54話 鑑定
異世界生活 1245日目
神界石を開拓町に持ち帰り、現在教会を鋭意建設中だ。ガンテツが張り切っている。
アヤメに教会の定義を聞いたところ、聖堂と神界石があれば教会と認められるらしい。案外大雑把なのな。
それと、アヤメのために巫用に作った巫女服だが、フォルカスが気に入ってしまった。
スミスに頼んで、自分用に作らせた巫女服を普段着として着ている。
日本人よりの顔と少女の見た目、小さい角が巫女服と絶妙に合っていた。
そういえばブリギットによると俺はまだタレントを使いこなせていないそうだ。
加護とか言っていたか、火魔法以外も使えるのかな?
「自分のタレントが分かればなぁ」
「わだす、分かりますよ」
俺のひとり言を聞いていたアヤメが答えた。
「教会の規定で、本当はお布施が必要なんですが、教会が出来るまでやる事ないから、皆さん一回ずつならやりますよだ。教会の人には内緒だすよ」
※
中央の大木がある広場には長蛇の列が出来ていた。
噂を聞きつけた開拓町の住民が集まったからだ。
アヤメは諦めて休憩を挟みながら、次々と鑑定していく。まずは言い出しっぺである俺に近い人からだ。
ウルフ
1.変化
ウルフのタレントは予想通りだ。
今は狼と人にしか変化出来ないが、そのうち選択肢は増えるのだろうか。一つのタレントで対応力が増えるのは強い。今のままでも十二分に強いが、さらに将来性に期待がもてる。
ローズ
1.暗殺者
ローズは何やら物騒なタレントを持っていた。諜報や戦闘もこなす、汎用的な能力という認識だったが…。
ローズも怒らせないようにしよう。怒らせないリストがどんどん増えていくな。うちの女性陣は全く頼もしい。
エキドナ
1.闇魔法
エキドナは闇魔法だ。これは分かっていたことだ。
敵の視界を奪う支援魔法から最近では攻撃魔法のバリエーションも増えてきた。
仲間を傷つけられ、キレた時のエキドナは本当に怖い。視界を封じられ、ジワジワと蛇のように首を締められるかのように倒されていった敵には同情さえ覚える。
もちろん怒らせないリストに入っている。普段は冗談をよく言っているが、仲間思いの優しい性格だ。
マントス
1.変調者
マントスは使い勝手は悪いが、ハマれば強い。そんなタレントだったはずだ。
魔王軍のアジトに潜入した際、ヴォルガと二人だけで、怪物クラーケンを足止めしたのは、このタレントのおかげだろう。
発動まで時間がかかるのと、感情などに左右されるためムラっけがあるのが短所だが、それを補う有り余るだけの強さがあると思う。感情の部分をどうコントロールしていくかが今後の課題だ。
フォルカス
1.魔素操作
フォルカスは自身でも把握していた通りだ。魔王軍の中にも鑑定ができる魔族が居たらしい。
俺達の中では、フォルカスが最も自身のタレントを使いこなしていると思う。見習うことは多い、これからも色々と教えてもらおう。
ヴォルガ
1.ベレヌスの加護
ヴォルガは太陽の加護と呼んでいたが、鑑定してみるとベレヌスと神様の名前が付いていた。
外と交流せずに暮らしてきたため、鑑定の機会がなかったんだろう。口伝により、呼び方が変わることはよくある。
族長が交代した際に、この加護も俺に引き継がれたと思っていたが、そうではないらしい。族長交代前と後で、変わらず魔法が使えたのは、加護がそのままだったからだろう。
ニーナ
1.竜化
ニーナはやっぱりというか、竜人の線が濃厚になった。当の本人は、まだやり方が分からないみたいだが、町で竜化するのは控えてもらいたい。町への被害が予想できないからな。
ニーナが竜人だったとしても、扱いは変わらない。これからも俺たち町の一員として、過ごしてもらうつもりだ。
ついでに茜も鑑定してもらった。
茜
1.吸収(仮)
仮になっていた!
前回は『吸収(未定着)』だったはずだ。少しは良くなっているってことかな。
そういえば肝心の自分を忘れていた。
発端は自分のタレントを知りたいがためだった。
守
1.守護者
2.血液操作
3.ブリギットの加護
三つ、ある。
何度確認しても三つもある。
まず、一つ目の守護者だ。これはたぶん俺が元々持っていたタレントだろう。
やたら打たれ強く、回復が速いのはこの能力のおかげだ。俺が今まで生き残れたのもこいつのおかげだろう。最初は攻撃向けのタレントではないから、ガッカリしたが今ではこのタレントで本当に良かったと思っている。
カザンも言っていたが、生き延びることが大事だ。無理そうなら逃げてもいいんだ。反省を活かして、また次回挑戦すればいい。
二つ目は、血液操作だ。攻撃面で、俺のメインとなるタレントだ。
ケルベロスに殺されかけた時に頭に響いた声で、名前だけは知っていた。あの時は朦朧としていたが、こんな名前だったと思う。
汎用的でアイデア次第で、色々とバリエーションがでる素晴らしいタレントだと思う。フォルカスから魔素の扱いを教えてもらってから、さらに使いやすさが増した気がする。
問題は最後、三つ目の『ブリギットの加護』だ。
ブリギットとは神界石を取りに行ったときにアヤメを介して、会った神様で間違いない。
ブリギットとの会話の中で分かったのは、俺は太陽の民の里、祠の中でベレヌス神から加護を授かったと思っていた。
だが、実際はそこで貰った加護はベレヌス神のものではなく、ブリギット神だったってことだ。全く面識のない神からいきなり加護が貰えるものなのか?色々と疑問が残る。質問したかったが、降神できる時間は限られているらしい、上手く聞けずに終わってしまった。次に会ったら小一時間ほど問いただしたい。
加護であれば、俺は火魔法しか使えていないが、本来であればヴォルガのように火魔法や光魔法といった複数の能力が使えてもおかしくはない。ブリギットは俺が加護を使いこなせていないと言っていた。ヒントがないことには前に進めなそうな感覚がある。やはり問いただしたい、質問攻めにしたい。
そして、久しぶりに実験したくてウズウズする。カザンがまた実験台になってくれないかなぁ。
異世界日記 1245日目
アヤメがみんなを鑑定してくれた。
これまで疑問に思っていたタレントが分かってスッキリだ。
お布施を払ったら一体いくらになるかは想像したくない。アヤメちゃん大丈夫なのかな、教会にバレたら怒られたりしないか心配だ。
それより俺のタレントが三つもあった。すごいことらしい。手放しでは喜べず、色々と疑問と不安を残す結果となったのはいうまでもない。




