表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/71

第43話 講和へ向けて



太平洋・インド洋での大勝利の後、トラック島を1隻の潜水艦が出港した。

その潜水艦とは「呂ー5」、ついこないだまで練習艦任務についていた艦だが今回の特別任務に駆り出されたのである。

その特別任務とはある人物を送り届けること。

極秘の任務であるため通常艦艇は使えなかった。

今回の出撃も遠洋航海演習という名目である。



「呂ー5」は10月1日の夜明け前にトラックを離れた。

送り届けられる人物は艦橋で朝日を眺めている。


「艦長、いい朝日ですね。この辺りでいつもこうなんですかね?長安の山の中で見るのと比べれば格別です」


その人物、佐上准一はのんびりと言った。

彼は天皇補佐官という肩書きである。

忘れた方のために言っておくと第3話で登場したアシスタントの1匹、ジョンだ。


「えぇ。いいもんですよ。戦争中じゃなければいつまででも眺めておきたいもんですな」


来島総一郎艦長ものんびりと言う。

これから危険な任務に出るというのに、それに対する危機感や緊張は全く感じられない。

もう何十年も海の上で過ごしてきたのだ。

潜水艦との付き合いも長いし、潜航中に事故を起こして沈没寸前の潜水艦を操って港まで帰港させた経験があるらしく、他にもいくつかの修羅場もくぐりぬけてきたようである。

今更何を恐れることがあるか、彼からすればそういうものだろう。


「分かっています。必ず私が終わらせてみせますよ。そのためにも私をちゃんと目的地まで送ってください」


来島艦長はどんと胸を叩いて、


「任せといてください。ちょっと艦も私も旧くはありますがまだまだ現役、もし敵さんがやって来れば沈めてみせますわ」


そう言って笑う。

ジョンも微笑を浮かべ、


「あなたとはもう長い付き合いです。信頼してますからね」


そう言って艦の中へ入る。

艦長もそれに続き、その後艦は海の中へと潜っていった。



「呂−5」が目指しているのはニュージーランド首都、オークランド。

オーストラリアの同盟国だが対日参戦はしていない。

第1次大戦にも参加せず、中立を保っている数少ない国の一つである。

元首同士の仲がいいためでもある。

俺と栗山(ニュージーランド国家元首)は幼稚園の頃からの付き合いだ。

お互い戦火を交えるつもりは全くない。


今回ジョンがニュージーランドに向かっている理由は、ニュージーランドにオーストラリア等との講和の斡旋を頼むためだ。

講和を結ぶ際に斡旋してくれる国の存在は必要不可欠である。

もちろん完璧に敵を滅ぼしてしまえば必要はない。

しかしそんなことは到底無理だ。

必ずどこかで線を引き講和を結ばなくてならない。


本来ならアメリカなど大国に講和を斡旋してもらう方がいい。

そのほうが相手も講和に応じる可能性が高くなる。

しかし今は世界大戦の真っ只中。

どこの国も自国のことで忙しい。

よその戦争に口出しできるほどの余裕はどこもないのだ。


そこで中立を保っているニュージーランドに頼むのである。

幸いニュージーランドとオーストラリアの関係はかなり良好。

民間レベルでの交流も活発だし経済的な関係も緊密だ。

もちろんそれだけではオーストラリア寄りの講和をしてしまうことになりかねないが、そこは前に述べたとおり俺とは幼馴染、お互いの気持ちは大体分かり合えている。

俺は栗山が上手くやってくれるものと信じている。


そしてニュージーランドに講和の斡旋を行う使者としてジョンを選んだ。

本来なら正式な外務省の人物を派遣しないといけないが、オーストラリア政府に知られるわけにはいかないので俺の身内のようなものである彼を送ることにした。

もちろん彼を大きな危険にさらすことになるが背は腹には変えられない。

信用できる人物でないとこの大役は任せることはできないのだ。


このことを知っているのはほんの一握りの人間だけで防諜には最大級の警戒を払っている。

もし漏れたら講和を快く思わないようであるオーストラリア軍部は残存艦艇全てを投入してでも「呂ー5」を沈めようとするだろう。

ここでジョンを失うわけにはいかないし、戦争を終わらせるためには是が非でも成功させなければならない。


もっとも、ならば無電でも打って伝えればいいという案も出た。

しかしどうやら日本側の暗号は若干解読されている節があるというスパイ報告もあり、信頼できないとのことから却下されている。

下手にオーストラリア政府を警戒させると講和がしにくくなるのだ。

慎重に慎重を重ねて進めていかなければならない。

そのため今回の派遣前にもわざわざ潜水艦を1隻送り、ジョンを行かせるということを伝えさせている。


そうそう、どうでもいいことだがジョンと来島艦長が仲がいいのは彼らは同郷という設定になっているかららしい。

ただ来島艦長はもう50歳近いがジョンは未だに20代。

これはアシスタント及びプレーヤーは歳を取らない設定になっているためだ。

もちろん周囲がそれに違和感を持つことがないように設定されているらしい。



「呂ー5」はトラックを出港してから約1ヶ月半後、「呂ー5」は無事オークランドの軍港へ入港することが出来た。

7000キロを超える大航海である。

途中暴風雨に巻き込まれたり、ニューカレドニア島沖では敵哨戒艇に発見され袋叩きにあったりしたが艦長の巧みな操艦や、備品を魚雷発射管から出したりして艦が沈没したと見せかける機転などに助けられ無事に着いた。


ジョンは到着の翌日、早速講和斡旋のお願いのため宮殿へ向かい女王栗山との謁見に望んだ。

これは見事成功し、栗山は講和への協力を約束してくれた。

これに伴いジョンはニュージーランドに残り、講和に関する助言や日本側からの要望などを伝える窓口的な役割を果たしてもらうことになる。



彼のここでの活躍はその後に大きな影響を与えることになる。





テストが始まりました。が、今日も昨日もプロ野球に見入ってしまって…、結果は結構ヤバイです。今回の絶対国防圏は60点としてますが今日だけでもサイパンが大空襲を受け航空基地がやられた、という感じです…。


今回の名言↓

「戦争において何が重要か把握しているのは、指揮官のみである。二人の良将より、一人の凡将のほうがましである」

ーナポレオン

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ