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第55話 大好き!○つ子ちゃん



年は明けて1月5日、長安市内にある長安総合病院。

その廊下で二人の男が行ったり来たりしながらうろうろしていた。


「陛下、彼女は大丈夫ですかね?予定日よりも1ヶ月近く遅れて……。あぁ彼女に何かあったらどうしよう……」


「大丈夫だ。大丈夫。きっと大丈夫」


心配しすぎて落ち着かず立ったり座ったり歩き回ったりをしているのがジョン。

若干顔は青い。

昨年末ニュージーランドから帰国してきたが、その後仕事に復帰してもいつ産まれるかものすごく心配していて、仕事が全く手につかなかったので仕方なく休暇を取らせていた。

今も絵に描いたような心配症のお父さんである。


そして大丈夫を連呼しているのは俺。

何が大丈夫だ、こっちがおかしくなりそうだよ。

っていうかジョン、少し落ち着いてくれ。

お前のせいで俺が不安が何倍、何十倍にも膨れ上がっているのだが。

しかし、その後もジョンが落ち着くことはなく、この二人の情けない姿はその後3時間近く晒されたままであった。


そして分娩室にクッキーが入ってから4時間後、ようやく赤ん坊の鳴き声が聞こえてきた。

そうそう、彼女は人間の状態で出産をしている。

生まれてくる子も人間の状態で生まれてくるらしい。

年末に出産が近くなってきた彼女に獣医と産婦人科医どちらを呼べばいいかと聞いたらひどく怒られた。

でもさ、普通分からないでしょ。

だって一応彼女は犬なんだし。

それはさておき、とりあえず泣き声が聞こえてきたってことは大丈夫なんだよな?

良かった、良かった……。


その後20分ほど経った。

しかしまだ俺たちは入れてもらえない。

まさか、何かあったのか……。

そういう暗い予想が頭をよぎった。

が、実際はそうではなかった。


「なぁ、なんか泣き声が増えてないか?」


俺は廊下を隣りで立ったり座ったりしているジョンに聞いた。


「え?あ、でも確かに。まさか双子……?もしそうならうれしいです!」


彼は本当にうれしそうだ。

そして部屋からは元気のいい赤ちゃんの泣き声が響いてくる。

けどさ、これ絶対一人や二人じゃないぞ。


「お父さん、赤ちゃん生まれましたよ。母子ともに無事です。おめでとうございます!」


急に扉が開き、中から看護婦が出てきてジョンに言った。


「本当ですか!?良かった……」


そう言ってベンチに座り込んでしまった。


「おい、座り込んでないでほら、早く赤ちゃんと奥さんのとこ行ってやれよ」


すると彼は飛び上がるように立って中へ入っていった。


「ところでさ、男の子?それとも女の子?」


俺は看護婦に聞いてみた。


「えっと、確か男の子が5人と女の子が3人ですね。みんな若干体重は低いですが健康に問題はありません」


ってかさ、今さらっと言ったけど8人ってなんだ、8人って!

8人年子で産むのも大変なのにいっぺんにこんなに産めるわけないだろ。

昔流行ったドラマでも5人だったぞ。

それにプラス3人……。


第一どうやって腹ん中入ってたんだよ。

一人3000グラム計算でも24キロだぞ。

どう考えたって無理だろ。


「ははは……。本当にみんな元気か?特にお母さんやばそうだけどさ」


しかし看護婦は事も無げに、


「みんな全く問題ないですよ。何なら入って見られます?」


俺はさすがに自分の目で見ないと信じられないので、中に入らせてもらって見てみることにした。


「陛下、わざわざ来てくださったんですか!本当にありがとうございます」


入るとクッキーが起き上がろうとしたので、


「いやいや、そのまま。無理しちゃいけんからね。にしてもお疲れ様だな。マジでよく産んだよこんなに……」


彼女の隣りには小さなベッドが10個ほど並んでいて、そのうち8個にそれぞれ赤ちゃんが納まっていた。

10個ってもともとそれぐらいの予定だったのかよ。

普通の産婦人科医なら今頃腰抜かしてるぞ。


俺は一番近くにいた赤ちゃんの顔を覗き込んでみた。

しかし別にこれといって変わったところのない、普通の赤ん坊。

その隣りの子を見ても同じ。

本当にちゃんとした人間だ……。


「いえ、多い犬は12匹は産みますよ。これくらい大丈夫です」


これぐらい、ですか……。

ってかそこだけ犬にあわせるのかよ。

普通の人間なら絶対今頃あの世行きだったし。


そんでもって旦那のジョンは隣りで呆然として突っ立てるぞ。

夫婦なら教えといてやれよ。


「子供の数は犬に合わせてあるのかよ。ってかどうやって腹に納まってたんだ?」


俺はとりあえず気になるので聞いてみる。


「さぁ?これも設定した人に聞いてみてください。私も明らかにおかしいと思うんですよ。絶対に人間の姿なら入りませんから」


彼女も肩をすくめて言う。

いいのかよ、こんないい加減で。

全然リアリティが感じられないぞ。


「まぁいいか。とにかくおめでとう。今はゆっくり休むんだぞ。それじゃ俺はこの辺で引き揚げるよ。後は家族水入らずでゆっくりすればいい。じゃあな」


俺はそう言って病室を後にした。


この出産後2ヶ月ほどして彼らは結婚式を挙げる。

俺はその日は子供達(みんなベビーベットに収まっている)の隣りに座っていた。

初めはすやすや眠っていたが新郎新婦が誓いを言う有名なシーン、あのところで丁度ほぼ全員が泣き始めたのでほとんど聞こえなかった。

あれ一度生で聞いてみたかったのにな……。



ところで再び疑問。

このゲーム、アシスタントは年取らないんだよな。

だったらあの赤ちゃん達はそのまんま?

いや、いくらなんでもそれはないかな。

おい、どうなんだ作者?





駄文失礼しました。正直これもあってもなくても良い話だったのですが、割と前からこの話の構想があったので、とりあえずいれちゃえと挟んでみました。ただ、子供達には活躍してもらう予定です。


今回の名言↓

「戦略は、時間と空間を有効に使用する科学である。余は前者の使用をより重視する。なぜなら、空間は奪回可能だが、失った時間は永遠に取り戻せないからだ」

―グナイゼナウ

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