


「元気なお方ですこと」


 発言は聞かなかったことにし、彼女から受ける印象を言ってみたのだ。

 間違った対応ではなかったようで、ご夫人方からの安堵の空気が伝わってきた。

 早く話しかけてあげなければ、と思った瞬間、マリーアは話題を振ってくる。


「あの、王妃様はお休みの日とか、何をされているのですか!?」


 内心、頭を抱える。

 一度目は許されても、二度目は許されない。

 ご夫人方のリーダー格であるレリー公爵夫人がキッと眉をつり上げ、マリーアを睨み付ける。

 ここで彼女がマリーアを怒ったら、お茶会の空気は悪くなるだろう。

 早くなんとかしなくては。

 そう思いながら、私は話し始める。


「今日は私の趣味について、お話しましょう」


 あくまでもマリーアに聞かれたからではなく、自分から話し始めるというていで語り始める。


「私は陛下が幻獣達のために作った果樹園で、果物を収穫したり、その果物を使ってお菓子を作ったりするのが趣味で」

「ええっ、すごい! 私もやってみたいです」


 マリーアの無邪気な反応を聞いたご夫人方が、天井を仰いでいた。

 もうどうにでもなれ。

 そんな気持ちで話を続ける。


「アンドン侯爵夫人もぜひ」

「ありがとうございます」


 この場限りの会話だと思っていたのだが、後日、マリーアは本当に果樹園にやってきた。

 お茶会のメンバーであるご夫人方を引き連れて。


「うわー、王都にこんな場所があるんですね! 私の故郷みたいです!」


 マリーアは果樹園をお気に召したようだが、ご夫人方は草が生い茂り、蜜蜂が行き交うこの場に戸惑っているように見えた。


「その、みなさん、どうか無理をせず」

「王妃様、大丈夫です! 私、故郷では収穫期にいろいろお手伝いをしていたので!」


 マリーアは大丈夫でも、他のご夫人方は大丈夫ではないだろう。

 その後、マリーアは元気いっぱい果物を収穫し、ジャム作りにまで参加していた。

 他のご夫人方が早々に音を上げ、サンルームで休んでいたようだ。


 そんな感じで、マリーアの根性がご夫人方に認められたのか、天真爛漫な様子を咎められることはなくなったようだ。

 私も、彼女の生き方を見習って、他の人達の目を気にするのは止めよう。

 そんな学びのある出会いだった。

挿絵(By みてみん)

本日、コミカライズ最新4巻の発売日です!

ぜひぜひ、お手に取っていただけたら嬉しく思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ