プロローグ
えっとお決まりの文句ですが、このお話はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
「…であるからして、この関数はこのような放物線を描く。この時最大値は…」
退屈だな…。
俺はシャーペンを机に転がして窓から外を眺めた。
しかし、外を眺めても枯葉が風に舞ってるだけでなんの面白みもない。
そろそろ冬だな、母さんにコタツを出してもらわないといけないなと思いつつ視線を黒板に戻す。
俺は小嶋准一、普通の高校2年生だ。
今は数学の授業中。
俺ははっきり言ってこの「数学」という学問のどかが面白いのかさっぱり分からない。
サインだのコサインだの意味の分からない記号が並び、無駄に多い公式を覚える。
本当に勘弁してほしい。
こんなの大学受験に必要なかったら授業をボイコットするところだ。
15分後、ようやく数学の授業が終わった。
俺はさっと荷物をまとめて次のクラスに向かう。
今度は先ほどの数学とは違い授業が楽しみだ。
次は俺の好きな日本史。
授業が楽しい、待ち遠しいと感じるのは日本史以外には体育しかない。
この二つが授業に無かったら俺は学校に来ないかもしれない。
そして日本史の授業を受ける「地歴公民教室」に着くとドアに紙が貼られていた。
そこには、「今日は特別授業のため『視聴覚教室』に来るように」と書いてあった。
またビデオか何かでも見るのかと思い何の疑問も思わず教室に向かう。
途中で同じ日本史を受ける奴と会い、教室変更を知らせて一緒に視聴覚教室に入る。
俺達は入ったとき、明らかに教室を間違えたと思った。
なぜなら教室の様子が激変していたからだ。
いつもならただ机と椅子が並んでいて、前にちょっと大きなスクリーンがあるだけの閑散とした教室なのだが、今日は見たこともない大きな機械が全ての机の横にある。
しかも教室の前の方には白衣を着た研究者っぽい変なおっさんが10人くらいいたし、自衛隊の制服を着た厳つい顔したのも数人いた。
さっさと退散しよう、と教室から出ようとしたら日本史の永見先生が廊下から入ってきて、
「小嶋、どうした?忘れ物でもしたのか?」
と不思議そうに聞いてきた。
「あ、教室ここであってるんですか?なんか様子がおかしいですけど」
と俺が言うと、
「そうだよ。ここ視聴覚教室だろ。さ、席に着いてくれ。今日は面白い授業になるぞ」
とすごくうきうきした声で言う。
俺達は事情が飲み込めないまま座らされた。
しばらくして後から来た生徒が躊躇しながらもそれぞれの席に着き、チャイムとともに授業が始まった。
まず、永見先生が教卓の前で話し始める。
「えーと、今日は今までの授業とは全く違う授業をします。このたび、うちの学校は文部科学省と防衛省の特別指定を受け、ある新しい授業のモデル校となりました。その授業とは……、君達に近代の歴史を体験してもらいます。しかもただ昔の食べ物を食べてみたり服を着てみたりしたような、今までのものとは根本的に違います。あなたたちにバーチャル世界においてある国の主となり、その国を動かして歴史を作ってみてもらいます。それで史実とどれくらい違う世界となるのか比較してもらいたいのです。詳しいことはこちらの出島聡史氏に説明してもらいます」
先生がどうぞこちらに、と手を出すと後ろにいた白衣の男が前に出てきた。
ここからの説明は無駄に長い上に分かりにくかったので簡単にまとめる。
まず、俺達は1900年から1945年の世界で、ある国のリーダーとなりその国を動かしていく。
しかし、ただ国の政治をやっていくだけではあまりにも史実とかけ離れるし、飽きるかもしれないので途中で史実どおり世界大戦は自動的に2回起こす。
そして、俺達は基本的にその国の王となるので結構好き勝手できる。
ただしあまり無茶をやると普通に反乱やクーデターが起きるので注意。
それと国の政治については俺達だけでは何をしていいのか分からないので、アシスタントが1人必ずついてアドバイスをくれる。
今回俺達は45年間も体験することになるが、これはバーチャル世界に俺達の意識が飛ぶだけで終わってから意識が戻ってきたときにはわずか2,30分経っているだけらしい。
故事の「一炊の夢」と同じ状態だとか。
あと他にルールとかもあったがまたそれが出てきたときにおいおい説明をしていく。
何しろあのおっさんの説明は本当に長いし本気で意味が分からない。
延々と20分も喋った挙句最後にこれにまとめておきましたんでと冊子を配りだす。
最初からそうしろ!って感じだ。
「よし、それでは早速始めましょうか。おっと、その前にそれぞれ国を決めておかないとね。じゃあ前から順にクジを引いて下さい。そこに書いてある国、といっても勝手にくっつけたり分けたりしてあるから今の国とも当時の国ともかなり変わって来るけどね」
そう言って永見先生が教卓の上においてあった箱を取って前から順番にクジを引かす。
何人かが引いていくとそれを後ろにいた白衣の研究員が受け取って何かをパソコンに打ち込み始めた。
しばらくすると前のスクリーンに世界の白地図が現れ、決まったとこには色が塗られて名前が表示される。
よく見るともともと決まっていたとこがあり、そこには先生らの名前があった。
ぼーっと眺めているといつの間にか自分の番が来ている。
あわてて前に言ってクジを引くとそこには「日本・中国」と書かれていた。
それを渡してスクリーンを見ると日本・韓国・北朝鮮・中国の地図が白から赤色に変わり、中国の真ん中あたりに「小嶋」と表示される。
「日本と朝鮮半島プラス中国全部…。でっかい国だな」
俺は呆気に取られた。
これからバーチャルとはいえ10億以上の人を動かす立場になるのだ。
ここにきてものすごい不安に襲われる。
しかし、それとは裏腹に楽しみに思っている自分もいた。
おそらく自分だけではないが、今まで歴史を勉強するたびにここをこうしていたらどうなったんだろう、こうしていたらもっと上手くいっただろうと何度も思ったことがある。
それを自分の手で変えてもっといい歴史を作りたいという思いも出てきたのだ。
こうして不安と期待の入り混じる俺達の45年間が始まった。
いきなり授業でこんなことをさせたり日本の領土がやたらと大きかったりと、かなり設定は乱暴ですがどうしてもこういう戦記ものを一度書いてみたかったのです。これからかなり長くなるかもしれませんがどうぞお付き合いください!感想、意見等も随時お待ちしています!!