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第52話 戦争終結へ



「戦闘を継続して何の利益があるというのですか!国民はもはや疲弊しています。昨年度の大幅な増税及び徴兵により国民の生活は非常に苦しい。もはや戦争の大勢はつきました。講和するべきです」


「我が軍に全く勝ち目がないわけではない。上陸してくればこっちのものだ。敵は地理に疎い上に兵站上大軍を投入するのは大きな負担になる。地上戦になれば必ず勝てる」


「地上戦に持ち込む?国内で戦えば国民多数を巻き込むことになります。それに我が国の人口の大半は海岸近くに住んでいるのです。内側は砂漠……、国民は一体どこへ逃げればいいのですか?」


「南部に避難させておけばいいではないか。そもそも貴様らが……」



果てることのない議論。

非常にヒートアップし続けており、このままいけば最後は取っ組み合いの喧嘩になりそうだ。


だめか……。


矢木先生はため息をつく。

会議でどちらかに意見がまとまってくれはしないか期待していたがさすがに甘くはなかった。


徹底抗戦を唱えるのはどこの国でもおなじみの陸軍のお偉いさん方。

彼らからすれば日本軍とはほとんど戦っていないわけで、戦わないうちに降伏などできないというのだ。


そして国民生活を考えそれと真っ向から対立するのが政府官僚ら、とりわけ大蔵省と内務省の方々である。

莫大な戦費の捻出に苦労を重ねてきたがもはやそれも限界ということを肌で感じているのだ。

それに国民の中に漂う厭戦ムードも日増しに強くなっているのも分かっている。

ニュージーランドからの講和の斡旋があった今こそチャンス、これを逃したらもっと大変なことになると彼らは必死だ。


一方沈黙しているのは海軍の方々。

徹底的に叩かれもはた戦力の残っていない海軍に発言権はほとんどなく、また発言することもなかった。

戦うなら艦をよこせ、でなければ戦争やめろ、といった感じか。


激論が展開されるなか彼女はその議論を呆然と眺めていた。

よく喋る……。

彼女が持った感想はそれだけ。

どうするかなんて全く考え付かない。

しかしこのまま聞いているだけでは埒が明かない。


「はい、じゃあもうそこまで!これ以上やっても結論なんてでないわ。これはもう国会で審議してもらうことにします。それじゃあ解散」


彼女は突然立ち上がって言った。

そしてそのまま会議室を出て行く。

残された将軍や官僚らはそれをただ呆然と見つめるしかなかった。



そして2日後、国会審議が始まった。

彼女は出席して議論を眺めてはいるが議会に丸投げしてしまっており、軍部と政府がそれぞれ各議員に裏工作で自分を支持するようにと言ってまわった。

当初は政府側の議員は過半数を割り込んでしまって不利な立場に立たされたが、ジョンの指示を受けた工作員らも講和に賛成するように様々な面から圧力をかけたり、ときには賄賂で議員らを買収していったことから最終的には圧倒的に講和派が有利に進んだ。

そして会議が始まってから8日目に行われた採決で、344対56(棄権20)で対日講和が承諾された。


本当にジョンを送り込んでおいて正解だった。

彼の指揮によってニュージーランドから送り込まれた諜報員達は本当に細かいことまで伝えてくれたし、今回の国会審議のところでもオーストラリア側はかなりの防諜体勢を如いていたのだ。

しかしわずかな期間にもかかわらずかなり深く食い込んでいた日本の諜報網はこれをキャッチし、積極的な働きかけを行って講和へと上手く導いたのである。

と言ってもこれにはもともと諜報網を作り上げていたニュージーランドの支援があってのものだが。


あとは外交交渉。

これさえ上手くいけば戦争は終わるのだ。



それから1週間後、オーストラリア政府から正式に講和へ応じるとニュージーランドへ返書が送られ、ニュージーランド政府は直ちにそれを転電して日本へ伝えてきた。

日本側はそれを受けて各地に展開している部隊に警戒を厳にして積極的な攻撃は控えよという命令を出し、外務省には交渉に当たらせる外交官の人選を行わせる。

そして1915年2月24日、ニュージーランドのウェリントンで講和交渉は始まった。


日本政府はニューブリテン島への軍事基地建設、マーシャル・ギルバード・カロリン諸島などオセアニアの島々の日本の領有を認めることや、自由貿易協定の締結などを引き換えに賠償金請求権を放棄するという案を提示した。

かなり寛大な案でありオーストラリアはすぐに呑むものと思われていたが予想外に難色を示す。


どこが気に食わないかというと自由貿易協定締結のところで、工業力が飛躍的に伸びている日本から大量の製品が流れ込み、自国経済を悪化させると思ったらしい。

さらにニューブリテンの軍基地によりオーストラリアは事実上日本に囲まれてしまうわけである。

しかしどちらも勝手な言い分、負けた方であるためこれくらいは呑んで当然であろう。

いくら相手が生徒とはいえなめすぎてないか?

どんな条件で講和しようとしてたんだ、一体。


上手く進展しない中それを救ったのはニュージーランドであった。

オーストラリア全権を必死に説得したり、本国にいる矢木先生に説得の電報を打ったりして日本のソロモン諸島領有権放棄と引き換えにそれを認めさせたのである。


そして1915年3月1日、条約は発効され第1次世界大戦・太平洋戦線での戦いは終結した。





ここ最近拙作が原因で議論が起こり、読者の皆様や数名の意見を出してくださった方に不愉快な思いをさせてしまいましたことを深くお詫び申し上げます。その部分に関しては明日朝削除いたします。


皆様にはご批判は作者にのみ行なっていただきますよう切にお願い申し上げます。この小説に関するものは全て私に責任があります。不甲斐ない私の作品で他の方に不愉快なお思いをさせるのは大変遺憾であります。


これから気分を新たに再出発の思いでこの小説の執筆に取り組んでまいります。未熟者が書く稚拙な作品・文章ではありますが完結まで書いていきたいと思っております。これからもどうかよろしくお願い申し上げます。

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