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内乱の火蓋

 兼清は守護大名である川瀬義景から、清継が「当主ニ相応シカラズ」という言質を得た。

 ほとんど誘導尋問染みた流れで得た言葉とはいえ、名分は名分だ。

 兼清は清継廃嫡を名目に兵を挙げた。


 事前に準備をしていた兼清方は、約3000の兵を動員。

 それを1500ずつに二分して、清継方の砦2つを同時に襲撃していた。


 清継が緊急動員できた兵は2000。内武士は500だった。

 ほぼ全員が常備兵なので動員というべきかはわからないけど。


 問題は、二手に分かれた敵にどう対応するかだった。



結衣(お転婆)。敵の策はなんだ?」

 上牧城での軍議で清継は私に聞いた。

「おそらく敵の目的は清継(殿)の首を取ること」

 軍議に参加していた全員が頷いた。


 これはわかりきったことだからだ。

 敵である兼清方が軍を挙げた名目は『当主に相応しくない清継を排除すること』。

 目的は軍隊の行動を縛る。

 例え本音がどこかの権益を押さえることなどであっても、最低限清継を排除する行動を取って見せなければならない。



「なら敵は清継を討てる策で動くはずです」

 そう。なら均等に戦力を2分したのにも理由があるはず。

 転生前に読んだ本では、通常軍隊は戦力を分ける時、主攻と助攻に別れるとあった。

 重心がない、腰が入っていないダブルパンチはただ弱いパンチが二つあるだけだ。

 普通は主力とそうでないほうをわける。そのほうが効率的だからだ、


 それをしない理由は?

 いや、それをした場合は?

 主と助に分けた場合、清継勢は明らかに少ない一方(助攻)を撃破してその後に多い方(主攻)との決戦を挑む。

 私たちは軍議すら開かないで済ませられるぐらいに行動に迷わなかっただろう。


 なぜそうしなかったのかはこれでわかる。

 私たちにどちらが主攻かを迷わせるためだ。


 迷うとどうなる?

 出撃を躊躇う。

 このまま上牧城に居座る。


 そうなるとどうなる?

 清継は味方を見捨てたと非難される。

 そうなったら清継はただでさえ少ない味方を失い、敗北するだろう。


「敵は私たちをここから動かせないようにするつもりだったのでしょう。仮に出撃しても奇襲ですから、1500を簡単に破れるだけの軍勢は集められないと踏んだはずです」

「そこが叔父上の誤算か」

 私のまとめに清継が頷いた。

「こっちは2000もいる。それも全部精鋭だぜ?頭。片方ずつぶちのめせばいい」

 吉家がそう言った。

 的を得た意見だった。

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 本当にそうかな。

 敵がその危険性を全然考えていないことがあるだろうか。

 もし、そのことを敵が予測していたら。

 私ならどうするか。


「お転婆」

 清継が頷くのを見て私は考えを述べた。

「敵はこちらが出撃した場合、攻撃された片方を時間稼ぎのために動かし、残ったもう一方で背後を突けます」

 私たちが動かないのが最良。

 もし動いても一方で時間稼ぎをして、もう一方で背後を突けばいい。

 そうしたら上牧城を包囲するまでもなく清継を抹殺できる、かもしれない。


「ならどうする?」

 私は答えた。

 清継はこう返した。

「結衣。ならそれはお前に任せた」




 その結果が今だった。

 私は軍勢500を率いて清継本隊とは別行動を取っていた。


 目的は単純明快。

 主力(清継)が敵の一方を撃破するまで、もう一方を拘束すること。


 つまり、1500の敵を500(3倍の戦力差)で足止めするというお仕事です。

 わぉわかりやすい。


 ……無理では?


 軍事界隈には一つの不文律がある。

 所謂『攻撃3倍の法則』である。

 簡単に言うと『攻撃側は防御側の3倍の戦力を用意すれば()()勝てる』という一般則だ。

 つまり敵の3分の一の戦力だとまず時間稼ぎもできずに敗けるわけですよ。


 なお私が率いている500名の内訳はこうだった。

 武士200。

 鉄砲足軽50。

 弓足軽50。

 槍足軽200。


 現代風に直すなら

 装甲(A)機動(M)歩兵(S)中隊×1、

 火力支援中隊×1、

 歩兵中隊×2といったところだろう。

 2010年代のロシア軍の大隊戦術群(BTG)に近い集まりだった。

 装甲部隊の役回りの武士が戦車と比べると貧弱だけど。


 ちなみに私は馬に乗れないので徒歩での移動だ。

 武士たちも全員が徒歩移動だ。つまり騎兵部隊はいない。

 長槍を担いでつまらなそうな顔をしている吉家が隣を歩いている。


 さてどうやって戦うべきか。それを歩きながらずっと考える。

 BTGの弱点は、小規模紛争には柔軟な対応ができて便利だったけど、正規戦の場合、歩兵の数が中途半端だったせいで敵の防衛線を突破できず、敵の攻勢にも耐えられなかったことだ。

 中世の軍勢では令和の軍隊が防御時に当然行う、|塹壕掘ったり、鉄条網用意したり《野戦築城》をすることもできないから敵と真正面と戦った時の弱点はより大きくなる。


 私は行軍の途中の休憩時に、足軽大将や組頭たち、各指揮官たちを呼び集めた。




 兼清方の別働隊を率いていたのは、石黒源介。

 藤野家相手に幾度も槍を交えたことのある、歴戦の武将だった。


 彼は、物見からの報告、清継が兵を率いて上牧城を出撃、兼清の部隊に向かったことを受けて即座に決断。行動を起こした。

 城の包囲を止め、清継の背後を突くために移動を……機動を開始した。


 そうしてしばらくすると、軍勢の前方に展開していた騎乗士、現代風に言うなら偵察部隊から報告があった。


『500弱の敵勢らしきものが道上にいる』


 この報告を受けた源介は直ちに軍勢に戦闘隊形を取るように命じた。


 小勢を相手に迂回している時間はない。

 数と勢いに任せて短時間で揉み潰す。


 戦慣れした武将は、誠に勇敢で妥当な戦術判断をしたのであった。


ようやく内戦が本格化してきました。

結衣は主と助でわけるものとか言っていますが、複数のルートから同時進撃する場合同等の戦力にわけるのが戦術原則だったりします。

要はケースバイケースですので兼清方が特殊な策を講じているわけでもないです。


ちなみに装甲機動歩兵は現実の世界には存在しません。私の造語です……と言うには他の作品にもありそうな単語ですが。

結衣が転生する前の世界ではパワードスーツを着た歩兵部隊が一般化しているので、それを装甲機動歩兵と呼んでいます。


現実はまだまだパワードスーツの実戦投入には時間がかかりそうです。

FPVドローンにあっさりやられるでしょうから……。

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