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短編

近くて遠い距離

作者: 小沢琉祢
掲載日:2019/01/27

『好きな人ができるとその人のことをずっと考えて、もっとその人のことを知りたくなったりしたことはない?

粘着質って思われるほどメールを送ったことは?

こっそり後を追ったり、写真を撮ったりしたことは?

私は後を追ったり、写真を撮ったりはしないけど、若干ストーカーと化していた。

いつでも話しかけるタイミングを狙っていた。

話しかけられてうれしくなったりした。

ことあるごとにメールを送ってた。

やっぱりうざいんだろうね?

好きでも嫌いでもない人間からメールが来たり、話しかけられたりするのは嫌だろうね。

自分でもわかっている。

でもやめられない。

ごめんなさい。

好きでいていいですか?

駄目?やっぱり?

ごめんね。やっぱりうざいよね。

もう消えるねさようなら。』





そんなメールが届いた日。

「…はあ?」

なんだこのメール。なんか相手が死んでそうで怖い。

そう思って電話をかけたけど、電話に出れないという事務的な声が聞こえるだけだった。

届くかわからないメールを私は打った。

『月野のこと、私好きだよ。

私も月野に話しかけられると嬉しいし、もっと話したくなる。

うざくもないし、むしろもっと話したい。

好きでいてください。こんな私でもよければだけど(笑)』





次の日。

月野が登校してくるのを見て私は彼女の所へ行った。

「ああ…昨夜はごめんね。変なメール送っちゃって」

彼女は下を向いて私の顔を見ようともしない。

「実はさ、昨日自殺しようとしたんだ」

「なんで?いつ?」

「あのメール送ったすぐ後。結局失敗しちゃった」

はははとかわいた笑いをこぼして彼女は言う。

「メールの返信、ありがとう。なんか生きててもいい気がしたよ」

月野は度々そういうことをする。

何故か、死にたくなって(原因は些細なことが多い)実行に移すのにいつも死ねない。

「私のこと好きならさ、約束、してくれない?」

私はふと思いついてある提案をすることにした。

「ん?いいけど私ができそうなことにしてね」

「私より先に死んだりしないで」

「えーそれは無理だよ」

即答だった。

しかしそれであきらめるほど私は弱くない。

「じゃあ言い方変える。もう自殺したりしないで」

「それも多分無理だよ。だって私には何もないもん」

「私がいるじゃん。大親友の智香様が」

ドンと胸を張る。

「自分に様付けするの?」

苦笑いを浮かべる月野。

「いいじゃん別に」

なんだか急に恥ずかしくなって意地を張った。

「智香に迷惑かけたくないんだよ」

「自殺することが迷惑かかってるって」

「そうかなあ」

「自殺したら、私以外の人にも沢山迷惑かかるよ」

「うーん…じゃあ頑張ってみます」

そう言って笑顔を向けた月野の姿を今でも思い出す。





「智香ー」

「よっ月野」

久しぶりに会った月野はなんだか少し太っていた。

前は具合が悪そうな顔をしていたのに今では明るい顔をしている。

「やっほーひっさしぶりだねえ」

「だって大学が忙しいからさ。なかなか時間取れないんだよ」

「ごめんね、暇人で」

申し訳なさそうにする月野。

でも本当に悪いのは私だったから励まそうとして言葉を発した。

「月野が暇人だとはだれも言ってないじゃん」

「そうだね。えへへー智香と会うの久々すぎて緊張してるよー」

月野が胸に手を当てて深呼吸するそぶりをする。

「大丈夫。すぐいつも通りになるって」

一応フォローしておく。

「そうかなー?私昔よりだいぶ太ったし、軽蔑されてない?」

「確かに太ったなとは思うけど軽蔑はしないよ」

本当のことを言うと月野がぐっと渋い顔を作った。

「ううー…これでも太ったの気にしてるんだよ?」

「じゃあダイエットしなきゃね」

「おやつがやめられないんだよーあと運動嫌いだし」

今でも月野は生きている。

それは、私との約束を守ってくれているからだろうか。

それとも、一人でまだ繰り返しているのだろうか。

それは分からない。

でも、久々に会う月野はとてもきれいな笑顔を私に向けていた。

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