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ファンタジー世界で、命を精一杯使う。  作者: 莢蒾
逃げる勇者、捕まる化物。
1/3

過去


「……ここは……草原?」


久々に見る草木のざわめき。僕が封印されてから何年経ったのだろう。

封印という言葉に嫌気がさしてくる。何度待ちわびたであろうか、この解放を。


「……寂し……かった……。」


声を殺して涙を流す。最初は復讐心で縛られていた。なぜ、僕をここに閉じ込めるのかと。それは次第に孤独への寂しさへ変わる。


光の友はいた。友はいたが終始一緒にいる訳では無い。帰って、しばらくしてくる。その間すら、やはり孤独の寂しさへ震えた。


懇願した、誰でもいいと。

懇願した、私たちを出してくれと。

懇願した、灯りをくれと。

懇願した。


いつの日にか、諦めた。友がいてくれるだけ、満足になったから。それでも、不安で不安で仕方なかった。いずれ消えると知っていたから。


「今は……僕の……中、か。」


泣き続ける中で友を想う。消えた瞬間、胸に温かいもの、そして手足からくる激痛。気がつくと、ここにいた。


「昔より、強くなってる。強くなったけど……僕は、これをどう使えばいいんだろう……。」


ふと空を見上げる。こぼれる涙は少し目元に溜まりまた、流れ出す。


「歩こう、踏みしめて、今を……。お前がくれたこの温かさと未来……背負って……。」


鎖や手錠は既にサビ廃れ、簡単に外せた。暫く、ぼうっとして歩く。空を見上げて歩く。夕日を見つめる中、自然と涙が止まっていることに気づいた。


「……あまり、嫌われないようにだけ、生きよう。」


死ねない体なのだ、老いが来るまで生きそして死ねばいい。それでいい。寂しさに包まれないような場所で。死ねずに孤独を味わい続けるのは、もう嫌だ。


「……お腹……減ったな。」


臭いがする。焼けた肉の臭いだ。近くで、何かあるのだろうか、取り敢えずそっちの方角へ行こう。


自分の服装は、奴隷のそれ。それを見た人間がどんな反応するかは、未だまだ、僕はわかっていなかった。

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