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異世界育児  作者: 葉山 友貴
第一章 育児奮闘・開拓編
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03話 試行錯誤

 異世界生活 3日目開始。


 昨日はゴブリンと戦った。

 なんとか勝てたが、消耗が激しい。体にダメージはなかったが、精神的に疲れた。


 自宅まで戻り、茜を風呂に入れ、ミルクをあげたら俺自身は夜飯を食べずに即寝してしまった。


 ミルクは飲ませた直後に風呂に入れると、ミルクを吐いてしまうため、三十分から一時間経ってからの風呂が無難だ。

 昨日は疲れ過ぎたため、腹減りでぐずったまま先に風呂に入れて、ミルクを飲ませた。


 さて、反省会。いやー昨日の活躍はなんといってもウルフでしょう。地味に活躍するいぶし銀のような働きだよ、いっそのこと銀さんと呼ぼうか。寝起きに約束の缶詰を催促された。チッ、忘れてなかったか。


 それから課題というか、分からないことが多い。

 ゴブリンの攻撃がなぜ俺に効かなかったのか、少しずつ検証していこう。


 あと茜を連れて行くのは、やめておこう。

 戦闘が始まれば危険なのは明らかだ。昨日なんて明らかに茜を狙ってきたからな。ゴブリンに頭のいいイメージはないが、それでも弱い者を狙うだけの知恵はあるという事だ。それなら、多少のリスクはあるが、外からは隠蔽されているこの家にいた方が安全だ。

 ただ長時間一人で留守番はさせておかないから、最大一時間を目安に今日は探索しよう。


 まずは水の確保だ。昨日西に行ったところに川辺があったはずだ。

 空のペットボトルを何本か持って行こう。煮沸させて飲めるか、ウルフに飲ませてみよう。

 あと昨日拾った木の実、果実シリーズも食べさせてあげよう。決して毒味ではない。感謝の気持ちなのだ。

 勘の良いウルフがこちらをジトっと睨んでいる。



 そんな事を口に出しながら考えていると、川辺に着いた。周りを注意深く見渡す。今日は…ゴブリンは…いない。まずは、一安心。


 今日の武器は、昨日ゲットした棍棒一本とバットを持ってきている。

 棍棒はあくまで予備だ。バットの方がグリップもいいし、重心も安定していて振りやすい。草野球チームに所属しているだけはある。

 棍棒は手元に武器がない状況を避けるためだ。木を削って作られたようなゴブリン棍棒は作りが荒いが、ないよりましだろう。


 川辺に座り込み、ペットボトルに水を入れる地味作業を繰り返す。その時、ウルフが顔を上げ、気配を察知する。彼はある一点を見つめていた。


 森の中から現れたそれは、白いモフモフで頭に小さいツノを携えた可愛らしい見た目をしていた。

 ほぼウサギだな。ホーンラビットとでも呼ぼうか。

 ツノといっても短く、何かを貫けそうには見えない。昨日のゴブリンよりも弱そうだ。


 ちょうどいい。

 こいつで、検証するとしよう。


「ウルフ!こっちにこい!」


 呼び寄せたウルフを抱き寄せたまま、ホーンラビットの注意を引く。

 そして、こちらに駆けてくるウサギに向けてウルフを…、ふわりと放り投げた。


 うそだろ?って顔をしつつ放物線を描きながら、ウサギに近づくウルフ。いや、飛んでいくウルフ。


 許せ、これも検証のためだ。

 あとで高級ドックフード缶をやるからな!


「キャイン!」


 ウサギと衝突し、フラフラとよろけるウルフ。

 昨日の甲高い音は聞こえなかった。

 多少ダメージもあるようだ。


 ふむ、そうなると昨日の現象は、俺にしか発生しない可能性が高いか。考えこんでいると、足元にウルフが戻ってきた。


 ウサギも目の前まで来ている。


 キン、キン


 ウサギの突進とウルフの噛みつきが同時にやってきた。やっぱり、痛くない。


 あ、これ敵味方関係なく攻撃を無効にするのか。

 てっきり敵意が関係しているのかと思ったが、もっとシンプルに単なる物理法則に近いのか。

 先にウルフに噛んで貰えばよかったな!

 ワハハ、すまん!


 ホーンラビットをバットでホームランし、水晶と兎のお肉ゲット!ホーンラビットの水晶はツノの根元にあった。ゴブリンよりもさらに小さな水晶だ。

 ゴブリンはヘソの辺りだったし、モンスターによって違うのかな。

 強さは愛らしい見た目通りで、ゴブリンより弱かったな。


 兎の肉は、適度に脂が乗っていて旨そうだ。

 前に某動画サイトで見た捌き方動画を思い出しながら、適当に処理をする。

 正直、うろ覚えである。まぁ、なんとかなるでしょ。



 自宅に戻り、川辺で汲んできた水を煮沸させる作業に取りかかる。何となく煮沸させたら飲めそうな気がするよね。

 ふと、さっきの検証結果を思い出す。


 俺には敵味方関係なく、体を対象とした攻撃が効かなかった。


 それは…体の中にも適用されるんじゃないか?


 つまりウィルスや食あたりも体への攻撃と認識されれば、無効になる可能性はあるんじゃないか?


 さっそく試してみよう。冷蔵庫を開ける。電気が通ってない冷蔵庫は、ただの棚と同じだ。その中に賞味期限の切れた卵とチーズを発見する。

 これ普通食べたら腹痛を起こすよね…これも検証だ。ウルフだけに辛い思いはさせない!


 南無三!ゴクゴク!


 酸っぱい匂いのする明らかなやばそうなチーズを同じく、やばそうな生卵で流し込む。


 しばらく様子を見て何事も無ければ、この世界にだいぶアドバンテージを持ったことになるぞ!





 さて、ややいいニュース、いいニュース、悪いニュースがある。どれから聞きたい?


 そうか。では、まずややいいニュースから。

 腐ったチーズと卵を食べたが、食あたりを起こさなかった。もう全然平気。

 俺は、病気にかからない可能性が非常に高い。

 ただし、茜やウルフには適用されないだろう。ウルフは普通にダメージ受けてたし。

 この点が、"やや"だ。


 次に、いいニュース。

 さらに西に探索を続けたところ、行商中と思われる商隊を遠目に発見したんだ。荷車と三人の人影が見えた。

 俺は気持ちが昂って、両手をブンブン振り回し、大声で話しかけてしまった。おーい!!ってね。

 そりゃそうだろ、この世界で初めて人を見たんだから。正確には影だが。言葉が通じないかもしれない。

 俺もさ、色々と不安だったんだよ。




 で、最後に悪いニュース。


 …オムツ被ったままだったー!!


 商隊は俺を見た途端、小声で軽く相談したかと思うとスピードを上げて走り去ってしまった。

 去ってしまったんだよ…。

 モンスターしかいないものだから、悪ノリで被ったら案外癖になってしまった。だって、さすが赤ちゃんのデリケート部分に触れるだけあって、肌触りがいいのなんのって…。


 人よ!!カムバァァァック!!プリーズ!!



異世界日記 3日目

水ゲット。

ウルフから嫌われる。

攻撃が効かないのはどうやら俺だけらしい。病気にもたぶんならない。

変態の扉を開けたことで、集落に繋がる出会いをあっさり逃すファインプレー。


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