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隣国に輿入れした王女付きモフモフ侍女ですが、本当の王女は私なんです〜立場と声を奪われましたが、命の危機に晒されているので傍観します〜  作者: 江本マシメサ
第五章 幻獣のために

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獣人王女エルヴィールは、今日も働く

本日から隔日更新でお届けします。

2話更新しておりますが、1話はこれまでのお話を書いたものです。

 秋はすっかり深まり、紅葉した果樹の葉がはらはらと舞い落ちていく。

 吹く風にも冷たさが混ざるようになった。

 冬の気配を感じるようになる。

 ツークフォーゲルはファストゥよりも北に位置するため、冬は酷く冷え込むらしい。

 私が風邪を引かないようにと、閣下は毛皮のコートを何着も贈ってくれた。こんなモコモコな恰好では働けないだろう。

 私は山猫獣人であるため、寒さには強いほうだ。山猫獣人は山間部を生活拠点とする一族である。厳しい冬山での暮らしに耐えられるように、他の獣人よりも耐寒性があるに違いない。

 そう訴えても、閣下は「それでも心配なんだよ」などと言っていた。いささか過保護ではないのか。閣下がいないときにウルリケに聞いてみたら、あれは閣下の愛なのだろうと返される。

 なんとなく気恥ずかしい気持ちになってしまったのは言うまでもない。


 閣下とは朝と晩、食事を共にしている。仕事で遅くなる日はかならずカードと一輪の花が届くのだ。

 言付けだけでいいと伝えても、自分の言葉で伝えたいと主張し、カードと花を贈ってくれた。

 花は枯れてしまうが、カードは手元に残り続ける。

 レナータが贈ってくれたカードケースに保管し、時折美しいカードと閣下の文字を眺めるのが癒やしの時間であった。


 ◇◇◇


 果樹園ではブドウの収穫も始まる。

 皮が薄く、傷みやすいブドウは他の果物より慎重な手つきで摘み取らなければならない。

 保存についても、常温保存には不向きで、魔石冷蔵庫の中に保存しても四、五日くらいしかもたない。

 保存が利かないからといって、幻獣にブドウばかり与えるのは禁じられている。

 ブドウは他の果物よりも手間暇がかかり、温室栽培では上手く育たない。そのため、ブドウばかり与えてブドウしか食べない状況になったら困るのだ。

 ちなみに魔法で凍らせたブドウは四ヶ月ほどもつ。ただ、維持するのが冷蔵に比べて費用がかかるので、冷凍保存に回すのはほんの一部らしい。 

 あとのブドウはどうするのか。ネリーに質問すると、丁寧に教えてくれた。


「乾燥させるのさ。乾燥状態にすると、半年以上もつ。幻獣も乾燥させたブドウを好む個体が多いから、いいこと尽くしってわけ」


 なるほどと思い、手を叩いて賞賛する。隣で話を聞いていたレナータも「勉強になります」と呟いていた。

 ヴァイスやヒンメルも、こくこくと頷いていた。


 今日は乾燥ブドウの作り方を教えてくれるらしい。

 その方法とは、〝自然乾燥〟だという。


「まず、ブドウの房を四つに切り分ける」


 ハサミを使い、ぱちん、ぱちんと切っていった。


「切り分けたブドウの房は、殺菌消毒をするために塩水でよく洗うんだ」


 湯冷ましに塩を溶かして混ぜたもので、ブドウの房を洗っていく。



「洗ったブドウは紐に繋げて、太陽の光が当たって、風通しのいい場所に干しておくんだ」


 手先が器用なヴァイスは、次々とブドウを紐で縛っていった。ヒンメルはブドウをせっせと運び、器用に竿へと引っかける。

 洗濯物を干すように、長い竿にブドウを干していった。ずらりと並んだ様子は、まるでブドウのカーテンである。

 竿の周囲にはネットを張る。これがないと、鳥が食べ尽くしてしまうらしい。


「あとは雨も大敵だ。濡れてしまったら、せっかくのブドウがカビてしまう」


 干しぶどうは手間暇かけて作られているようだ。


「自然乾燥が難しいときは、窯でカラカラになるまで焼いてしまうんだ。これはあまり量は作れない上に、燃料がかかるからあまり使わない手なんだけれどね」


 試しにやってみたらいいと、ネリーは作り方を丁寧に教えてくれた。

 私はブドウを買い取り、離宮で干しぶどう作りに挑む。


 本日も、ウルリケとヴァイスを伴い、蒸留室で調理を開始する。

 ちなみに、ヒンメルとレナータは部屋で追いかけっこをするらしい。最近のブームだという。


 まず、ブドウを房から取って塩水で洗って殺菌消毒させる。この状態のブドウを一時間半ほど焼くのだ。

 焼けるのを待つ間、もうひと品。大粒のブドウを使う。

 ヴァイスはブドウを房から取る作業を手伝ってくれた。

 皮を剥いて皮の果汁をしっかり絞る。この皮は捨てるのではなく、煮沸消毒させた布に包んで一緒に煮込むのだ。

 砂糖を加え、ぐつぐつ煮込んでいく。灰汁が出てきたらしっかり掬っておく。

 つやつやの色合いになったらレモンを搾る。ブドウジャムの完成だ。

 瓶に詰めたら、三ヶ月ほど保存が利くらしい。

 蒸留室の棚に、新たなジャムが加わった。


「ルヴィ様、ジャムやコンポートのコレクションもずいぶんと増えましたね」


 色とりどりの、果物の美しい加工品が並んでいる。

 春のサクランボにイチゴ、夏のブルーベリーにラズベリー、桃、秋のリンゴに栗、キウイなどなど。

 冬になったらもっと数も増えるだろう。


 なんて話をしているうちに、ブドウが焼き上がった。しわしわになったブドウはさらに天日干しが必要らしい。

 ヒンメルやレナータに見守られながら、バルコニーにブドウを干す。


 今日作ったブドウジャムは夕食のデザートに使ってもらう予定だ。閣下の反応が楽しみである。

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