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第50話 日印講和会議



インドとの講和会議は西蔵のラサで行われた。

日・印双方ともに国家元首自らが出席してのものである。

そのほか外務大臣や元首の副官(アシスタント)も来ていた。

どうでもいいが向こうのアシスタントはもともとチワワらしい。

若干クッキーがイライラしていたが何なんだろう?

かわいいチワワに嫉妬?

まさかね……。


まぁそれはおいといてこの会議には日・印政府だけでなく反乱軍の将軍も何名か出席していた。

これは日本側の要請によるもので、あわよくばインドの内戦も終わらせてやろうと思ったからである。

そう簡単に終わるはずもないけどな……。


さて、講和条約締結は日本側の超寛大な処置によりスムーズに締結された。

領土割譲・賠償金請求は一切なし。

戦後FTA(自由貿易協定)を締結することや東南アジアにおける日本の優越を認めること等本当に大した内容ではない。

インドは賠償金や領土割譲があるものとビクビクしていたらしいが、肩すかしを食らったような感じだったようだ。


まぁこれは今後を考えると日本とインドが対立するのは好ましくない、とうこともある。

しかし第一はいまだ貧困層が多いインドの領土を組み込めば面倒なことが多いのと宗教対立などとは無縁でいたいこと、中途半端に領土をもらっても仕方がないことなど要するに戦後統治が面倒くさいという点に尽きた。

それに今占領している地域はほとんどない。

内戦でこれからごった返すインドから火事場泥棒みたいな真似して金や領土をとっても国際社会から反感買うだけだし。


そんなこんなで穏便に片付いた講和条約である。

で、引き続き行われた反乱軍とインド政府軍の講和交渉だがこっちもあっさり片付いてしまった。

インド元首である宇根がほとんどあっさりと反乱軍側の要求を呑んだからである。


反乱軍側が要求したのはイスラム教徒の官僚の追放、ジズヤの廃止、議会権限の強化や国王・宇根の権力縮小など10項目である。

宇根はこの要求をイスラム官僚の追放以外は全て認めた。

官僚追放の点は全員が悪いわけではないという理由だ。

そのためこの後内部調査を行い、汚職などがある者のみ追放ということで落ち着く。


俺は宇根が要求を呑んだことに若干驚いた。

結構プライドとかそういうのがあるタイプで自分の負けを認めるのが嫌いなんだが、元首の権限縮小にも反対しなかったのである。

日本との講和に素直に出てきたのは負けを認めたのではなく反乱軍を封じ込めるためにだと思っていたがこの様子だと違うようだ。

戦争を続けることに嫌気がさしたのかもしれない。


実際は後で向こうのアシスタントに聞いた話によるとこないだのデリー空襲が彼女に決断をさせる大きな要因だったらしい。

あの日彼女はたまたま市内に出ていて爆撃の際の大混乱に遭遇、その混乱の中で親とはなれた子供がひとりでいるのを見つけ助けようとしたのだが、そのときその子とぶつかった人たちが将棋倒しになるのを目の当たりにしてしまった。

その後彼女は慌てて子供を探したが、倒れた人の中から救い出した時にはもうすでに息絶えていたという。


この後彼女はふさぎ込むようになり食事もしばらく細くなっていたらしい。

どうやらあの子が死んだのは自分のせいだと思っていたようである。

そして戦争を終わらせなければならないと決意したとのことだ。


戦争って本当に酷いものですね、そう締めくくったアシスタントの子に俺は何も言えなかった。

実際あの空襲を命令したのは俺なのだ。

そう、殺したのは俺である。

宇根が責任を感じる必要はない。

彼女はそれを分かっているだろう。

が、責めずにはいられないのだ。

目の前で消えた小さな命に自分ができることはなかったのか、と。


俺はこの話を聞いていたたまれない気持ちにはなったがこれが戦争と割り切ることにした。

端から見ればかなり冷たいように思われるが今も戦争は続いているし、これからもなくなりはしない。

第1次世界大戦が終わっても、第2次世界大戦は起こることがすでに決まっている。

俺のすべきことは日本国民にそのような惨禍を与えないこと、それだけだ。



さて、インドのその後だがこの後しっかりと内部調査が行われ、議員32名・官僚116名など大量の首切りが行われた。

予想されていたよりはるかに多く、大量の官僚が抜けた各省庁はその補充が間に合わなかったため宇根は日本に人員の派遣を要請。

俺はそれに応じ財政や行政に関する顧問団を派遣、さらに資金的な援助も行うことを決定し、日印友好の醸成にも努めた。

もちろんついこないだまで交戦国だったわけで、そう簡単に向こうの一般人の感情が良くなるわけはないが……。

ただこれがせめてもの償いである。



これでインドは片付いた。

次はオーストラリアだがこっちはちょっとやそっとじゃなさそうだ。

海軍は壊滅させたが陸軍は無傷。

オーストラリア本土にはまだ一発の銃弾も撃ちこまれてはない。


あの先生が降伏することを決断させるにはどうすればいいか。

結構根に持つようなタイプだからあんまり追い詰めて降伏させると後がマズいかもしれない。

つかず離れず、こっちも賠償金・領土割譲なしでの講和を進めるしかないか……。

しかし賠償金も取らない、領土も取らないだと、逆に国内での反発が懸念されるようになる。

日比谷焼き討ち事件はこの世界では起こっていないが、講和条約の内容次第では反発する国民達が暴徒と化すことも十分ありうるだろう。


さて、どうすればいいか……。

幸い俺は支持率とかを気にして政治をしないといけないわけではないし、天皇という半ば神格化された立場にいる。

俺が国民に呼びかければ収まるか?

いや、そんなに上手くはいかないかもしれない……。


まぁ、そんなことよりまずは相手を講和のテーブルにつかせないとな。





無理矢理ですが、なんとか講和で交戦国はあと一つだけになりました。オーストラリアも同様に強引な形ですが講和へ持ち込みます。


今回の名言↓

「最も完全で巧妙な勝利は、わが損害がほとんどなく、敵が目的を放棄した場合である」

―ベリサリウス

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