フレーズ
春なんてもう二度と来ない。そういう恋をしてますか。暗いのではなく昏いだけ。寂しいのではなく淋しいだけ。悲しいのではなく哀しいだけ。そういう恋をしていますか。
糖度と感度と明度がちがう、最低な三度目の恋のさなか、そういえば二度目もこんなフレーズで愛したと思いながら、夏に目を開くわたしの虚しさが空回りしていて、本当に好きだったんだよなぁとべつの人とキスしながら。
また新しくうまれかわる。
蝶々のようなダンス。藪雨のようなセンス。蜘蛛のように這って蚯蚓のように眠る。わたしの生活は臆病風に吹かれて、貧乏くさい耳鳴りを疎みつつ、きみの好きなわたしになる。それがわたしの好きなわたしだから。たぶん、たぶんそうだろ。
また新しくうまれかわり。
人間のようなダンス、人間のようなセンス――人間ってどこに? 恋をするのが人間なら、誰かを愛すのが人間なら、わたしもう人間のお手本なのに、そうなれてる感じはない。あぁもう、あぁもうどうだろ。
まただ。あのフレーズできみを愛す。
なにがちがうのか知らない。いままでと同じかもしれない。人間にはならない。掌の上で踊る。
明度が上がるたび、きみに惹かれる。