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第11話 油田は何処に?



航空機の開発はこないだの実験の後も順調に進んでいる。

1907年5月2日には10キロ近く飛行することに成功した。

また、今年(1908年)4月頃には給炭艦「宮古丸」に飛行甲板(正しくは木製の板を並べた平らなだけの甲板)を設置して、そこから発進して上空を1周して着艦しようという実験が予定されている。


ところでこれだけ飛行機が進歩している以上それを動かす燃料が必要である。

しかし、その燃料を産出する油田が一向に見つからないのだ。

一応1904年に西蔵で1つ発見されたが規模が小さく、一応政府は開発したがあくまでノウハウを身につけるための実験程度のものだった。

中国で有名な油田といえば大慶や勝利、遼河の3大油田だが調査の結果石油鉱床なんて影も形もないことが判明した。

他にも新疆のタリム油田があるはずの地域を調査させたがこっちもさっぱり。


まさかせっかく中国が領土に入っているのに石油は輸入しなくてはいけないのか。

まだ石油の需要がほとんどないため輸入の量は大したことないが、現在ようやく芽を出し始めた自動車産業の成長とともに需要は急激に伸びていく。

しかも戦時になれば平時は重油・石炭混焼缶でお茶を濁している艦艇は燃料を重油に換えなければならない。

それらのために油田の確保が急務だがそれが見つからない。

だからあせってあちこちに調査団を派遣しているのだ。


ところで石油以外の資源は順調に鉱床が見つかり採掘を開始、または予定している。

石油を調査しに行った調査団が油田のかわりに他の鉱物の鉱脈を発見したりもしているほどだ。

主なものは済州島(チェジュ島)で見つかったバルラ銅鉱山(普通の世界では火山なのだがこちらでは火山がなくかわりに山が銅で出来ているいわれるほどの埋蔵量を誇る)や、朝鮮半島北部の長津チャンジンの鉄鉱山など。

他にも亜鉛・鉛を産出する大鉱山が雲南省でいくつも発見されたし、資源の乏しいはずの日本でも大規模なニッケル・クロムの鉱脈が見つかった鳥取県の若松鉱山の開発が進んでいる。


こうして各地でゴールドラッシュではないが、鉱山開発がすさまじい勢いで進んでいる。

そんなに掘っても使うのか?というくらいに。


造船業も今活況に沸いている。

経済成長により輸出が増大したためそれを運ぶ船舶が大量に必要となったのだ。

また、同じように発展しているインドやオーストラリアでは自国の造船設備が少なすぎるため日本に注文してきている。


このため日本国内では造船所の拡張や新設が活発に行われている。

黄海沿岸や瀬戸内海沿岸では多数の造船所が建設中。

現在ほとんどの造船所が5年、6年先ぐらいまでの受注量がありいかに効率よく建造するかということを業界で工夫しながら建造している。

これは後に大きな効果が出ることとなるがそれはまだ先の話。


また、海軍工廠もほとんど休みなく船を造り続けている。

と言ってもほとんどが日本海軍向けのものではない。

日本海軍向けには例の装甲巡洋艦2隻が建造中である以外は旧式化した駆逐艦の代艦を4隻造っているだけだ。

で、どこに向けて造っているかというとインドやオーストラリア、東南アジア諸国向けだ。

この3年間で輸出したのは合計で装甲巡洋艦5隻、二等巡洋艦8隻、通報艦6隻、駆逐艦19隻、水雷艇30隻、哨戒艇22隻。

大型艦はインドかオーストラリアのどちらかのみだが、二等巡洋艦は1隻タイに輸出している。

まだ国際的に評価の低い日本製軍艦だが、先進国のものに比べ安価であることやそこそこの性能であることでこれらの国々からすればいろんな意味でお手ごろであるため日本に注文したのであろう。

あまり高性能過ぎても使え無ければ意味が無いし。


そういえば東南アジア情勢について説明してなかった。

史実ではタイを除き植民地として列強の支配下に入っている東南アジアの国々だが、この世界では普通の世界の現在と同じようにカンボジアやベトナム・インドネシアなどASEAN諸国が存在する(ASEAN自体は存在しないけど)。

ただブルネイとシンガポールはマレーシアに、東ティモールはインドネシアに、スリランカはインドに、それぞれ併合されている。


日本はタイ・カンボジア・ラオス・フィリピン・ベトナムと経済的・軍事的に関係が深い。

そのほかの国はミャンマーがインド、インドネシア・マレーシア・パプア=ニューギニアがオーストラリアとそれぞれ関係が深い。

ちなみに生徒が国家元首になっている国は上記のうち、タイ・インドネシア・インド・オーストラリアである。


さて、話を戻そう。

重工業もこのような鉱業と造船業の活性化を受け毎年生産施設の拡張と新設が急ピッチで進んでいる。

毎年のように見つかる大鉱山のためにそれらを精錬・精製する工場はフル稼働状態だ。

これらに牽引され日本経済は年々超高水準の成長を続けている。


言い忘れていたが例のインスタントラーメンの開発は無事成功した。

値段は少々高めだ。

屋台や食堂などで食べるかけそばが一杯3銭ほどだが、インスタントラーメンは1食5銭。

しかし、ものめずらしさとその便利さでたちまち国民の間に広がって行き、売り上げは予想を2倍以上上回る大ヒット。

そのため設備拡張や新工場建設による量産コストの低下で数年後には屋台のかけそばと同じくらいまで下がっていった(貨幣価値の変化で見かけの値段は上がっていく傾向にあるが)。

さらに他国にも輸出が始まり、アメリカでは一大ブームを巻き起こす。


これにより当初の目論見通り小麦の消費は著しく増大。

生産量も毎年伸びているが消費量がそれを補って余りあるほどで、逆に値段が上がりかけているのが再び懸案事項となり始めた。

しかし、伸びには限度があるし、タクラマカンやジュンガル盆地の開発も順調に進んでいるから生産量もまだ増える。

あとはそのバランスが上手く取れればいい。

といっても俺には到底できないので農林水産省などの専門職に頑張ってもらう。


さて、これで油田さえ見つかれば問題はないのだが…。

「石油の一滴、血の一滴」とかいう標語が出ることのないようにしたい。

油田調査団、頑張れ!!





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今回の名言↓

「原則をあざ笑うものは失敗する」

ーアンリ・ジョミニ

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