年末は、休むためにある。
今日も異世界恋愛はお休みします!
三月からはまた落ち着くと思うので、お休みの頻度減ると思います! すみません!
あと明日は投稿します!
よろしくお願いします!
シーズン外れだな笑
年末。家に弟がやって来た。
何故か一人暮らしの姉の家に。実家の広々とした一軒家ではなく、狭いワンルームに。
何か用があった訳でもなく、やって来る当日に、突然『今日泊まりに行くわ』とだけ連絡が送られてきた。
何なんだと思いつつ、訪れた弟を家に入れて、私は私でノートパソコンを開きながらノートにペンを走らせていた。
弟――敦は敦で、壁にもたれかかって、スマートフォンでゲームをしているだけ。
何をしに来たんだろう、本当に。
「何してんの」
互いに無言の時間が続くこと、数時間。先に口を開いたのは敦だった。
「勉強」
「へぇ」
敦が立ち上がり、私のパソコンを覗く。動画のタイトルに『【これだけでプロ一直線!?】評価される演技とは』と書かれていたから、どんな勉強をしているのかは粗方察したのだろう。
「演技の?」
「そう」
「よくやるなぁ。年末くらいゆっくりすればいいのに」
「そう思う人ばっかりだから、差を埋めるチャンスなの」
私は所謂役者志望だ。大学入学をきっかけに地元を出て上京し、今は大学二年生をしながら、バイトをして、俳優養成所に通っている。
私の通う養成所では、毎年一月に事務所の所属審査と、養成所のクラス進級を懸けた試験を兼ねた査定がある。
一応、下のクラスでも事務所所属のチャンスはあるという体だけれど、近年の所属者を調べてみても上級クラスから事務所所属をしている人の割合が圧倒的だ。
私は今、養成所にある三種類のクラスの内の、中級クラス。真ん中だ。
例え今回の査定で所属には届かなくとも、せめて上級クラスへの進級はしなければならない。査定の時期が近づいていることもあって、私は焦っていた。
「でも、年始もすぐバイトなんだろ? 休むときに休まないと。変に体崩した時のタイムロスのが痛くね?」
「あんたにはわかんないよ」
「姉貴が本気ってのはわかるって。……あ、ピザ頼んでいい?」
「ちょっと」
「俺驕るからさ」
人の家で好き勝手寛ごうとする敦を制そうとするも、その一言で私は引き下がらざるを得なかった。
恥ずかしい話ではあるが、家賃と養成所代でバイト代を使い切ってしまう私は、節約だらけの生活を送っており……つまるところ、『ピザ』という、最近全く食べていないジャンキーなフードへの誘惑に負けたのだ。
弟に奢らせる無様な姉になろうとも、頂けるものは頂きたいのである。
「何にする?」
敦が自分のスマートフォンでピザの注文画面を開き始めたので、私はパソコンから離れてそれを一緒に覗き、注文画面が進む様を見守った。
注文を終えた敦は、ピザが来るからとローテーブルに乗っていたノートパソコンや筆記用具を纏めて移動させてしまう。
勉強を続けることが出来なくなったので、私は仕方なく、二人分の飲み物の用意を始めた。
すると後ろから敦に話しかけられる。
「姉貴が焦ってるのってさぁ、前、愚痴ってた年齢の話もあるんだろうけど」
芸能界に於ける新人の若年化の話は、少しでもその業界に携われば、嫌でも聞こえてくるものだ。
事務所によっては所属させてもらえる子は十代ばかり……なんて話もあって、だからこそ、二十になった私は余計に急いで所属を決めなければならない。
……そんな話を敦にしたことがあった。
「俺はそっちのことは、ちんぷんかんぷんだからさぁ、嫌な気にさせたら悪いんだけど」
「何」
「焦って、一人で出来ること何でもかんでも詰め込んで……ってさぁ、ちょっと効率悪くね?」
「は?」
「怒んなって。心配してんじゃん」
苛立ちを滲ませてしまった私の様子に敦が焦る。
私はマグカップを差し出しながら彼を睨んだ。
「余裕ない時程、誰かと関わっといた方が絶対気ぃ楽だって。孤立してると周り全員敵みたいに見えるでしょ」
彼の話をそこまで聞いたところで、「そういえば」と思い出すことがあった。
今の私と似たような状態になったことが、敦にもあったのだ。
去年の夏。サッカー部に入っていた敦は高校三年生の最後の夏でレギュラーを取る為に練習を詰め込んでいた。
その時の彼は精神的にあまり余裕がなかったようで、両親に対して強く当たってしまっていたらしい。
そういった相談を両親から受け、私は敦に会う為に一度実家に帰った。
その際に、今と似たような話を敦にしたのだ。
「自分一人だと視野狭くなるしさ、それより周りには味方がいるんだ~って確信できる行動取っといた方が絶対楽だって」
そう。確かにそんなことを言った。
以前、誰かに向けた言葉を実行できていない自分を振り返る。
私はどうやら、私が思っている以上に余裕がなく、視野が狭まっているらしいことに気付いた。
「というか、これは詳しくないから想像だけど……。演技って、人を演じることが殆どじゃん? 人と関わらないと色んな人の性格とかってわからなくなったりしないのかなぁって」
「……する」
「あ、マジ? じゃーやっぱ心の余裕も大事じゃん。人と関わるのも多少なりとも体力使うしね。効率上げの為にも休むときは休まないと」
敦の言う通りだった。心の余裕や人付き合いは結構大事で……特に芝居なんかやっている人間なら、余程の天才じゃない限りは他者に興味を持って観察したり、研究していかないと上達しない。
私は反省とともに長い溜息を吐いた。
「ごめん……」
「いーってことよ。お互い様。姉弟なんだしさ」
私は飲み物を一口分、喉へ流し込んでから自分の気持ちを吐露する。
「時間や体力に余裕があると、不安になるんだよね。色々考えちゃうから」
「わかるよ。だから来たんじゃん。一人でいるよりずっと頭使う時間減るでしょ」
その時、チャイムが鳴る。
玄関に出た敦はピザを受け取ると部屋へ戻って来る。
「年末ってさぁ……。姉貴みたいに普段頑張りすぎて休み方忘れてる人に、『休め!』って無理矢理にでも休ませる日だと思うんだよなぁ。国からのお達し的な」
「何それ」
ローテーブルに広げられたピザはほかほかと湯気を立てていた。
私達は手を合わせてからそれを頬張る。
一枚に色々な種類が混ざっている物を頼んだから、何度か最後の一枚の取り合いになっては、じゃんけんをした。
最近は全く無縁だった賑やかさが、部屋の中にあった。
「てか、今日起きてるでしょ? 日付変わるまで」
「まあ、いつも割と夜更かしだしね」
「じゃ、初詣行こうよ。この辺深夜でも屋台出てるとこあるでしょ」
「ピザ食べたばっかなのにまた食べる話?」
「それとこれとは別ですー」
お腹いっぱいになって横になりながら私達はのんびり話をする。
――今日は、全部忘れて休む日にする。
先程敦と話した後から、私はそう決めた。
「うん」
私は頷く。
「よっしゃ決まり」
その後、私達は明日の零時――元旦に備えて仮眠を取り、そして少し寝坊した。
年末年始。
その日がめでたい日と定められたのは、もしかしたら皆が心身ともに休める機会を、与える為だったのかもしれない。
うとうととしながら、私はそんなことを思うのだった。
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