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第17話 陸海軍戦備状況



大戦開始まであと1年を切った。

俺は相変わらず毎日統合作戦本部や国会などで忙しく動き回っている。

そんな中俺にある報告書が届いた。

1913年1月時点での軍部の戦備状況の一覧である。


それによると海軍は新鋭艦が戦艦4、装甲巡洋艦8、二等巡洋艦8、駆逐艦32、潜水艦53、水上機母艦4。

旧式艦で現役なのは戦艦5、装甲巡洋艦6、二等巡洋艦4、駆逐艦32。

建造中なのは戦艦4、航空母艦2、装甲巡洋艦4、二等巡洋艦8、駆逐艦24、潜水艦3となっている。

(三等巡洋艦が廃止され、艦種が二等巡洋艦に変わっている)


現在の就役艦を簡単に紹介しよう。

まずは「安芸」型戦艦4隻だ。

主砲に35.6センチ連装砲を4基持ち、速力は27.5ノットを誇る。

「安芸」型は史実の「金剛」型戦艦の新造時の外観とほとんど同じだし、装甲が少し薄いのも変わらない。


しかし兵装は若干変わっている。

魚雷発射管は装備されていないし、副砲も15.2センチ単装砲が16基から10基に減らされ代わりに対空兵器として7.6センチ単装高角砲が6基装備されている。

この高角砲は陸軍の76ミリ速射砲などを参考に作られたもので、性能は大したことはないがとりあえず装備されたものだ。

ここ最近の航空機の発達はめざましく、一応何か対抗手段がいるだろうと海軍首脳部も思い始めたのである。

ところでなぜ艦種が戦艦なのかというと、この世界の日本には巡洋戦艦という艦種がないからだ。

どうせ最終的に戦艦も巡洋戦艦も似たようなものになるし。


次は「箱根」型装甲巡洋艦6隻。

主砲は20.3センチ連装砲5基で後の条約型重巡と見た目は少し近いものがある。

速力は29.0ノット。

高角砲は搭載されていないが、代わりに40ミリ単装機関砲が20基も積まれている。

実戦で使えるかどうかの実験をかねてのものである。


そして「美々津」型二等巡洋艦8隻。

34.0ノットという高速なのが特徴である。

史実の「天龍」型に若干改良が加えられているもので、速力が1ノット速くなったことや魚雷発射管の位置が左右両舷に3連装1基ずつとなっている、高角砲が単装2基などが大きく違うところである。


次は「山風」型駆逐艦32隻。

これも史実の艦が少し早くでてきたようなもので、史実の「磯風」型駆逐艦と思っていただいて問題はない。

ただ魚雷発射管が3連装2基になって、口径が45センチから53センチに上がったところが大きく違う点だ。


さらに潜水艦だが4種ほとんど似たようなものなのでそのうちの「呂ー41」型を紹介することにする。

もともと「呂ー41」型は第2期計画で建造される予定だったが、建造が前倒しされて1911年から建造が開始、13隻が就役し3隻が現在擬装中だ。

水上での排水量が700トン弱の後から考えるとかなり小型の部類に入るが、当時で考えると大型艦である。

性能は速力が水上で15.0ノット・水中で9.0ノット、航続距離は8ノットで7600海里。

武装は50.0センチ魚雷発射管4基、魚雷8本を搭載となっている。

これはドイツ潜水艦「Uー19」型が参考である。

(もちろん俺が調べてその性能を要求しただけで実際にドイツから教えてもらったりしたわけではない)


それと建造中の艦の中から「鳳翔」型航空母艦を紹介しておこう。

例の「宮古丸」で行われ続けている実験結果をもとに設計された世界初の航空母艦だ。

基準排水量1万2千トン弱、速力24.0ノット、搭載機数41機(うち補用5機)。

武装は7.6センチ単装高角砲4基、40ミリ機銃が10門ほど。

航空擬装もしっかりとしており、「宮古丸」同様縦索式ではなく横索式の着艦制動装置が装備されている。

史実の「鳳翔」と比べても遜色ない艦だ。


しかも世界初の新造空母であるだけでなく、空母としても世界初の艦である。

まだ他国では既存艦を改造して造ろうという計画があるだけで設計中のものがほとんど。

日本は「宮古丸」で繰り返し行われた実験により空母に関しては世界のトップなのだ。


ちなみにその「宮古丸」だが、艦載機の実験などが行われていたが現在は終了し、艦載機の発着艦の訓練にあたっている。

今そこで訓練を受けているパイロット達が「鳳翔」や「興翔」(同型艦)に乗ることになるだろう。



次は陸軍だ。

陸軍は志願兵の不足が大きな問題となっており、予定の150個師団・30個後備師団のうち10個師団が未だに編制されていない。

編制された師団も兵員が定員に達さず、ある連隊は定数の半分にも満たなくいという有様。

なぜ10億もの人口を抱えているのに兵員が集まらないか、それは国全体として史実に比べ裕福になっており、軍隊みたいなきつい仕事よりも平穏に暮らせるような職業を選ぶようになっているからだ。

貧しい農村では軍人になりたいという青年は多いようだが、一家の働き手がいなくなることを恐れて止める親もかなりいるようである。

それに中国ではもともと軍事に従事するものを卑しむ傾向があると聞いたことがある。

嘘か本当かはわからないがそういう影響もあるのかもしれない。


俺はそのうち集まるだろうと楽観していたがあと1年を切った今、もはやそんな悠長なことは言ってられない。

俺は新聞に声明を出し国民に協力を求めた。

また上海で新鋭艦を集めて観艦式を盛大に行ったり、陸軍の訓練の様子を新聞や雑誌に取り上げさせるなど積極的に軍をアピールした。

あまりこういうことはしたくないが戦争が迫っている以上仕方ない。


ただ陸軍と違い海軍は有り余るほどの志願兵が集まっている。

土に埋もれ、草の根かじって戦うイメージの陸軍より海軍に入って巨大な軍艦に乗り、大海原へ出たいという若者が多いようだ。


空軍は予想以上のペースで数が増えていっている。

現在実戦配備についている航空機は各種あわせて約2千機と、目標の千機の倍まで増えた。

そこで今航空隊の有効な部隊編制が考えられているところだ。

現在航空隊は基地ごとに編制され数はバラバラ、機種はそれぞれ何かに偏っていたり中途半端だったりと極めて非効率的だ。

これをどうすれば上手く運用できるか、今試行錯誤が続けられている。


俺達が様々な問題と格闘をしているうちに時間は容赦なく流れ、あっという間に1年は過ぎていった…。





もうすぐ開戦ですが作者は戦術・戦略に関しては「ド」のつく素人です(他のことに関しても素人ですが)。精一杯努力しますが皆さんの中にはその幼稚さによって不快に感じられる方もいらっしゃるかもしれません。ここはこうしないといけない、こんな戦略は成り立たないなどありましたらご遠慮なくご指摘ください。


今回の名言↓

「戦争は政治の継続ではなく、政治の破断である」

ーハンス・フォン・ゼークト (ドイツ陸軍大将)

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