追放された死霊術師さんたちの研究日誌 ~最高の魔術師が弟子を取った場合について~
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「本当に済まないと思っている、グランドマスター・エリック・ウェスト」
エリックは目の前でただ悲痛な表情を浮かべている赤毛の男を見た。男の頬には深い裂傷の痕跡があり、歴戦の戦士であることを窺わせた。だが、今の彼の瞳には力強さはなく、ただ自分の無力さを悔いているだけの色があった。
エリックがグランドマスターとわざわざ称号をつけて呼ばれるときは、ましてファミリーネームまで付けられて呼ばれるときは、大抵碌なことがないものだが、今回も御多分に洩れずいい知らせではなかった。
「仕方のないことなのだろう。ギルドの方針なのだから」
「だが、お前には世話になった。それをこんなことで終わらせるだなんて……」
「これはギルドの決定だけではない。教会からの圧力でもあるんだ。友として言わせてもらえば、ここは大人しく私を除名しておくべきだ。君たちにまで私のことで巻き込まれると私としては余計に心苦しい」
エリックはいつもの宿屋の食堂の席でどこまでも静かに告げた。
「ああ。サンクトゥス教会がまさか黒魔術を禁止するなんてな……」
エリック・ウェスト。
彼は死霊術師である。
死霊術の分野では唯一のグランドマスター──世界魔術アカデミーから与えられる最高位の称号──であり、この目の前の赤毛の男ヴァージル・ヴェレカーがリーダーを務める冒険者パーティ“紅の剣”に所属していた。
彼ほどの魔術師ともなれば書籍を出版するだけで食べていけるだろうが、エリックは研究費の調達はもちろんではあったのだが、研究におけるインスピレーションを求めて冒険者稼業を行っていた。
少なくとも今の時点までは。
「純潔の聖女派が教会の主導権を握ったのが原因だろう。あの派閥は潔癖症だ。前々から黒魔術を目の敵にしていた。それからいくつかの種族についても。これから何人の同業者が職を失うかと思うと、それだけで虚しくなる」
「黒魔術は長年、人々の生活を支えてきた。それを教会は分かっていない。俺たちのギルドもエリック、お前がいてくれなかったら何度全滅したことか」
「自分たちを卑下するのはよくない。君たちは君たちだけでもやっていけたさ」
食堂のテーブルに広げられた食事もエールもワインもまるで手が付けられていない。
サンクトゥス教会はこの世界で最大の宗教である。もっとも、いくつかの派閥に分裂しているので、この宗教が世界を支配しているとは言い難い。
とは言え、影響力は強大だ。
皇帝を破門すれば帝国では反乱が起きるし、ひとつの学説を異端と断じれば学者たちは火刑に処される。そのような力を有していた。もちろん、彼らが孤児院を運営し、人々に人としての倫理を説くことをなしにこれを語るのはバイアスをかけてしまう。
だが、その教会がこれまで人々とともにあった黒魔術を禁止し、冒険者ギルドから黒魔術師たちを除名するように命じてきたのであれば、エリックたちにとっては話はバイアスのかかった方向に見えてくる。
「私の役割はちゃんと引き継がれるのかな?」
「回復は今度やってくる教会の司祭がやってくれるらしい。古代文字の解読と降霊術、それからちょっとばかり死者の助けを借りるってのはダメだな。古代文字が判読できるのは相当経験豊富な学者だけだ」
エリックはこの“紅の剣”で古代文字の解読、降霊術、回復、そして死者の戦力化を行っていた。“紅の剣”を支えてきた力だ。
古代文字が読めれば、これから潜るダンジョンに何が潜んでいるか理解することができる。降霊術ができればダンジョンに横たわる死者から何に注意するべきかを学べる。死者の蘇生の技術を応用した回復術は白魔術の回復と違って時間はかかるが完璧に治る。ダンジョン内の死者たちを戦力化して相手に叩きつけるのは死霊術の醍醐味とも言え、これまで何度も“紅の剣”を救ってきた魔術だった。
もちろん、死者は弔う。ダンジョンで朽ち果てた彼らのやり残したことを聞き、ダンジョンを出た後でそれをギルドに報告するのもエリックだった。恋人への言葉、子供たちへの言葉、友人への言葉。エリックはダンジョンで力尽きた彼らの言葉を伝えるメッセンジャーでもあった。
だが、黒魔術は禁止された。
「少しの間、慣れないことが続くだろうな」
「新しい環境に慣れられるかどうか分からない。お前なしのパーティなんて。アビゲイルも、クライドも、リタも、みんな困惑している」
アビゲイルは剣士、クライドはレンジャー、リタは赤魔術師だ。
「探しましたよ、ヴァージル・ヴェレガーさん」
宿屋の扉が開く音がして、女性の声がそれに続いた。
「まだ彼を追放していないのですか?」
「ギルドの命令は明日までにだ。今日中はまだいいはずだが」
「サンクトゥス教会の女司祭として申し上げます。今すぐにこの薄汚れた死霊術師を追放してください。黒魔術師など碌な人間ではありません」
サンクトゥス教会の女司祭を名乗る18歳ほどの少女はゴミか汚物でも見る目でエリックを見た。エリックは汚れのない死霊術師であることを示す黒を基調にして、白い線の入ったローブ姿だが、サンクトゥス教会の女司祭はそれとは逆にシミひとつない白を基調にして、黒い紋章の刻まれえた祭服を纏っている。
「ルアーナ・ランソル。彼は俺の個人的な友人だ。別れを惜しんで何が悪い」
「でしたら、交友関係を見直されることですね。黒魔術師などと一緒にいると悪影響を受けますよ。まして、腐肉臭い死霊術師などと一緒では」
「貴様」
ヴァージルが立ち上がろうとするのをエリックが押さえた。
「ヴァージル。気持ちは嬉しいが、これからは彼女が君たちの仲間だ。先は長い。今のうちから仲違いを起こすべきではない。私は行くよ」
「……すまん、エリック」
最後の最後までエリックに気を使わせてしまったとヴァージルは悔いた。
「ルアーナ・ランソルさんか。彼らのことをよろしく頼む。サンクトゥス教会の女司祭である君ならば、彼らに力を与えることができるだろう」
「あなたに言われるまでもありません。さあ、さっさとこの街から出ていってはくれませんか。あなたのような黒魔術師がいつまでもこの街にいては、街の風紀が乱れます。この世界都市アーカムにあなたのような不浄な存在は不要なのです」
ヴァージルが拳を握り締め、耐えていることがエリックには分かった。
友がこれほどまでに怒りを剥き出しにしているのに、エリックは自分が感じるべき怒りを感じないことを申し訳なく思った。
エリックはもう1000年の時を生きた。死ぬこと以外のあらゆることを経験してきた。だから多少の不条理にも耐えられる。それに彼自身もサンクトゥス教会の信者だ。嘘ではない。彼はサンクトゥス教会の神の智慧派という派閥の信仰者だった。
「そうなのだろう。私は去ろう」
エリックはルアーナに背後で嘲られているのを感じながら、ヴァージルに背を向けて宿屋から立ち去り始めた。
「待ってくれ」
エリックが宿を出る間際、ヴァージルがエリックを呼び止めた。
「少ないがみんなで出し合った金だ。路銀にしてくれ」
ヴァージルは少ないと告げたが渡されえた革袋はずっしりとしていた。
「ありがとう、友よ。君たちの幸運を祈る」
「すまない、友よ。お前のことは忘れない」
エリックはそう告げ、ヴァージルは去った。
「さあ、去りなさい、死臭が漂っていては宿の皆さんに失礼でしょう」
ルアーナが高笑いを上げるのを聞きながら、エリックは宿から立ち去った。
「さて、帰るか」
冒険者ギルドから追放された今、冒険者ギルドのあるこの世界都市アーカムにいる必要はない。むしろ、エリックはこの街は苦手だった。いつも喧騒としていて、静かに思索に耽ることができない。興味深い発見があることはあるが、やはりエリックはこの眠らない都市は苦手であった。
では、帰ろう。
彼は研究所を持っている。この世界都市アーカムからは馬車で14日程度の道のりになるし、冒険者稼業を始めてから7年近くメイドに任せきりにしているが、帰る場所はある。
暫くは冒険者稼業で得られたことを纏めて、研究をひっそりと行おう。
いずれは民衆がサンクトゥス教会のやり方に反発して、スケープゴートとして純潔の聖女派が排除されるだろう。そうなるまで待てばいい。不老不死の魔術師であるエリックにとって時間は無限だ。待てばいい。
エリックは夕日が沈み、魔道灯で照らされた街並みをゆっくりと進み、馬車の乗合場所に向けてゆっくりと進んだ。
「クソ。教会の連中め……」
「俺たちはこれからどうしていけばいいんだ?」
アーカムの街は明日に控えた黒魔術師の冒険者ギルドからの除名を受けて、黒魔術師たちが酒に酔ってふらふらと夜の街を苛立たし気に歩いている。
同業者はかなりいた。それが一斉に除名となると冒険者ギルドそのものも苦労することになるだろうなとエリックは思った。
「うぐ、ひっく……」
むせび泣く声がこの喧騒に満ちたアーカムでエリックの耳に届いたのは奇跡だった。
エリックが泣き声のする方向を見ると、エリックと同じ黒と白のローブに学生時代の死霊術師に授けられる骸骨をかたどった水晶のはめ込まれた杖を持った少女が、衛兵の詰め所の外でうずくまっていた。
ああ。彼女も同業か。また時期の悪いときに学校を卒業したものだ。
エリックは流石に見るに見かねて少女の方に向かった。
「君、私の魂の色は何色だ?」
「へ?」
エリックの突然の質問に少女が目を白黒させる。
綺麗な黄金を連想させるゴールデンブロンドの髪をツーサイドアップにして青色のリボンで結んでいる。その瞳はブルーサファイアのように青く、きらきらと輝いていたが、涙が浮かび、やや充血している。随分と泣いていたのだろう。
真っ白な肌はきめ細やかだが、頬には痣ができている。ここ最近にできたものだと分かるし、口の端には固まった血液が見える。誰かに殴られたようだ。
「死霊術師だろう。私の魂の色は何色だ?」
「えっと。藍色……いや、もっと黒い。濃藍、ですか?」
「正解だ。君も立派な死霊術師だね。そして、その境遇は概ね想像できる」
彼女もまた冒険者ギルドの除名処分を受けてパーティを追い出されたのだろう。
いや。待て。それにしては少し若すぎる。16歳ほどか。学校を卒業している年齢ではないな。それに学生時代の杖は卒業時に買い替えるのが習わしだ。それが一人前になった証となるのだから。
エリックは些か奇妙な状況に遭遇したが、死人のように冷静だった。
「君、まさか学校の生徒かね?」
「いえ……。4日前まではそうだったのですが、私の通っている学校──王立リリス女学院が黒魔術科を急遽廃止にすると発表して、私はその黒魔術科で……。学科が廃止になったから途中退学に……」
「ふうむ」
サンクトゥス教会の手があらゆる場所に及んでいることは理解していたが、まさか王立の学校にまで干渉するとは。これは相当根深い問題になりそうだなとエリックは少女の話を聞いて思った。
「実家はここに?」
「まさか。こんな大都市の生まれじゃないです。小さな農村の生まれです」
「そちらには帰らなくていいのか?」
「父も母も私が生まれてから数日で亡くなってて……。おじいちゃんがいたんですけど、それも在学中に……」
「すまない。悪いことを聞いた」
「ああ! 気にしないでください! 人とこうして喋れてやっと落ち着けてるんです」
少女はそう告げてふうと大きく息を吐いた。
「私はフィーネ・ファウストっていいます。ご心配おかけしました。もう大丈夫ですから。人と話せるのがこんなにいいことだなんて、学院の入学式以来の実感です。お兄さんも死霊術師ですよね?」
「ああ」
「お互い、災難でしたね」
そこでフィーネと名乗った少女のおなかがぎゅーっと鳴いた。
「まさかとは思うが、無一文かね?」
「そのまさかです……。ここに来るまででお金を全て使い果たしちゃいました……」
フィーネはぐったりとまた項垂れた。
「ここで会ったのも何かの縁だろう。家に戻るために馬車に乗るつもりだったが、しばらく時間がある。食事でもどうかね?」
「い、いいんですか?」
「同じ死霊術師同士だ。構わないとも」
「ありがとうございます! 本当にありがとうございます!」
フィーネは立ち上がって何度もお辞儀した。
「ところで、お兄さんのお名前は……?」
「エリック・ウェストだ」
「へー。グランドマスターの人にそっくりな名前ですね」
「そっくりも何も私がそのグランドマスターのエリック・ウェストだ。私の他に死霊術でグランドマスターのエリック・ウェストがいなければだが」
「へ?」
少女の硬直が解けるのは死後硬直よりも早かった。
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「感激しました!」
フィーネはその痣の残る顔を満面の笑顔にしてそう告げた。
「まさか伝説の死霊術師エリック・ウェストさんに会えるなんて! 無一文になった甲斐がありました!」
「いや。無一文になるべきではないよ」
無邪気に喜ぶフィーネと冷静にそう告げるエリック。
「で、でも、こうして生きた伝説に……」
「私の話はいいんだ。私も君も私の話は知っているようだしね。それより君の話が聞きたい。王立リリス女学院を退学になって、どうしてまたアーカムなどに?」
エリックの伝説は様々だ。
竜王の魂を降霊させ、後継者争いで荒ぶる竜族たちを鎮めた。世界征服を乗り出した帝国の軍隊を数千万の死者の軍隊で撃退した。あるいは、彼が最初にリッチーという不老不死の魔術師になれる術を開発した。
聞き飽きた話だ。今ではどれも昔話。今のエリックはひとつの研究に取り組んでいるが、未だアカデミーに発表できる段階ではない。昔の成功に固執する人間は前に進めないという考えのエリックにとって、どんなことであろうと過去の出来事は終わったことだ。
ただ、彼は過去からの積み重ねが現代にまで至っているものについては、それがどんなことであろうとも高く評価する。
「……奨学金で暮らしてたんです。おじいちゃんも死んじゃって、収入はそれだけで。けど退学になったら当然奨学金も打ち切りです。本当なら宮廷魔術師になったり、どこかの研究所で働けたならなって思ってたんですけど……」
「途中退学の上、このご時世ではそれは無理。で、冒険者を、と」
「はい。もうとにかく稼がないとお金はどんどん減っていくし、あれだけ夢に満ちていた未来が今では恐怖でしかなくて。それで必死になって冒険者ギルドに登録させてほしいって訴えったんですけど、サンクトゥス教会の司祭に殴り飛ばされました……。『お前たち死霊術師は人々の健全な魂を汚す存在だ』と」
「魂を汚す、か」
エリックは水を僅かに口に含んだ。
「死霊術師にしてみれば冗談でしかないな。死霊術師こそ魂の色が見える。より明るい色ほど社交的で、より暗い色ほど孤独を好む。赤ければ情熱の持ち主。青ければ覚めた感情の持ち主。人々は魂の色に応じて感情を持ち、そのことに苦悩し、そのことで争う」
「はい。そのことは授業で習いました」
「では、魂が汚れるとはなんだ? 色が変わるのか? 透明な魂を持って生まれた人間は未だこの世界には存在しない。少なくとも今はまだ。人々は色を持って生まれる。それが汚れるとはどういうことなのだろうか」
「分かりません。言いがかりですよ」
「そうだな。言いがかりだ」
フィーネは自棄だというようにパンに食らいついて、ミルクで流し込んだ。
「まあ、事情は分かった。その傷は不幸な事故でも、君が招いた結果でもなく、悪意ある人間によってつけられたものだ。少し見せてみなさい」
「ほひ?」
フィーネがパンを咥えたまま傷をエリックに見せるのにエリックが手を当てた。
すると、みるみるとフィーネの痣が消えていった。
「ふああ!? ふあんえすかこへ!?」
「紳士淑女たるものものを咥えたまま喋らない」
痛みがなくなって興奮するフィーネにエリックがそう指摘した。
フィーネは加えていたパンを大急ぎで飲み込み、手鏡を出す。痣は綺麗さっぱりと消え去っていた。真っ白な肌が戻ってきている。
「い、今のは白魔術ですかっ!?」
「これも死霊術だ。正確にはその応用か。死霊術では人体を魂なき肉の機械として扱う術がある。そのためには死霊術師は人体の正確な在り方について把握しておく必要がある。生命の最小単位である細胞単位で人体を把握するのだ。そして、死霊術師は魔術で人体を生死を問わず操作する。もちろん、相手の魔力によってはレジストされる可能性もあるが。まあ、そのようなわけで、私は人体について知識があり、どうすれば痣を元に戻すかについての知識もあった。それだけだ」
「凄いです!」
こうして話していると10年ほどアカデミーで教鞭を取った時代のことを思い出すなとエリックは思った。アカデミーでの講義はこれほど低レベルではなかったが。
「君の話に戻そう。君は別の魔術師になるつもりはないのか。黒魔術師は当面の間、教会が圧力をかけて行動させないようにさせるだろう。純潔の聖女派が失脚しない限りは。私のような年寄りならば、今さら黒魔術師を止めて、赤魔術師や青魔術師になるのは不可能だ。だが、君には未来がある。君が怖いと言った未来だが、目に入っていないだけでそれは開けている。赤魔術師などは特に冒険者としての需要も高いし、宮廷魔術師としての割合も高い。どうだね。改めて学校に戻って学びなおすというのは」
「それじゃダメなんです」
エリックが諭すように告げるが、フィーネは首を横に振った。
「どうしてだね?」
「お父さんとお母さんに会いたいんです。立派に育ったよって言いたいんです。けど、まだ私は未熟で降霊術も満足にできないし、お父さんとお母さんが死んだのも随分と昔のことだから、呼び寄せるのは難しいだろうし……」
「そうか。会いたい人がいるのか」
「はい」
エリックはフィーネの魂の色を見た。
死霊術師のほとんどは藍色の魂をしている。あまり社交的ではなく、覚めた感情の持ち主たちが死霊術師への道を選ぶ。それが性格ゆえなのか、それとも死霊術を学ぶことでそうなるのかは分からないが。
だが、フィーネの色は眩しいばかりの赤だ。
とても社交的で、情熱的。言ってしまえば死霊術師には向いていない。
死霊術師は人の死に感情を左右されないことを求められる。特に降霊術を使う時は降ろす霊の感情に左右されず、冷静に彼らを見つめる必要がある。うっかり霊に感情移入し過ぎると、己を失ってしまう危険性がある。
だから、死霊術師は藍色なのだ。
だが、だからと言って彼女の道を閉ざしてしまうのは、今のサンクトゥス教会と同じだ。可能性を認めず、イメージで判断して、多くの人間の未来を閉ざす。そんなことはあってはならない。学問は全ての人間に開かれておくべきだ。
「死霊術師への道を進み続けるのは大変な苦労をすることになるが」
「それでも今になって諦められません」
フィーネは真っすぐにエリックを見据えてそう告げた。
「では、これからどのようにして食べていくつもりかね?」
「あ。え、えっと、皿洗いの仕事とかそういうことをして……」
「今のご時世、死霊術師というだけで職が得られないということはありえるのだよ」
「そうですよね……」
サンクトゥス教会は、いや純潔の聖女派はアーカムから黒魔術師たちを一掃するだろう。抵抗すれば連中の切り札である修道騎士団まで動員しかねない。アーカムは暫くの間、平穏とは遠い場所になる。
フィーネもその黒と白のローブと骸骨の杖を持っている限りは、死霊術師だとバレる。おまけに彼女には服を買い替えるという手持ちすらない。
「君が本当に死霊術師を目指すのであれば、私の弟子になってはみないかね?」
「で、弟子? グランドマスター・エリック・ウェストさんの弟子に? 私が?」
「ああ。君がよければだが。無理強いはしない。だが、これからの暮らしのことはまるで考えていないのだろう。私の弟子になれば、衣食住の面倒は見るつもりだ」
後進を育てるのも先駆者の役目だ。死霊術というこれまで過去から積み上げられてきた学問が、たったひとつの教会の政変で失われていいはずがない。この若い見習い死霊術師を育てることこそ、エリックの役割だと思われた。
「なります! むしろ、弟子にしてください! こちらから頭を下げてお願いします! グランドマスターの弟子になれるなんて夢みたいです」
「私も先駆者の義務を果たさなければならないからね」
死霊術が失われてはならない。過去から積み上げられてきたこの学問が失われるようなことがあっては、歴史に対する冒涜だ。
純潔の聖女派が鳴りを潜めるまでは研究所でフィーネに死霊術を教えよう。そして、未来にバトンを繋ごう。エリックはそう考えていた。
「だが、道は険しい。それでもいいかね」
「はい!」
それからフィーネは満面の笑みで食事を続けた。
ステーキを平らげ、シチューを平らげ、大量のパンを食べる。
その食べっぷりにはエリックも感心させられた。エリックは既にリッチーになっているため大気中の魔力を摂取するだけで食事を必要としない。ただ、相手に合わせて食事をすることはある。それにエリックにはまだ味覚というものが生きているのだ。
「明日の朝には出発しよう」
「出発というとどこに?」
「私の研究所だ。ここから馬車で14日間。世界都市アーカム同様にどの国にも属していない地域にある。まあ、よくある廃棄地域内だ。途中で知り合いたちに挨拶をして回るが、構わないかな?」
「もちろんです! 御一緒できるだけでも光栄ですから!」
「それでは旅支度を済ませて出発するか。サンクトゥス教会も早く死霊術師には出ていってもらいたいだろうしね」
旅支度と言っても大したことをするわけではない。
替えの安い衣服を数着と携行食料──ここ最近発売された温かな食事が火を使わずに食べられるファスト・トラベル・ミールは人気だ──を幾分か買い込み、それらを収める鞄を準備すれば完璧だ。
エリックは既に鞄も服も持っている。フィーネのを揃えればそれでいい。
「フィーネ。服と鞄はあるかな?」
「普段着が1着と学校で使っていたリュックサックがこのように」
フィーネは背負っていたリュックサックを下ろしてそう告げた。
フィーネの普段着は少し大きめのローブ代わりになるジャケットとシャツ、そして少し丈の短いスカートだった。後は靴下と黒タイツだ。タイツは今のアーカムを中心とした世界ではちょっとしたお洒落アイテムで、女性たちがよくよく身につけている。繊維に魔力を流した伝線しないタイプだ。
「下着もあるね?」
「え、ええ。あんまり可愛くない奴ですけども一応……」
下着のことは聞かないでほしいという顔をするフィーネ。
「それでは携行食料を買いに行こう」
「この時間帯でお店開いているんです?」
「伊達に眠らない都市と呼ばれているわけではない。ここでは24時間営業が基本だ」
魔道灯の明かりと治安を維持する衛兵隊のおかげで、アーカムは眠らない街となった。静かさを好むエリックにとっては気の毒なことだが、夜になっても、どこに行っても、街の喧騒さは変わらない。
「食料品店で準備を整えたら出発だ。何か気になることは?」
「ええっと。なんで、私なんかを? グランドマスターともなれば、教える相手は選べると思うのですが。もちろん、選んでいただいたことに文句なんてないです。けど、私って友達に『あんた見てるといろいろと苦労する』って言われるぐらいですから……」
「それはきっと『君のことは危なっかしくて見てられない』という意味だろう。実際に私もそう感じた。だが、学問とはどのような人間にも、いかなるときにも、開かれておくべきだと私は考えている。学ぶ場を失った君を弟子にしようと思ったのもそういうことだ。それに私は──」
エリックはフィーネを見据える。
「君の魂の色に興味がある」
「私の魂の色ですか?」
「そう、君の輝くような赤い魂の色。死霊術師を志す人間でそんな魂の色をした人間はいなかった。いずれは君も藍色の魂を持つのか、それともその色を保ったまま死霊術師としてやっていけるのか。私には興味がある」
エリックはそう告げて水を飲み干した。
「食事はもういいかね?」
「あ。はい。御馳走様でした!」
「結構。じゃあ、出発の準備をしよう」
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食料品店で携行食料を1週間分購入した。重さは大したものではない。魔力をカロリーと栄養素に変える魔術が付与されたファスト・トラベル・ミールは文庫本1冊にも満たない大きさで、21個と箱で買っても鞄に中にちゃんと納まった。
「青魔術師の技術も年々向上していますね。魔力を込めるだけで食事ができるなんて」
「そうだね。青魔術師は研究熱心だ。彼らはいつも新しい商品を市場に届けるために工夫を凝らしている。見習うべき点だ。赤魔術師は戦争で活躍し、青魔術師は資本主義の世界で活躍し、黒魔術師は居場所を失った今となっては」
「居場所、本当になくなっちゃったんですよね……」
街を行く人々もエリックとフィーネの黒と白のローブを見るとひそひそと話し始める。サンクトゥス教会の司祭たちは侮蔑の言葉を投げつけてくる。『このアーカムに貴様らのような不浄なる存在は不要である』と。
「私たちは本当に要らない存在だったのでしょうか」
「私の仲間たちならば違うと言ってくれるだろう。7年間、彼らとともに仕事をしたが、彼らは私が不要だと言ったことはなかった。黒魔術師には黒魔術師にしかできない仕事がある。そして、それは汚れていたりはしない」
しょげるフィーネにエリックがそう告げる。
「ひとつ例を挙げよう。私たちのパーティがダンジョンに潜った時だ。そこは難攻不落のダンジョンとして有名だった。私たちは初の制覇者となるために万全の準備を整えて、ダンジョンに挑んだ。そして、苦労しながらも最深部に到達した。そこで私たちは見たのだ。私たちよりも先にダンジョンの最深部に到達し、そこで力尽きた冒険者の姿を。私は彼の霊を降霊させ、話を聞いた。彼はこのダンジョンを必ず攻略して、富を手にし、貧しい暮らしを強いられている妹にお金を送ることを望んでいた」
エリックが過去を振り返るように夜空を見上げる。
「私たちは最初のダンジョンの制覇者は彼だとギルドに報告した。そしてダンジョンの攻略報酬は未だに貧しい暮らしをしていた彼の妹に送られた。私たちは彼の遺言を執行したのだ。遺書に書き残されていなかった遺言を。私たちの行動は正しかったと言えるし、決して汚れていたとも思わない」
「素敵ですね。私もそんな死霊術師になりたかったです」
「夢を諦めるのはまだ早い。君の未来は今から始まるんだ」
エリックはそう告げると馬車の停留所で立ち止まった。
「23時12分に出る馬車に乗ろう。夜の馬車に乗ったことは?」
「このアーカムに到着するまでに何度か」
「そうか。ここ最近は治安が悪い。いつでも杖を抜けるようにしておきなさい」
「で、でも、私、何もできませんよ? 座学で基礎講義を受けただけで……」
「相手は死霊術師が杖を抜いているというだけで警戒するものだ。それで時間が稼げることもある。あいにく、私は杖を使うのを止めてしまったので、その手のはったりを利かせることはできない」
「は、はったりですか……」
フィーネはがっくりと肩を落とした。
「はったりも戦術のひとつだ。はったりひとつで命が助かるならば良しとせねば」
「は、はい!」
エリックが研究所に籠り切りになって、本に記された“事実”と些細な実験で得られる“成果”だけに頼らず、外に出て冒険者になったのは彼の研究にインスピレーションを得るためであり、研究所に籠っていては得られない人生経験を積むためだった。
エリックが今研究している分野は心理学に近い。そのため数学のように数式と睨めっこしているだけでは結果が出せない。より多くのサンプルと接し、より多くの社会の仕組みを経験することが研究を推し進める。
自分たちが使う冒険者流の戦術にも心理学が影響する。指揮官がこの場面でどのような選択肢を選ぶのかというのは、まさに心理学だ。教科書通りの戦法が上手くいかないことが多い冒険者の戦闘において指揮官の性格はその戦術に現れる。
エリックの言うようにはったりをかまして時間を稼ぐというのは、エリックの何も起きないならばそれでいいという性格が現れている。ここで杖を敢えて秘匿し、相手の不意を討つ選択肢を選ぶのならば、その人物は好戦的で狡猾な性格をしている。
「まずは学問都市ミスカトニックに向かう。そこに古くからの友人がいる。彼女にここ最近の情勢について話しておきたい。君のことも説明をしておくべきだろう」
「え。それってその人とは何か不味い関係なのですか?」
「不味い? ふむ。彼女とは800年の付き合いになる。だが、不味いと感じる要素があるほど不仲ではないよ。彼女は友好的だ。君のことも良く扱ってくれるだろう。その杖もミスカトニックについたら買い替えるといいかもしれないな」
「いいえ。一人前の死霊術師になるまではこのままで。そう決めています」
「そうか。決意が固いのはいいことだ」
学校で支給される見習いであることを示す杖。それを持っているということは、自分がまだまだ学ぶべきことを残しているという謙虚さを示す。エリックの時代には学校という制度そのものがあいまいで、専門性もなかったため、彼はそのような杖を持っていないが、あれば彼は研究所の一番見える場所にそれを飾っただろう。
人生は学習だ。人生は学ぶためにある。学ぶという意志を放棄してしまえば、それはただの電気信号で機械的に動く肉の塊と同等の存在となる。
「そろそろ馬車が来る時間帯だな」
エリックは懐中時計を取り出してそう呟く。
その呟きとほぼ同時に遠くから馬の蹄の音が聞こえてきた。
「おや。死霊術師の方で? 今日は随分と多くの死霊術師の人がアーカムから出ていきますな。何かあったのですか?」
「失業だ」
エリックはそう告げて馬車に乗り込んだ。
「さあ」
「あ。ありがとうございます」
馬車に乗る際の段差でエリックはフィーネに手を貸した。
「それでは他にご乗車する方はいませんね。出発します」
馬車はガラガラと音を立てて、アーカムを出発した。
エリックは最後にアーカムの姿を見る。
光り輝く眠らない都市。その栄光はいつまで続くだろうか。
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馬車はガラガラと進む。
4時間おきに設置されている馬小屋での休憩の時間以外はずっと馬車に乗っていることになる。馬車も商売なのでなるべく早く人間を目的地に届けて、次の客を乗せたい。そのため休憩は短時間だ。
特にエリックたちの乗っている馬車は運賃の安い平民向けのものだ。貴族や富豪なら自分の馬車を持っているので、このような馬車を利用することはない。
事実、エリックたちと同乗しているのは、アーカムに出稼ぎに来ていたのだろう農夫風の男性と自分の馬車がまだ持てない行商人と思われる人物だった。
流石に時間帯が遅いためか、馬車内で会話はなく、フィーネもエリックに寄りかかって寝息を立てていた。それでも杖だけはしっかりと握り締めている。
誰かにこうして寄りかかられるのは何十年振りだろうかとエリックは思う。
ヴァージルたちは訓練された冒険者だった。彼らは一種の覚醒効果のある向精神薬──中毒性はない──を服用し、72時間眠らずに行動できた。街に帰り、宿に入るまでは決して気を抜かず、居眠りなどとは無縁の冒険者たちだった。
だから、エリックが誰かにこうして信頼を置かれ、身を預けられるというのはあまりにも久しぶりのことであった。まあ、エリックの人付き合いが苦手だということで、あの広いアーカムでも友人と言える人間が“紅の剣”のメンバーぐらいだったことも原因のひとつであろうが。
馬車が急に止まったのはその次の瞬間だった。
「銃声。やはり治安が悪化しているな」
エリックはそう呟くと未だに夢の中にいるフィーネを見た。
「フィーネ。起きなさい」
「おなかいっぱい……」
「フィーネ」
「は、はひ!?」
エリックがフィーネの耳を引っ張り、フィーネが飛び起きた。
「あれ? 休憩ですか?」
「違う。銃声がした。恐らくは野盗だ。準備したまえ」
「銃声!?」
フィーネの声があまりの驚きにひっくり返る。
「落ち着きたまえ。慌ててもどうしようもない。少なくとも相手はこちらの命を奪うよりも先に、こちらの持っている財産に興味を示すだろう。身代金が取れそうならば生かしておくし、そうでなければいたぶってから殺すだけだ」
「こ、殺される……」
「だから、狼狽えないように言っているだろう。馬車を出よう。私から出る」
怯えて震え切っている農夫と行商人を置いて、エリックはフィーネとともに馬車の外に出た。時刻は0時50分。外は月の明かり以外の光源は存在しない。
「御者の方。ご無事ですかな?」
「は、はい。ですが……」
弾痕が地面に刻まれている。
「無害な黒魔術師を追放する暇があるなら、治安を改善してほしかったものだ」
エリックはそう告げて草木を踏む音のする方向を向く。
「へへっ。死霊術師か。アーカムを追い出されたのが全財産抱えて出てくるからいい獲物になるぜ。そこを動くんじゃないぞ」
そう告げて姿を見せたのは周囲に溶け込む緑色のシャツとズボンを身に着けた男たちだった。狩猟用の魔道式小銃で武装した野盗だ。軍からの流出品なのか、その服装はアーカム都市軍のそれと同じだった。丈夫な繊維で作られた野戦用の装備。
「フィーネ。杖を構えたまえ」
「は、はい!」
フィーネが杖を構える。エリックは外套のポケットから手を抜き、両手を広げて野盗たちに見せた。自分は非武装だと示すジェスチャーだった。
「おいおい。兄さんはもう降参か?」
「ボス。娘の方は上玉ですぜ」
「何見てやがる。あいつ、杖を構えているじゃないか」
野盗たちが言葉を交わす。
「だが、周囲に死体がないのに死霊術は役に立たないでしょう?」
「それもそうだな。ただのはったりか。それとも赤魔術でも覚えているのか?」
エリックたちと野盗の間で緊張が走る。
「フィーネ。見えるかね」
「はい。見えます」
「彼らはここで大勢を殺してきたようだ」
死霊術師であるふたりの目にははっきりと見えていた。野盗たちの体にしがみつく、多くの黒い影を。彼らに殺された恨みを抱える怨霊の姿を。
「だが、見えるだけでは意味がない。次のステップについては教わったかね?」
「いいえ……。見えるだけです」
「そうか。では、ここでレッスンだ。あの怨霊を使って野盗たちを無力化しよう」
エリックはそう告げて野盗たちに一歩近づいた。
「おい。動くんじゃない。次に動いたら撃つぞ」
「君たちはどうせ最後には撃つのだろう。ここで多くの人々を殺めてきた。ただ彼らの財産が欲しかったために。女子供すら殺した。少しばかり見過ごせないな」
「へえ。なら、何をしてくれるんだ? 連中の死体なら綺麗さっぱり片付けちまったから、お前が使える死体はないぞ? 死体のない死霊術師ってのも間抜けだな!」
野盗たちがげらげらと笑う。
「死体は必要ない。彼らの思い残したことを実現させるだけでいい」
エリックはそう告げて軽く手を振った。
「何を──」
「ぎゃあああっ!」
野盗のボスが戸惑った声を発したのと同時に悲鳴が響いた。
野盗たちは10名いたが、そのうち9名が体中から血を流しているのだ。目から、鼻から、耳から、口から、体のあらゆる部分から出血していた。そしてその苦痛にもだえ苦しんで、地面をゴロゴロと転がり回っている。
「死体は必要ない。君たちに憑りついた彼らの思いを遂げさせるだけで十分だ」
「て、てめえっ!」
野盗のボスがエリックを狙って魔道式小銃での射撃を試みたときに、その腕がぐにゃりと折れた。曲がってはいけない方向に曲がった腕を見て、野盗のボスが悲鳴を上げる。
「随分と恨まれているな。彼らは自己を失いかけるまで君たちを恨んでいたようだ」
「た、助けて……」
「君たちはそう言った人々を助けてきたのか? そうではないだろう」
エリックは腕を下ろし、野盗のボスの頭に手を置く。
「見たまえ。これが君たちを恨んでいるものたちだ」
次の瞬間、野盗のボスの視界に血まみれの人間の顔がいくつも浮かんだ。この顔には見覚えがある。野盗のボスが殺してきた人々だ。
「思いを果たせず、いつまでも地上に縛り付けられるのも哀れだ。彼らの願いを果たさせてやりたまえ。君に罪悪感が少しでも存在するならば」
「い、嫌だ……! 助けてくれ……!」
「できない相談だな」
そして、エリックが野盗のボスから手を離すと野盗のボスが悲鳴を上げ始めた。
「悪かった! 許してくれ! 頼む! 助けて──」
野盗のボスは部下と同じように血塗れになりながら地面に転がり、悲鳴を上げ続けた。その悲鳴が途切れて、彼が死んだのは15分後のことだった。
「フィーネ。レッスンだ」
「は、はい」
「怨霊を実体化させることも死霊術のひとつだ。怨霊には完全に自己を失って他者を無差別に襲うものと、恨みを持った対象のみを襲うものがある。こうして、後者を実体化させてやれば、敵対者を無力化できる」
「は、はい」
「実体化については怨霊で試すよりも、もっと安全な霊で試した方がいいだろう。レッスンはここまでだ。さあ、馬車に戻りたまえ。いつまでも待たせては他の乗客にも悪い」
フィーネは心臓をバクバクと言わせながら、馬車に乗り込んだ。
この人は本物だ。本物のグランドマスター・エリック・ウェストだ。
私はこの人から何を学べるだろうか?
フィーネの心を期待と不安がよぎったが、期待の方が僅かに上回っていた。
私はなるんだ。一人前の死霊術師に!
……………………
連載版始めましたのでブクマを移していただけると助かります。
「追放された死霊術師さんたちの研究日誌 ~最高の魔術師が弟子を取った場合について~【連載版】」
https://ncode.syosetu.com/n5789gn/