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第33話 シンガポール陥落



1915年2月10日、ジョホールバールに布陣した日本軍砲兵隊は一斉に攻撃を開始した。

24センチ榴弾砲をはじめバラエティ豊かな砲弾がシンガポールへ注がれる。

それに対するインドネシア軍の反撃はほんのわずかで、撃ってもすぐさま100倍くらいの砲弾がその砲を潰す。

こないだの艦砲射撃で砲台があらかた破壊されてしまった上、土手道の破壊で重砲が置き去りになってしまっていたのだ。


日本軍はこないだの輸送作戦で重砲部隊が運ばれているし砲弾も十分。

シンガポール島の陣地という陣地は砲弾で掘り返され、あちこちで兵士が吹き飛ばされていく。

彼らはまだ1発の銃弾も撃ってはいない。

ただ日本軍の砲撃でなぶり殺されているだけなのだ。


シンガポール守備隊総司令部ではあちこち、というよりほぼ全島から入る被害情報に頭を抱えていた。

このままでは日本軍上陸以前に全ての兵士が死んでしまう。

一般市民は避難させているがやはり各地で死傷者が出ている。

降伏するべきか……。

彼らが議論している間にも兵士の命が次々と散っていていた。


一方日本軍だが上陸する気はない。

このまま砲撃を続けていればそのうち全滅するか白旗を掲げるだろう。

そんな楽天的な見方が大勢だった。

結局その通りになったが。


砲撃を開始してから三日目、ついにインドネシア軍総司令官ハシム・アシュアリ大将が降伏を決断し、日本軍に対しその旨を伝える軍使を送った。

そしてその翌日、日本軍総司令官大迫尚敏大将がインドネシア側の司令部まで出向いた。

大迫は今年で71を迎えるご老体である。

史実では日露戦争で第7師団を率いて旅順要塞攻略戦等に参加、戦後自殺した乃木の後任として学習院院長を務めその人柄等から「薩摩の乃木大将」と呼ばれたという。


こちらの世界では平穏に過ごしており、数年前に年であることから予備役に投入されていたが今度の戦争でインドネシア方面軍が組織された際に引っ張り出されてきたのだ。

本人は老人使いの荒い国だと冗談を言いながらも、老骨に鞭打って戦場では最前線まで出て督戦し、彼が現れた戦場では士気が爆発的に高まり敵部隊を蹴散らすため兵士達からは仏のごとく崇められている。


そこで降伏文書調印に立ち会うために彼はインドネシア軍司令部の建物まで出向いた。

建物は砲撃で一部崩れていたがそのまま中へ入り降伏文書調印を見届ける。

降伏の手続きが終わると彼らは一緒に昼食をとった。

そのときに出された料理はインドネシア料理である。

これはインドネシア従兵による手違いで、本来はフランス料理が出される予定でありインドネシア側の参謀らはこの手違いに慌てた。


そのため料理を変えようとしたがそのとき彼はそれを制し参謀になぜ下げるのか問う。

インドネシア側の参謀が負けた我々の料理を出すのは失礼であるしこのような改まった場で広い世界からすれば片田舎のインドネシアの料理など……というと彼は、


「我々は戦に勝っただけであり諸君らの文化を否定したりはしない。第一世界で田舎も都会もない。自分の国の文化・風物に誇りを持ちなさい」


と言ったらしい。


この態度にインドネシア側の参謀らは感服した。

さらにその後の捕虜の扱いにも古典的な武士らしく、将兵の誇りや名誉を汚さぬように配慮しており、占領政策も申し分なくシンガポールは平穏な統治が行われていく。



一方その頃、ボルネオ島(現カリマンタン島)の北端、コタキナバルに日本軍が上陸しそのまま島を南下していた。

上陸したのは旧フィリピン陸軍の4個師団約7万5000名。

フィリピンもジャングルばかりだからジャングルでの行軍にも戦闘にも慣れており、進軍速度も四苦八苦していた第3軍に比べると圧倒的に早い。

砲が少ないからでもあるが大した兵力もいないこの島なら十分だろう。


実際この日本の2倍の面積を持つこの島に配備されている兵力はたったの1個師団1万2000名。

しかも上陸したコタキナバルからイラン山脈を越えたところ、直線でも1000キロ近く離れたバリクパパンに全ており戦闘などは全くなく、3週間後にはブルネイを占領した。


目的はこのブルネイにある油田であり、施設等は無傷で日本軍の管理化に入る。

インドネシア軍部は同地の製油所・油田・パイプライン等を全て破壊するように現地企業に命令したが、先に送り込まれたいた日本の諜報員により企業は日本への協力を約束しており従うことはなかった。


この部隊はさらに南方にあるクチンへ向け出発する予定だったが取り消された。

実際この作戦自体に大した意味はない。

ただ領土を占領してやることでインドネシア政府の戦意を削いでやろうというだけのものである。

いちいち補給の難しいジャングルを行軍させ兵士を疲れさせるのはかわいそうだということでなくなったのだ。


もっとも、こんな理由で作戦止めるのなら戦争止めろというところだが……。





イエスかノーかと詰め寄らせたかったのですがさすがに安直かな…と思ってやめました。そこであのエピソードを入れたのですが、今思えばイエスかノーかの方が良かったかもしれないです。史実では別に詰め寄っていたわけではないらしいですし…。


今回の名言↓

「注意深く、周到に準備するのは、作戦の基本である。そしてひとたび決断すれば、躊躇することなく、大胆かつすみやかに行動を起こせ!」

ーマウリス



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