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異世界育児  作者: 葉山 友貴
第一章 育児奮闘・開拓編
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01話 状況確認


これから、全体的に加筆していきます。主に育児の描写を足していく予定です。ちょちょこ更新になります。

 うぅ…頭が痛い。昨日は飲み過ぎた。今は昼くらいか。

 おかしいな、昨日まで蒸し暑かったはずなのに、エアコンを付けなくても適温だ。まぁ快適ならいいか、喉が乾いた。飲んだ翌朝はいつもこうだ、水でも飲むか。


「ゔ〜彩夏〜、水を頼む〜」


 暫く待つが、反応はない。


「…っと、自分でやるか」


 全く何をやっているんだ、しっかりしろよ。

 もう彩夏はいないんだ。これからは家のことは全部自分でやらなきゃいけないんだ!


 両手で顔面に喝を入れて、勢いよく飛び起きると、そのままキッチンに直行した。


 キュッ、キュ。


 あれ、蛇口から水が出ない。水道代は払ってるし、水道管の工事でもしてるのかな。断水の連絡来てたっけ?家のことは彩夏に任せっきりだったからなぁ…。冷蔵庫に貼ってある連絡事項に目を滑らせても工事のことはかかれていない。このホワイトボードは彩夏が常に更新してくれていた。もう新たに書き直されることはなくなったが…。



 とりあえず、外の自販機で水を買ってくるか。


 静かにリビングを覗く。よしよし、娘ちゃんとウルフはまだ寝てるな。赤ちゃんから目を離すのはあんまり良くないけど、外の自動販売機なら一分もあればすぐ戻って来れるし、行ってこよう。


 ゆっくりと玄関のドアを開けると、柔らかい風に乗り新緑の匂いが鼻をくすぐる。ひんやりとした朝の空気を肌で感じる。

 目の前には、青々とした樹木が生茂る広大な森が広がっていた。


 え…待て待て、なんだこの大自然は!!田舎に引っ越したっけ?

 お向かいの鈴木さん宅は?はい、ない!!森!!

 あー、マイナスイオンすげー、自然癒されるわー。

 違う、違う!

 よし、落ち着け。一回整理しよう。

 とりあえず玄関のドアを閉めよう。


 バタン。


 すーはー、すーはー。


 何度か深呼吸をした後、再びそっと、玄関を開けてみる。

 森だー!!緑だーひゃっほう!やったぜ、キャンプし放題!!

 心臓の鼓動がうるさい。

 とりあえずドア閉めよう、一旦閉めよう。落ち着け。虫が入ってきたら大変。


 なんか冷静だな、落ち着いてきた、深呼吸が効いたんだろう。

 よし、もう一度深呼吸だ。


 ひっひっふー、ひっひっふー。


 ってラマーズ法やないかい!

 誰が赤ちゃん産まれますよーだ!

 やばい、一旦座ろう。


 これは、あれかな。ラノベ的に転生?いや、生まれてないから、転移かな。赤ちゃんも犬も転移になるのか、不思議だなー。どこかに現実逃避しちゃいそう。

 こういう場合、王道展開では見た目が変わってたり、超能力が備わったりするんじゃないか?


 期待と不安を胸に、玄関にある全身鏡を覗くと、相変わらずしょぼくれたおっさんが写ってる。イケメンになってないことで残念な気持ちもありつつも安心する。超能力の方は、今のところ体に何の変化もない。


 そうだ、娘ちゃんとウルフはどうなった!?


 足早にリビングに行くと、ベビーベッドにすやすや眠る赤ちゃんと、ベッドの足元に丸くなった茶色の柴犬を発見した。

 よかった…。ちゃんと生きてる!昨夜は酔っ払ってよく覚えてないが、部屋の中に異常はなかったらしい。家具も整然としている。


 とりあえずライフラインと食料の確認からだ。


 水道は…出ない、まー出ないよね。さっきも確認したけどね。そうなると当然、風呂も出ないし、トイレの水も流れない。今のところ大丈夫だが、大が出たらどうしよう。しょうもない不安が頭をよぎる。

 風呂場に向かう。あ、風呂にお湯入れっぱなしだ、ラッキー。めんどくさがりな性格に救われたぜ。全く自慢できることではないが、結果オーライだ。生活用水や洗濯とか何かと使えるだろう。


 次は、ガス…ついた!そういやうちはプロパンガスだったな、引っ越し当時はガス代高いとか言ってごめんなさい、感謝します。プロパン最高!大好き!!


 電気は…つかない。そりゃそうだ、そもそも電柱がないし、発電所だって無いだろう。周りは森だもの。


 スマホも使えない。ずっと圏外の表示だ。こんな僻地に電波の基地局なんてないだろうし、仕方ないな。電話もネットも使えないのは想定外だ。とにかく情報が入ってこない。情報が欲しい。


 テレビをつけてみよう。うっ、どのチャンネルも映らない。やっぱりダメか。いったい、ここはどこなんだー!!


 これはいよいよ詰んできましたな。

 なんか逆にテンション上がってきた!

 あげあげで家中を漁ったらこんな感じ。



 飲み水、食料 10日分

 粉ミルク、ドックフード 30日分

 紙おむつ 30日分

 風呂いっぱいの生活用水

 防災グッズ詰め合わせリュック

 赤ちゃん用の抱っこ紐(前抱き、おんぶ両方可能なタイプ)※直前まで彩香と迷った挙句買った優れもの。

 野球の金属バット



 これはまずい。

 何がまずいって、ミルク。

 ミルクを作るのに粉を溶かすお湯が必要で、ミルクを冷ますのには水が必要だ。さらにミルクを入れる哺乳瓶を煮沸消毒するためにも、水が必要ときている。

 元々はつけおきタイプの哺乳瓶消毒剤を使っていたが、つけおき水はその都度捨てるため、水を再利用できる煮沸方式に切り替えよう。幸いガスはある。


 とにかく水の確保が最優先。早急に人が住む集落を探して保護を求めなければ。

 というか人住んでるよね?転移先がモンスターワールドなんて勘弁してくれよ。


 やる事が見えたら喉が乾いていたのを思い出したな。

 ゴクゴク、ぷっはー!あー生き返る、しまった!

 水は貴重だってさっき確認したのに。


「ふえー、ふえー!」


 愛しの娘ちゃんが起きた。


 生後一か月くらいまでは三時間起きにあげてたミルクもに二か月目に入った今は四、五時間は待つようになった。

 娘ちゃんとウルフの食事後、少しだけ外に出てみよう。武器として念のため野球のバットは持っていく。何も無いよりはましだろう。





「なんじゃこりゃー!!」


 なんとかに吼えろ。


 家の周りを一周してみて分かったこと。


 この世界に転移し、初めて超常的事象ーいや、魔法的現象を確認した。とにかく魔法という言葉以外に説明が付かない。どうやら自宅の周り1メートルの範囲で、円形上に隠蔽魔法のようなものが掛けられているようだ。


 隠蔽魔法と呼んだことには理由がある。


 試しにその1メートルの境界線から出てみると、家があるはずの場所には何も見えない。視界から突然、消えたのだ!

 そして、1メートルの中に戻ると、再び家が出現。

 反復横跳びの要領で出たり入ったりを繰り返すと、あら不思議。何度やっても信じられない。でも、信じるしかない。


 この世界には魔法があるらしい。

 とても説明できない。


 家が消えたときは、驚きのあまり絶叫してしまったが、獣の遠吠えのような声を聞いて思わず手で口を塞いだ。背筋が寒くなる。


 と、とりあえず、家をすぐにでも出なければならない事態は回避できたわけだ。それにしてもハードモードすぎないか?貴族に生まれ、剣と魔法でチートするんじゃないのかよぅ…。はぁ、娘ちゃんに癒してもらお。


 あー癒されるぅ。ベビーベッドに寄りかかり、すやすやと眠る寝顔を見ていると、不安なんて吹き飛ぶな。


 よし、今後の作戦を立てよう。何事も計画が大事だ。

 闇雲に探索しても迷うばかりか、今の俺たちは行動時間に()()がある。

 娘ちゃんを一緒に連れていくのだ。

 飲んだミルクを吐き出して喉に詰まらせたり、モンスターのような脅威がいつこの家を襲ってきてもおかしくないのだ。一人でお留守番なんてさせられない。

 とにかくこの世界での情報が少ない。まずは情報収集だな。


 通常、赤ちゃんは生後一ヶ月を過ぎたあたりから、徐々に外出が可能となる。外出といっても近場を十五分程度散歩をするくらいだ。ましてやこんな森の中を探索することは某ベビー雑誌だって想定していない。

 長時間探索し、病気になってしまったら医者もいないこの状況では命に関わる。


 よって、作戦とはこうだ。

 一回の外出時間は三十分と決める。東西南北の四方向にそれぞれ探索し、目印を付けながら戻ってくる。

 家で休憩を挟みながら合計で四回探索することとなる。

 これで何か進むヒントが見つかればいいが。


この探索での優先順位は、

 1.水場の確保

 2.食糧の確保

 3.友好的な集落の発見

となる。


 決行は明日からにしよう。


 今日はこの世界での時間の()()を確認しなければならない。

 現在時計の針は午前十時を指している。

 外は明るいがいつ暗くなるか分からない。

 夜の探索ほど危険なものはない。こちらはネットの知識はあっても、サバイバルなんてやったことがないズブの素人なのだ。

 そもそも太陽と呼んでいいか分からないが、太陽が沈まず一日中明るい可能性だってあるのだ。

 一時間ごとに外を確認して、記録するとしよう。


「うえええん!」


 おっと、ミルクの時間だ。はーい、ご飯ですよ〜。そういえば、電気が使えない以上、エアコンは使えない。ってことは、服で体温を調節するしかない。今は適温だが、今後寒くなるかもしれないな。冬服どこにしまってあったかな…彩夏のことだからキチンと整理してると思うけど、探さなきゃな。


 ウルフはこちらの心配をよそにゴロゴロとリラックスしている。今の状況を分かってるのか。全く。



 暗くなってきた。この世界にも夜はあった。時計の針は六を指している。少し室温も下がっている気がする。日中よりも肌寒い。


 娘ちゃんを風呂に入れよう。ここで風呂に入れるとなると準備が大変だ。ガスコンロしか使えないから、風呂に溜まっている水を温めて適温にする必要があるな。


 赤ちゃんのお風呂は沐浴と呼ばれ、生後一カ月頃までは湯船にはあまり入れない。

 沐浴には、沐浴用の専用ビニールプールや大きなタライを使うことが多い。我が家では専用のビニールプールを買った、2,000円くらいだったかな?覚えてないが、安さに驚いた記憶がある。なお、お湯の温度は三十八〜三十九度が適温とされている。夏と冬では、室温と相談しながら決めるらしい。通勤電車の中で、育児本は何度も読み返して頭に入っている俺に死角はない。



「くぅ!!う、腕が、釣りそう!」


「ふぎゃー!ふぎゃー!」


 首の付け根を左手で支えながら、ベビーソープで頭とお腹、足を洗うところまではスムーズにできた。普通よりも大きいサイズの沐浴用ガーゼをお腹に掛けたし、さっきまで気持ちよさそうにしていたのに。


「背中、どうやって洗うんだ…!?」


 育児本では、鎖骨あたりを右手で押さえ、ぐるんとひっくり返し、今度は左手で背中を洗うはずだ。なのに、暴れて上手くいかない…。ベビーソープで滑る。ええい、ままよ!そいや!


 できた!!


「ふええええん!」


 泣いてるけど、最後まで洗っちゃえ!そして、最後に綺麗なお湯で掛け湯をして、出来上がりだ!


 沐浴前、ベビーベットに新しい服を開いた状態で敷いておき、その上にバスタオルを敷いた。これなら先に体を拭いて、バスタオルをどかすと、服のセットが現れる仕組みだ。ワンオペの際は、こんな感じの流れだった。


「ふうううう…疲れた」


 娘ちゃんはお風呂を終えて、すやすやと気持ちよさそうに眠っている。ソファーに沈み込むように座っていると、ウルフが労ってくれるかのようにすり寄ってきてくれた。


「俺らも、飯にするか」


 そうだ、今後のためにも今日から日記をつけよう。記録って大事だ。

 日記なんて小学校の日直以来だけど、うまく書けるかな。後から見返したら楽しいし、とりあえず初めてみよう。




異世界日記 1日目

なんか知らん世界に転移したみたい。

イケメンにはなれなかった。

娘ちゃんはまじ天使、ウルフはもふもふ。

明日は探索じゃあああ!

日記ってこんな感じだっけ?とにかく続けることが大事。


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[一言] この男は娘に名前つけてないのかな? 流石に娘ちゃん呼びはねぇ。
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