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第28話 休暇はおしまい



1914年11月1日、日本軍は各地で前進を開始した。


まずマレー半島方面軍(第1・2・4軍)は南下を開始、インドネシア軍が陣地を構えるクラ地峡を目指す。

インド方面軍(第3・5軍)は第5軍によるラングーン攻略作戦を開始。


第5軍はラングーンをすでに包囲しておりいつでも総攻撃を行える状態にある。

しかし、作戦開始当日になっても第5軍司令官木越安綱大将は一向に攻撃を始めなかった。

理由は市街地を砲撃したくないからである。


日本軍はこれまで市街地は極力砲撃せず、敵軍の陣地のみを破壊してきた。

しかし今度の敵軍はそれを利用し市街地のど真ん中に陣地を作りそこに兵員を入れている。

卑怯な真似を……と木越は思い地団駄を踏むがどうにもならない。

とりあえず航空隊の精密爆撃をやらせてみるが、やはり難しいようで周りにかなりの打撃を与えてしまい、民間人に数百人の死傷者を出してしまった。

これ以上やると住民の反発を招くことになってしまう。

そのため航空隊は港や外郭陣地などをチマチマと爆撃するが効果は薄い。


こうなってしまっては物理的に攻めるのは大きなリスクが伴うとして彼は心理戦に切り替えた。

航空隊にビラを撒かせたのだ。

そこにはミャンマー語で大体こんな感じのことが書いてあった。


「ラングーン市民の皆さん、ヤンゴンは現在大変危険な状態にあります。ミャンマー軍とインド軍はあなた方市民を盾として使おうとしているのです。市街地に陣地を構えているのはそのためです。我々日本軍は市民の皆さんを傷つけたくありません。我々に投降してください。我々は投降された方々を歓迎します」


他にも兵士向けには、


「連合軍兵士の皆さん、我々はあなた方を完全に包囲しています。これ以上の抵抗は無駄です。多数の市民を巻き込んで戦闘をしたくないのはあなた方とて同じはず、それに皆さんにはあなたの帰りを待つ家族がいる。ここで無益に死んではなりません。我々に投降してください。投降された方は国際法に準じ丁重におもてなしします」



しかし、このビラで投降を呼びかけるのはあまり上手くいかなかった。


ラングーン市民としては逃げ出したいのは山々なのだが軍の監視が光り、投降を許してくれないのである。

ビラが撒かれた翌日から市内には無期限外出禁止令が出されており、家の外にすら出ることは出来ない。

特に先日夜間こっそりと脱出しようとしていた家族5人が軍にスパイとして射殺されてからは誰も逃げようとはしなかった。

兵士達は侵略者である日本軍に対し敵意こそあれ、投降する気などさらさらなく効果は薄かった。


ところが思わぬところでほころびが出てしまう。


包囲されてから2週間ほど経った頃、物資の窮乏から市民の脱出が始まった。

軍が少ない物資を市民に回すことを嫌がり、配給を一気に減らしたためである。

食べることが出来なければいずれ死んでしまう、ならばまだ体力のある今のうちにと、家族単位で、また地区の住民が協力して脱走をすることもあった。


これに業を煮やしたミャンマー軍は夜間ある地区から集団で逃げようとしていた住民に対し発砲、脱出を試みた民間人40名を捕らえ翌日公開処刑を行った。

こうして力で押さえつけようとしたのだが、これによりラングーン市民の感情は急激に悪化。

さらに兵士達の間にも司令部に対し大きな不信感を与えてしまう。


これ以後兵士達が住民の脱出に協力するようになり、脱走は収まるどころかますます増えた。

しかも事態はそれだけにとどまらず、兵士たちの集団投降まで発生し軍の士気は急激に低下していく。

そしてもともと大して物資を運び込んでいなかったため、わずか2,3週間籠もっただけなのに食料の不足は深刻さを増していっている。


このまま籠城しても仕方ない、そう考えたミャンマー軍司令部は日本軍の最も弱い部分を突破して逃げようとした。

ところが逃げるところなどない。

この場を突破してもマンダレーにいる別の日本軍にぶつかってしまう。

それに食料が不足している以上長期間の戦闘は不可能……。


そこで彼らは海からの撤退を決意する。

彼らがインド海軍に救援を要請。

インド海軍はこれを受け入れ艦隊をカルカッタへ集結させた。

一応ミャンマーは自分の国の支配下に入っているわけだし、ラングーンには5万ほどのインド兵もいる。

見捨てる訳にはいかないし、開戦以来インド海軍はずっとインド洋でぼさっとしていたのだ。

今回が初陣、インド海軍の威信にかけて成功させなくてはならないと意気込んでいた。


11月24日、インド海軍艦艇35隻と輸送船や商船約70隻がラングーンへ向けカルカッタを出撃した。

日本海軍はこの動きをキャッチしていたが艦隊による迎撃は不可能だった。

まだインドネシア・オーストラリアの連合艦隊は健在だし、マラッカ海峡を突破するには海峡両岸の砲台と交戦しながらとなる。

そんなことをすれば狭い海峡で撃ちあうこととなり味方が大損害を受けることは間違いない。


そこで投入されたのはもちろん彼らである。

深海の暗殺者達約30人は敵艦隊の予想針路上で息を潜めて待っていた。





ご意見・ご感想お待ちしています。誤字・脱字の指摘、内容や登場人物の希望や本文中に出す話が史実と食い違っている等ありましたら是非ご指導ください。やはり自分で読むだけでは分からないことが多いので……。


今回の名言↓

「先に撃て!強打せよ!撃ち続けよ!」

ージョン・A・フィッシャー (英海軍提督)

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