まどろみと覚醒の間
心地好いまどろみから目を覚ましてみると、どうやらいつもと様子が違うことに気が付いた。一体何が違うのだろう。彼は目を閉じたまま、寝起きのどろどろした思考で考える。ゆっくりと、飴玉を転がすように……。
彼は違和感の正体に気が付いた。そう、飴玉だ。一番のお気に入りの味が無くなっている。いや、正確には飴玉自体はなくなってはいなかった。ただ、一番お気に入りの飴玉の味だけがすっかり抜け落ちてしまったのだ。
彼はがっかりして飴玉の数を数えた。一、二、三、四、五……。数はきちんと揃っている。これはどうした事だろう。彼はまだはっきりとしない頭で考える。自分が少しうとうととしている間に、一体何が起こったのだろうか。
彼はため息を吐きたいのを必死に我慢した。今口を開くのは非常にまずい。
こっちは飴玉が劣化しないように細心の注意を払い、色々な要望に応えて苦労しているというのに――。
新しい飴玉を手に入れてから、何だか様子がおかしいことに彼は気がついた。初めてそれを見つけたときには、とても美味しそうな良い匂いだったのに、口に入れてみると何の味も無くて酷くがっかりしたことを覚えている。
彼はゆっくりと目を開けた。まぁ、一つ失ったって別に構わない。お気に入りはたくさんあるのだから。まだまだ色々な味が楽しめる。
そう考えてから、彼はまどろみと覚醒の中間地点を、またゆらゆらと気持ち良く漂い始めた。