②十二月二十二日
一時間目の日本史と二時間目の英語は至って普通だった。
なにも起こらず、淡々と進む授業。
ことが起きたのは、三時間目の体育だった。
休み時間に体育着に着替えて体育館へ向かうと、入り口に謎の人だかりができていた。
ぼくはその人だかりを避けようとしたが、その輪の中から伸びてきた手がぼくの裾を掴み、人だかりの中心へと引っ張る。
「あきら、これ見ろよ」
ぼくを引っ張りこんだのは級友の鈴原竜太だった。
いつものしょうもない悪だくみかと思いながら、手渡されたものを見た。
「え!?」
「なにすっとんきょうな声あげてんだよ! バレるだろ」
「いやでも、だってこれ……」
女子更衣室の着替え写真が何枚もあった。
「女子更衣室の壁に穴が開いててな。部活の先輩に教えてもらって携帯のカメラで撮ったんだよ。無音にするの大変だったんだぜ」
「いや、というか犯罪だよね、これは」
「堅いこと言うなよ、これやるから」
そういって手渡されたのはまゆなさんの下着姿の写真だった。
「まゆなちゃん、スタイルいいうえに天然だしでかわいいよな。お前が羨ましいよ」
「確かにかわいいけど、羨ましいの意味がよくわからないよ」
「いやそりゃ言葉通りなん……」
そこで言葉を切って竜太が写真を慌てて隠す。体育館の入り口に屯していた他の連中も慌てて交換していた写真を隠し始めた。
ぼくも嫌な予感がしたが、時すでに遅し。
顔は笑いながらも目がまったく笑ってないやしろさんが腕組みをしてすぐ隣に立っていた。
「あんたらねぇ、こういうことしてバチが当たらないと思ってるなら甘いよ」
咄嗟に男子たちが逃げようとするが、一人、また一人と首根っこを捕まえられてはポケットから写真を押収される。