育った場所
少しすると誰かの声がした、両親が戻ってきたと思ったが違った。どうやら夫婦みたい
「この子どうしたのかしら、あらこの紙は?」母親が書き置きを残して行ったらしいそこには
『この子には魔力がありません、名前もありません、どうかこの子をよろしくお願いします。』
と書かれている
「あなた、この子捨てられたみたい」悲しそうに奥さんは言う
旦那さんはすぐに
「俺たちで育てよう!うちには子供がいないがまぁなんとかなるだろう!」
嬉しそうに言った。
旦那さんは俺を抱きかかえ顔をじっと見て、
「よし、こいつの名前はウルフだ、いい名前だろう!」
こうして俺はこの夫婦に拾われる事になった。
俺が育ったのはパープルハート王国に属するアルダー村と言う王都とはだいぶ離れた魔鉱山という山を超えた麓にある人口数百人の小さな村、物作りの職人が多く金属加工だけではなく木工や陶器、服や紙などあらゆる物作りの職人が住まう村だ。
魔鉱山は魔力が多いからか植物があまり生えないためこの村では野菜を育てることが出来ない、そのため村の食事は魔獣の肉が多い、野菜は王都から買っているが村と王都は早くても馬で3日はかかる距離なのであまり新鮮ではない。
5歳の時から俺は、育ての父親エディ・ホワイトアッシュが経営している武器や鎧などを中心に作っている村では一番大きな鍛冶工房によく遊びに行っていた。
工房は二階建てで、一階で屈強な男たちが火を焚き真っ赤に焼いた鉄をハンマーでたたいて剣や鎧を成形し、二階で女性たちが彫刻や装飾などを制作し仕上げる、一階のリーダーは父エディ、二階のリーダーは母アン、どの行程を見るのも大好きだ。
よく職人さんが金属の加工や設計のしかたを細かく教えてくれた、10歳の時からは工房で働くようになる、さすがに鍛冶仕事はさせてもらえなかったが剣や鎧等の飾りとなる彫刻や細かい部品の製作、仕上げをやらせてもらっている。
もちろん師匠は二階のリーダーの母アン、厳しくも丁寧に教えてくれてすぐに上達することが出来た、おかげ様で評判は良かったしそれなりに給料ももらえた。