過去
「……ここは……草原?」
久々に見る草木のざわめき。僕が封印されてから何年経ったのだろう。
封印という言葉に嫌気がさしてくる。何度待ちわびたであろうか、この解放を。
「……寂し……かった……。」
声を殺して涙を流す。最初は復讐心で縛られていた。なぜ、僕をここに閉じ込めるのかと。それは次第に孤独への寂しさへ変わる。
光の友はいた。友はいたが終始一緒にいる訳では無い。帰って、しばらくしてくる。その間すら、やはり孤独の寂しさへ震えた。
懇願した、誰でもいいと。
懇願した、私たちを出してくれと。
懇願した、灯りをくれと。
懇願した。
いつの日にか、諦めた。友がいてくれるだけ、満足になったから。それでも、不安で不安で仕方なかった。いずれ消えると知っていたから。
「今は……僕の……中、か。」
泣き続ける中で友を想う。消えた瞬間、胸に温かいもの、そして手足からくる激痛。気がつくと、ここにいた。
「昔より、強くなってる。強くなったけど……僕は、これをどう使えばいいんだろう……。」
ふと空を見上げる。こぼれる涙は少し目元に溜まりまた、流れ出す。
「歩こう、踏みしめて、今を……。お前がくれたこの温かさと未来……背負って……。」
鎖や手錠は既にサビ廃れ、簡単に外せた。暫く、ぼうっとして歩く。空を見上げて歩く。夕日を見つめる中、自然と涙が止まっていることに気づいた。
「……あまり、嫌われないようにだけ、生きよう。」
死ねない体なのだ、老いが来るまで生きそして死ねばいい。それでいい。寂しさに包まれないような場所で。死ねずに孤独を味わい続けるのは、もう嫌だ。
「……お腹……減ったな。」
臭いがする。焼けた肉の臭いだ。近くで、何かあるのだろうか、取り敢えずそっちの方角へ行こう。
自分の服装は、奴隷のそれ。それを見た人間がどんな反応するかは、未だまだ、僕はわかっていなかった。