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隣国に輿入れした王女付きモフモフ侍女ですが、本当の王女は私なんです〜立場と声を奪われましたが、命の危機に晒されているので傍観します〜  作者: 江本マシメサ
第五章 幻獣のために

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獣人王女エルヴィールは、怪しい集まりの実態を目にする

 参加者は五十名前後だろうか。念のため、可能な限り幻獣の種類と顔を記憶しておく。

 各々、楽しげな様子で会話に勤しんでいるようだ。

 そっと、耳を傾けてみる。


「今日はどんな幻獣が入るのか。予算はどれくらいなんだい?」

「ご主人様はお金を惜しまないとおっしゃっていました」


 幻獣が入る? 予算? お金を惜しまない?

 いったい、なんの話なのか。

 ここは、幻獣を愛する者達の集まりなのに。

 幻獣の様子も確認してみる。大型の幻獣は首輪を付けられ、鎖で繋がれていた。口輪を装着している幻獣もいる。

 ヴァイスやヒンメルのような瞳の輝きはいっさいない。契約できつく縛られているからだろうか?

 どくん、どくんと胸が嫌な感じに脈打つ。

 これからいったい何が始まるというのか。ハラハラしながら時を待つ。

 幻獣達が酷い目に遭っているのではないのかと考えたら、胸がじくりと痛む。

 震える手をぎゅっと握りしめていたら、アルが指先をそっと重ねてくれた。

 顔を見上げると、大丈夫、心配はいらないとばかりに優しく微笑んでくれた。

 ホッとしたのと同時に、アルが絶世の美女なので笑いそうになってしまった。

 アルはなぜわらわれたのかわからなかったのか、ぐっと接近して囁く。


「ヴィル、何がおかしかったのかな? 僕に教えてくれ」


 魔法で声色を変えているのに、相手がアルだと意識しているからか、盛大に照れてしまう。帽子から耳が出ていたら、左右にぴこぴこと揺れていただろう。

 なんでもない、ありがとうと手のひらに書いておいた。

 アルのおかげで恐怖心が薄くなったような気がした。

 そうこうしているうちに、ステージに司会者のような男性が現れる。

 その男性を見た瞬間、アルが小さな声で呟いた。


「あの男は!」


 アルの知り合いの男性なのか。

 心当たりがないか、私もじっと見つめる。他の獣人よりも鼻が利いたり、耳がよかったりするわけではないが、もしかしたら知っている人かもしれない。


 声、話し方の癖、体格、立ち姿など、観察しているうちにピンときてしまう。


「――ッ!」


 彼はよく、頭巾で顔を隠していた。だから、気づいたのかもしれない。

 あの男は、ルビーの愛人である魔法使いだ。

 アルは私が反応したのを察したようで、手のひらを差し出してくる。

 そこに気づいたことを書き込んだ。

 彼は例の男である。それだけでアルに伝わったようだ。

 アルは懐にしまい込んでいた鳥の形をした小さな紙を取り出し、ふっと息を吹きかける。すると、パタパタと羽が動き始めた。手のひらから離れた瞬間、姿は消えてなくなる。

 アルが得意とする鳥翰魔法だが、隠密機能もあるようだ。

 きっと外に待機させている別部隊に、指示を飛ばしたに違いない。


 司会者の男は内容のない幻獣への愛を語っていたようだが、途中から注意事項へ移っていたようだ。

 なぜか、拍節器メトロノームのような装置を手にしていて、カチコチと音を鳴らしながら喋っている。

 あれはいったいなんなのか。アルに魔法か何かかと聞いてみるが、ただの拍節器だという。物音だけで発現させる魔法はこの世に存在しないようだ。

 変化は私達ではなく、ヴァイスやヒンメルに現れる。大あくびをして、眠りはじめてしまったのだ。彼女達だけではない。他の幻獣も、眠っているように見えた。

 あの拍節器は幻獣の眠りを誘うものなのか。アルもよくわからないという。


「――っ!!」


 ふいに、記憶が甦る。

 私も以前、彼に似たようなものを見せられたような気がした。

 それは拍節器ではなく――なんだっただろうか。

 記憶に霞みがかかっているようで、よく思い出せない。


 司会者の男は明るい声で叫んだ。


「さあさ、幻獣達がリラックスしたところで、皆様お待ちの幻獣譲渡会を開始します」


 幻獣譲渡会とはいったい――?

 アルも把握していないし、聞いたこともないという。

 幻獣を発見したらまず、幻獣保護局に連絡する。保護が必要であればそのまま捕獲し、問題ないようであればそのまま見守る。

 その場で保護せずとも、いつでも助けられるよう、生息を把握しておくために連絡を促しているのだ。

 幻獣保護局が把握していない幻獣は、どこからか闇ルートを通じて入手したものに違いない。

 最初に登場したのは、檻に入れられたジュリスだった。

 拍節器の音を聞かされていたからか、ぐっすり眠っている。


「まずは、西の森で迷子になっていたジュリスの子どもです。金貨一枚から始めましょう」


 参加者達が次々と、手を上げて金貨の枚数を上げていく。

 これは譲渡ではなく、競りだろう。

 くらり、と目眩を覚えた。だが、首をぶんぶんと横に振って意識を保つ。

 しっかりしないといけない。競り落とした人の特徴を、しっかり暗記しておかなくては。


 それから十匹以上の幻獣達が競り落とされていく。

 ルビーの愛人となってこの国へやってきた魔法使いは、幻獣を利用した商売が目的だったのか。

 絶対に許せない。怒りがふつふつとわき上がってくる。

 最後に目玉だと言って、白銀のワイバーンが登場した。

 参加者達は熱狂し、ステージに駆け寄っていく。

 このタイミングで、アルは外に出ようと耳元で囁いた。

 司会者の男を拘束するため、行動に出るのだろう。

 ついに、彼と対面する瞬間がやってきそうだ。

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