表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/71

第24話 空振り



1914年4月21日、日本艦隊はサイゴンを出港し南下を開始した。

これを発見したインドネシア潜水艦「M-6」は直ちに通報、敵艦隊動くの知らせはすぐにインドネシア・オーストラリア連合艦隊(以後二国艦隊)の統合司令部へと伝わる。

ところがこの二国艦隊の司令を勤めるオーストラリア海軍アーノルド・F・ギブソン大将は日本艦隊は前回同様シンガポールを目指していると判断してしまう。


まぁ確かにあながち間違ってはいない判断ではある。

日本艦隊は南下している、だとしたらどこを狙うかといえばシンガポールのほかに見当たらない。

シンガポールを攻撃し、二国艦隊をおびき出して決戦を挑む、そういう戦略は別に珍しいことでもない。

そう彼は考えたのだが日本艦隊の意図することとは違った。


日本艦隊南下の理由は一つ。

単純に岬を回るには一度南に下がらないといけなかっただけの話である。

サイゴンからタイランド湾に入るにはインドシナ半島から突き出たカマウ岬を回らなければならないのだ。

もちろん艦隊はそのついでにわざとシンガポールへ一直線に向かうようにして擬装航路を取ったのだが相手見事にはまってくれた。


しかも二国艦隊には悪いことに、付近に展開する潜水艦がかなり撃沈されて警戒網に穴が空いていた上、残る潜水艦5隻もうち3隻が日本艦隊追尾に回ってしまい翌日出港した輸送船団に気づかなかった。

(2隻のうち1隻は気づいたが撃沈されてしまった)

しかも追尾する3隻も1隻を撃沈され、残る2隻も日本艦隊を見失ってしまう。

スパイもかなり洗い出されて掴まったりしていて情報を送ることはできなかった。

輸送船団を伴っているというのが分かれば目標が違うことに気づいただろうが……。


3日後、ギブソン大将は自分の予定決戦海域に到着し、日本艦隊の捜索を始めたが無論見つかるわけもない。

丸一日探したが何の音沙汰もなく、どういうことだ?とイライラしながら参謀達と作戦会議を行っていた。

その彼のもとに突如電報が舞い込む。

しかし、それは偵察機からでも哨戒中の駆逐艦からでもなかった。


それはタイランド湾沿岸地域の沿岸監視隊や港湾防備隊からの悲鳴だった。

4月25日早朝、突如現れた日本艦隊はチャオプラヤ川河口付近の陸軍砲台に集中砲火を浴びせてこれを完全に破壊、さらに目に付く軍事施設は航空機による爆撃で徹底的に破壊していく。

鉄の暴風は3時間ほど続いた後小康状態となったが、砲台などで生存していたタイ兵は驚くべきものを目にすることになる。


日本軍が上陸し始めたのだ。

それも10人や20人じゃない。

海面をびっしりと兵士を満載した舟艇が埋め尽くしているのだ。

砲台兵達はこれを見るとすぐさま駆け出した。

出来るだけ海岸から遠くへと。


この作戦に投入された陸軍部隊は2個師団と1個砲兵旅団。

この日に上陸したのはうち1個師団と砲兵旅団で、のこりのもう1個師団は5日後に来る予定の第2陣で送られることになっている。

いずれにせよ大した戦力ではないが、敵の主力部隊はすでにバンコクにはいないからすぐさま敵の大軍が押し寄せてくる心配もないし、この部隊の目的はバンコクに脅威を与えることだからこれで十分だ。


もちろんバンコクに進軍すれば大した守備隊もいないその街を占領するのはたやすいが、街を破壊して民間人に多数の犠牲者が出るようなことになれば民衆の反発を招く。

ゲリラ戦になったらどうしようもない。

いくら部隊を出しても足りないし次から次へと敵は出てくる。

それは現代のイラクやアフガンを見れば一目瞭然だ。


この作戦の効果は案外大きかった。

首都バンコクから40キロ程度しか離れていないところに敵の部隊が現れたのだ。

しかも大規模な艦隊がその背後にいるし、敵の航空機によるバンコクへの爆撃も始まった。

明らかに敵はバンコクを狙っている。

このままでは首都陥落は時間の問題だ……。


そう思ったタイ陸軍の参謀本部は各地で日本の大軍と戦っている部隊に対し戦線縮小とバンコクへの後退を命令した。

敵に背を見せるのは非常に危険だがすでに両面に敵を抱えてしまっている以上仕方ない。

さらにバンコクに予備として残されていた応召兵達の部隊(約5万)に上陸した日本軍迎撃を命じる。

なんとか戦線を立て直そうとするタイ軍だったが結果は惨憺たるものだった。


まず東で日本軍の第1軍と戦っていた約20万のタイ軍は退却命令を受け夜間ひっそりと退却を開始した。

ところが完璧に動きを日本軍に読まれており、第1軍に所属する第17師団の夜襲を受ける。

本来夜襲は少人数で行うものだが、この1個師団という大部隊による奇襲は見事に成功、タイ軍は夜間で敵も味方も分からない状態に陥り同士討ちが多発、潰走した。


翌日部隊を整頓したが兵力は半減。

混乱していたため戦死なのか行方不明なのか分からない兵も多い。

さらに指揮系統はズタズタで、一体どこから命令を受ければいいのか分からないという状態となってしまっていた。

このためさらに戦線を後退させそこで再度部隊の整頓を行うこととなる。


一方北で日本軍の第2・4軍と戦っていた約25万のタイ・インドネシア連合軍は陣地が強固だったこともあり、上手く退却することができていた。

ところが退却先の陣地で日本軍と戦ったところ大敗北を喫してしまう。

退却先の陣地はお粗末の一言で塹壕が少し掘ってある程度。

日本軍を迎え撃つには明らかに準備不足だった。


そして上陸した日本軍迎撃に出た部隊は即撃退された。

ただでさえ応召兵ばかりで年齢が高く戦力的に劣っているのに武器も旧式で、兵力のみが日本軍とほぼ同等。

どう考えても勝てる戦いではなく1万ほどの損害を出し後退した。


一方二国艦隊はタイ救援のためタイランド湾へ突入し、日本艦隊との決戦に臨もうとしたが補給船の都合がつかず、中止せざるを得なかった。


こうして各地で絶望的な戦況が続く中5月2日バンコクでは御前会議が行われる。

そこでタイ王国女王である水島が出した結論は……、降伏だった。





テスト終わってないのに書いてしまいました…。今日のテストは散々で英語は玉砕、数学は潰走、世界史が唯一戦線を維持しました。

明日こそは頑張ります!(とかいう奴がここにいるのはなぜでしょうね?)


今回の名言↓

「攻撃的な指揮官は、つねに防御的な指揮官を恐れない。そして主導権を握ることができる」

ーフレデリック大王

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ