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深奥の遺跡へ  - 迷宮幻夢譚 -  作者: 墨屋瑣吉
第一章:挑みし者たち

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07. 装備選び /その③



 ─ 4 ──────


 見習いのカーリブ少年に案内され、防具店に向かう。場所は通りこそ別だが、同じ南地区にあることもありすぐに着いた。


 こちらもオーリン親方のところと同じで、小さな店舗部分と裏の広い工房からなっている。カーリブ少年は、最初から二人を裏の工房へと案内する。


 オーリン親方の工房はいかにも鍛冶屋という造りだったが、こちらは違う。炉などもあるが、どちらかというと革板や針金を仕入れ、それを防具に仕立てる加工所のおもむきがある。扱う素材の種類も多いためか、働いている職人も多く、見習いを含めれば六人の職人がいる。


 カーリブ少年はそのうち最も年上の、オーリン親方と同年齢らしき人物に声を掛けた。


「キヴィク親方、ご無沙汰してます。うちの親方からの紹介で、これから迷宮に挑戦されるこちらのお二人の防具を見繕って欲しいんです。ただ、予算はお二人で大銅貨十五枚。一つなんとかお願いします」


「申し訳ないんだけど、お金がないんでよろしくお願い」

「迷惑掛けるが頼む」


 キヴィク親方は作業の手を止め、考えながら顎髭を撫でゆっくりと口を開いた。


「その金額なら鎧は諦めてもらうしかないな。盾は消耗品だから新品しかない。兜は少しへこんだのでもよければ、中古もあるな。一番安い分なら合わせて二人分で十二枚だ」

「じゃあ、それで」


 予算から言って、他に選択の余地がない。


「一つ聞きたいが、鎧より盾が重要なのか。迷宮に入っていく挑戦者たちを見たが、鎧を着ていない者も盾は持っていた。だが、外で見た兵士は逆だった。いささか気になったんだが」


 この質問に、キヴィク親方は首をひねる。


「どうなんだろうな。単純に鎧が高いってのが一番の理由かもしれんが……。

 そうだな、二つに一つ、どちらかしか選べないとなると盾だな。石人形の体当たりなんて鎧では衝撃までは防げない。盾で受けて身体に当てないことが大事だ。

 もちろん防ぐのに失敗すれば無防備な身体を狙われることになるから、やはり鎧も必要な訳だがな。


 外の場合はどうなんだろうな。長い距離の移動とか、使う武器の種類によっては盾が邪魔になるから持たない者もいるってことじゃないか」


「なるほど。とにかく身体に当てないことが大事ということか」

「だろうな。俺はあくまで防具屋だ。自分で迷宮に潜った訳じゃない。お客の話を聞く限りはそうなるようだってことだ。

 さてと。そら、これが盾と兜だ。着けてみな」



 ファルハルドたちは、差し出された兜を被り盾を手に取る。


 兜は頭部を覆う鉢だけのもので、顎の下で結ぶ革紐が付いている。大きさ合わせと衝撃吸収のために、まず厚手の頭巾を被り、その上に兜を被る。今回はへこみのある中古品のため、普通より厚目の頭巾を被る。


 少し重く首が疲れる。もっといい金属を使ったり、頭の形に合わせ重さが分散する複雑な形状にすればましになるそうだ。だが、今の二人はこれで我慢するしかない。


 盾は樽の蓋に取っ手を付けただけのものだ。これも金を出せば金属で縁取りしたものや、異なる素材を何層かに組み合わせ頑丈にしたものも選べるが、今はこれしか選べない。


 大きさは約一アレン。直径が肘から指先までの大きさの円盾だ。迷宮で最もよく使われる大きさよりも一回り小振りだ。握りは真ん中に一つあるだけなので、構えると肘は盾の外に出てしまう。

 使いやすいとは言えないが、二人ともこんなものだろうと考える。


「うん、これでいいや。じゃあ、これが代金ね」

「毎度あり。ぜひ生き残ってまた買いに来てくれ」


 もちろんと答え、防具店を後にする。二人の防具が決まるまで付き合ってくれたカーリブ少年に駄賃として中銅貨オル一枚を握らせる。見習いの懐事情は厳しいのか、中銅貨一枚で随分喜んでくれた。




 別の店に立ち寄り、包帯に使う布とファルハルドの背負い袋、干し肉などの保存食を購入した。背負い袋は中古のものがびっくりするくらい安かった。穴が空いていたが、それはジャンダルがつくろうと言う。


 その後、中央大神殿のミフルの岩間に行き、仲間集めについて助衆に尋ねたが、やはり決まった場所はないということだった。

 この場所で他の挑戦者に声を掛ける者もいるが、そのあたりは各自自由に行っているらしい。仲間を募る者が利用する特定の場所などは聞いたことがないそうだ。


 その日の夜は昨日とは別の酒場に向かった。

次話、「迷宮への初挑戦」に続く。

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