男と死神
「出て行って頂戴」
「どうしたもんか、どうしてああいう口の利き方しかできないのかね。景気が悪くって何処も雇ってなんてくれやしねぇ。あとちょっとだって景気がよけりゃ俺だって雇ってくれるとこなんていくらでもあるんだよ。挙げ句の果てには『豆腐の角に頭ぶつけて死んじまえ』だって。ったく腹の立つ。いっそ、死んじまった方が楽だ。」彼の首元を冬の鋭い風が通り去っていった。刃物をかけられた気分だった。
「そうだ、、死ねばいいじゃねぇか。そうすれば借金からもおさらばってもんだ。しっかし、どう死のうか。川に飛び込んだってどっかの英雄気取りか誰かが引き上げてくれちまうし、薬は苦ぇから嫌だし、首吊りも苦しそうだからなぁ。」買ってもらうお菓子を選ぶ子供のように悩んだ。もう小さかった蝋燭の火がぽっと吹き返したようだった。
「そうか、死にてぇかぁ、、そんなに死にてぇならぁ、、教えてやろうか、」どこか嬉しそうな、風が吹いたら消し飛んでしまうような凧糸のような声がした。もうだいぶ老けているのだろう、声が乾涸びている。
「誰だい、そこにいるのかい。」
「へっ、上だよ」
それは道の柳の枝に立っていた。枝はしなっているが、上に何か乗っている風ではなかった。
「教えてやろうか、、」
「誰だいっ、」
ぎりぎり消えないくらいの風で靡く火のように声が震えていた。
「俺かい?へっ、死神だよ、、」
「しにがみ?いや、四二は八だろうよ」
「、九九じゃねぇよ、」
老人はほんの少しだけ間を空けて、目を細め、「人間どもは、」とでも言いたげな呆れた声で
「死神だよ」
その瞬間男は別世界に放り込まれてしまうような、ふわっと体中が砂になって飛んでいってしまうような匂いを感じた。今度は男の方が消えてなくなってしまいそうだった。
「し、死神?なんであんたが俺んとこに、、あんたか、俺をこんな気分にさしたのは」
一旦ここで暇なったら書きます




