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深奥の遺跡へ  - 迷宮幻夢譚 -  作者: 墨屋瑣吉
第一章:挑みし者たち

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31. ジャンダルの成長 /その①



 ─ 1 ──────


 今日もファルハルドたちはパサルナーン迷宮の二層目に挑戦中だ。三度戦い、今は休息所で休みを取っている。


「ふむ。それでその子供たちは元気にしておったのか」


「ああ、モラードたちのこと。元気、元気。食事もお腹いっぱい食べれてるみたいで、半年ぶりに会ったらだいぶ背も伸びてて驚いたね。あの様子じゃ、来年にはモラードに背を抜かれたりして」


「確かにな」

「いやいやいやいや、ちょっと兄さん。そこは嘘でも否定しとこうよ」


「そういうものなのか。済まん」

「いやいやいやいや、本気で謝られると逆に困るんだけど」


 二人の遣り取りをバーバクたちは笑いながら聞いている。


「なんにしても苦難に遭った子供たちが元気に過ごせているのなら、良いことだのう」

「だな。お前たちも今後も元気な姿を見せられるように頑張らないとな」

「ああ」




 ─ 2 ──────


 休息所を出て、二層目を進んでいく。すぐに敵が現れる。現れた敵は熊型の石人形が一体、狼型の石人形が二体、猿型の木人形が二体だ。


 二層目になっても、石人形と泥人形はそう大きくは変わっていない。多少体格が大きくなり、敵の形の種類が増えた程度だ。

 なにより、一部悪魔型のような異形の姿をしているものもいるが、その姿は基本外でも見られる動物たちと変わらない。


 しかし、木人形は違う。一層目の木人形は外の動物たちと同じ姿をしていたが、二層目では多数の腕や足が生えているもの、あるいは関節の数が違うものなどが出てくるのだ。



 今、ジャンダルとハーミが相手している猿型の木人形も同様だ。肩から手首の間に肘以外に二箇所の関節があり、複雑な動きを見せる。

 そして、関節部分を外し長さを伸ばせる木人形たちは、関節部分が増えることはそのまま伸ばせる長さが伸びることを意味する。


 ハーミが相手取っている一体は右腕が二本ある。それでもハーミは余裕をもって対応している。対して、ジャンダルは押されている。今のジャンダルには一人で相手取るのは荷が重い。


 いつもの通り、押されているときは一旦距離を取り飛礫つぶてを打つ。

 一呼吸で四つ。盾を手放し、両手で四つの飛礫を打つ。二つは当たり、一つは避けられ、残る一つははっしと受け止められ、投げ返された。


 まさか投げ返されるとは。ジャンダルは焦る。慌てて避け、無様に転んだ。


 すかさず木人形が襲い来る。その爪がジャンダルの胸を貫く。

 かと見えた瞬間、間一髪ハーミが顕現させた光壁が妨げた。


 短く礼を言い、ジャンダルは素早く立ち上がり距離を取る。

 盾は手元を離れ、敵の足元に転がっている。これでは間違っても、攻撃を受ける訳にはいかない。ならばどうするか。積極的に攻め押しきるか、あるいは安全策を取って逃げ出すか。


 当然、選ぶ答えは攻撃。


 左右の手で上下に高さを付け、ナイフを投げる。胸を狙ったナイフは避けられ、腕をかすめる。膝を狙ったナイフは避けきれず、そのまま刺さった。木人形は痛みを感じずとも、その移動は制限される。


 ジャンダルは木人形に駆け寄り、鉄球鎖棍棒を振るう。頭を狙うが避けられる。


 しかし、その程度は予測済み。


 間髪入れず、左手で腰に巻いた鎖を引き抜き、木人形の右腕を絡め捕った。そのまま、もう一端を木人形の右足に絡みつかせる。右腕と右足に絡みついた鎖を踏みつけた。


 敵は体勢を崩し、倒れ込む。そこを狙い、ジャンダルは鉄球鎖棍棒を振り抜いた。


 木人形は左腕を盾代わりとし、頭を守るが関係ない。立ち上がる隙を与えず、滅多打ち。何度も鉄球を打ちつける。


 敵が動きを止めた時、その左腕から頭にかけてはばらばらの木片と化していた。




 ジャンダルが猿型の木人形を倒しきり、息を乱して座り込む頃、他の者は全員敵を倒し終えていた。ジャンダルの疲労具合を見て、一行は一旦休息所に戻ることにした。


「大丈夫か。だが、一人でよく倒したな。それに、なんだか鎖の新しい使い方も見つけたみたいだな」


 ジャンダルは声を出すのも億劫おっくうなのか、頭だけを動かしバーバクの誉め言葉に無言で頷く。

 一方、ファルハルドは気になった点を指摘する。


「盾を手放すのは、考え直したほうがいいんじゃないか」

「ふむ、確かにの。そう言えば、確か大き目の盾を使ってる者の中には、盾を構えていない間、革帯で背中に吊ってる者もいたのう。真似てみればよいのではないか」


 ジャンダルも話せるだけの元気は回復したのか、あまり力のない話し方だったが考えながら返事をする。


「そうだねぇ。今回、ハーミの光壁がなかったら死んでたね。そう考えると、確かに盾を手放すのはまずいよね。でも、飛礫打ちやナイフ投げを考えるとやっぱ両手を空けたいし、吊ったほうがいいのかなぁ。

 うーん、どうしたものか、ちょっと考えがまとまんないなぁ。今度、防具店で相談してみようかな」


「なら、少し早いが今日はここまでにしておくか」

「そうだな。無理して大怪我しても、つまらないからな」


 この意見にジャンダルは少し肩をすくめてみせた。


「悪いね」

「なに、気にするな」



 一通り、生還者の間での光の奉納と組合での換金を済ませ、ファルハルドとジャンダルは連れ立ってキヴィク親方の防具店を訪ねた。


 キヴィク親方は相談を受け、ジャンダルの飛礫打ちや盾の使い方の実演をさせた。


 親方と話し合い、盾を肩掛けできる革帯を取り付けることにした。


 あまり長過ぎると、盾を手放した時ぶらついて不便。と言って、短過ぎれば盾としての取り回しが不便となる。


 結果、盾を構えて腕を真っ直ぐ突き出すことはできないが、手放した時に盾が腰の辺りにくる長さにした。

 しばらくこれで使ってみて、不便なら多少の長さ調整ができるようにしている。


 ついでにファルハルドも盾の取り付け部分を変えた。


 今までは中央に握って掴むための取っ手があるだけだったが、よりしっかりと構えることができるように取っ手を中央から横に付け直し、それ以外に腕を通すための革帯を取り付けた。


 これで力強い一撃を受けても盾を落とすことはない。その分、盾を構えられる位置や角度は制限されるが、二層目から増えてきた力強い攻撃を受けるためにはこちらのほうが都合が良い。

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