第26話「ミイラ取りがミイラに」
「――最初はジェットコースターに乗るか?」
「なんで!? 嫌だよ……!」
遊園地に着いて初っ端――目に入ったジェットコースターを指さすと、桂が全力で嫌がった。
……怖いのか?
「高いところが好きなんじゃないのか?」
「それなら観覧車でしょ、普通……!」
それは普通すぎてつまらない。
なんて言ったら、キレられそうだな。
――既に半ギレだけど。
「観覧車は、最後だろ?」
「くっ、このロマンチストめ……!」
桂はほんのりと顔を赤くしながら、文句を言ってきた。
照れているのだろうか?
「それくらいはいいだろ? デート終わりの観覧車とか、王道じゃないか」
「なんでそんなに余裕なんだ……」
俺が落ち着いていることが気に入らないらしく、桂は不満そうに見つめてくる。
確かに自分でも不思議なくらい落ち着いていて、冷静だ。
本来のデートなら、こんなことありえないだろう。
「そんなことよりも、何に乗りたいんだ?」
このまま桂の相手をしていても不満を抱かせるだけなので、桂が乗りたいものを聞いてみた。
ジェットコースターは嫌らしいし、何に乗りたいんだろうか?
「ジェットコースターは後でいいよ。それよりも……」
意外にも、桂はジェットコースターに乗るつもりはあるらしい。
じゃあ今乗ればいいのに――と思うけど、まぁ桂の好きにさせておこう。
「ちょっとこっち」
桂は目当てのアトラクションがなかったのか、俺の手を引いて歩き始める。
掴んできた手のひらには、薄っすらと汗をかいていた。
それによって、桂が緊張しているのがわかる。
「――あれ、乗ろ」
そうして着いた先で桂が指さしたのは、コーヒーカップだった。
かなり意外なチョイスだ。
「いいのか、あれで?」
「いいよ、影之君が余裕そうなのが気に入らないから」
それがどうしてコーヒーカップに繋がるのか――その答えは、乗ってみてすぐにわかった。
「…………」
「いや、くっつきすぎでは……?」
コーヒーカップに乗ってすぐのことだ。
お互いの腕がくっつく距離に、桂が座ってきたのだ。
「……いいでしょ、デートなんだし……」
まぁ確かに、デートなんだからこれがむしろ正しいのかもしれない。
とはいえ――どう見ても、動揺してるのは桂のほうなんだが?
ミイラ取りがミイラになってるぞ?







