表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/35

第13話「悩みごと」

「…………」

「どうした、難しい顔をして」


 翌日、休み時間に桂が珍しくボーッと窓から空を見上げていたので、声をかけてみた。


「なんだ、影之君か」

「おいおい、なんだよその言いようは……」


 失礼な返しをしてきた桂に対し、俺は苦笑いを返す。


「何か悩みでもあるのか?」


 雑に返してきたということは、それだけ周りに気が回っていないのだろう。

 よほど頭の中で何かを考えているらしい。


 まぁ昨日あんなことがあれば、当然だろうが。

 それにしても、桂がここにいるということは、組織から特に怪しまれるようなことはなかったようだ。


「しょーもない悩みだよ」

「悩みなら話してみろよ、聞くからさ」


 俺はそう言って、桂の隣に立つ。

 そんな俺を、桂は不思議そうに見上げてきた。


「どういう風の吹き回し?」

「俺をなんだと思ってるんだ? 友達の悩みくらい、聞くさ」

「へぇ、てっきり周りにはあまり興味がないのかと思ってた」


 おかしいな?

 俺は彼女が行きたいところについて行くくらいには、人付き合いはよかった気がするんだが?


 ちなみに、このやりとりを俺は知らない。

 ゲームをクリアしているからといって、日常で俺が知らない会話などは普通に存在する。

 なぜなら、ゲームでは魅せ場だったり、伏線などの先の展開に繋がる必要なシーン以外は、描かれていないのだから。

 それこそ、数週間や数ヵ月単位でスキップされて、話が進むゲームだってある。

 このゲームでも、日常は描かれてないことが多いのだ。


 少なくとも、桂とのこういう会話は知らない。


「友達くらい、大切にするさ」

「ふ~ん……といっても、わざわざ影之君に聞いてもらうほどじゃないよ。本当に、大した悩みじゃないから」


 それならば、桂が悩んだりなんてしないだろうに。

 一般学生の俺には言えないことなのだろう。


「じゃあ、いいさ。それよりも、今日って学校終わり()いてるか?」


 桂が言えないのなら、しつこく聞くのは良くないため、俺は話を逸らす。


「ん? 何か用事でもあるの?」

「いや、空いてるならてきとーに時間潰して、その後晩御飯一緒にどうかなって。今日桃花が友達の家に遊びに行くから、晩御飯がないんだ」


 というのは建前で、後で桃花には、ご飯がいらないというメッセージを送っておこう。

 人見知りをして周りになかなか馴染めない桃花に、泊まりに行く相手なんているはずがないのだ。


「ふふ、教室でこんなにも堂々とデートに誘うだなんて、意外とプレイボーイなんだね?」

「あぁ、デートだなんて思ってないから、気にしないでくれ」

「君、僕じゃなかったら、殴られても文句言えないからね?」


 笑顔で返すと、とても物言いたげな目を向けられてしまった。

 先に茶化してきたのは、桂だろうに。


「僕と遊びに行ったりしたら、美麗ちゃんがやきもち焼くよ?」

「だから、伊理宮とはそういう仲じゃないっての」

「どうかなぁ?」


 確かに修羅場を共にしたおかげで、美麗とは仲が深まっている。

 それこそ、学校の面々よりは仲がいいだろう。

 とはいえ、まだ彼女のルートに入る選択肢には、いきついていない。

 もちろん、その選択肢を選ぶつもりもないのだが。


「あまり言ってると、伊理宮に怒られるぞ?」

「大丈夫でしょ、あの子はそこまで心が狭くないよ。まぁ、事務所には怒られるかもしれないけど」

「駄目じゃないか」

「ふふ、そうだね」


 ツッコミを入れると、桂は楽しそうに笑った。

 少し元気は戻ってきたようだ。


「とりあえず、そうだね……影之君がどうしてもって言うなら、付き合ってあげるよ?」

「付き合うって、恋人になるのか?」

「……面白くないよ?」


 率直に思ったことを尋ねると、桂がほんのりと頬を赤くして、ジト目を向けてきた。

 別にぼけたつもりはないんだが。


「桂が言ったくせに」

「学校終わったらうんぬんはどこに行ったんだい?」

「あぁ、そっちか」


 てっきり、恋愛話の延長で話してるのかと思ったじゃないか。

 くそ、ちょっと期待したのに。


 ……まぁとはいえ、シナリオ的に桂が俺にはまだ惚れてない段階なので、付き合うという選択肢が生まれるはずがないのだが。


「それで、どうするの?」

「そうだな、どうしても来てほしい」

「言葉に感情がこもってないなぁ~」


 仕方ないだろう。

 そもそも、桂がふざけて『どうしても来てほしいなら』とか言い出すからだ。

 彼女の性格的に、そう返してきたってことは既に行くと決めているとわかるから、本気でお願いなどできない。


「来てくれるんだろ?」

「しょうがないね、一緒に行く友達がいなくて泣きそうな影之君を、僕が助けてあげようじゃないか」

「いや、全然泣きそうじゃないんだが」


 いったい桂にはどう見えているんだ。


「あはは、ごめんごめん。とりあえず放課後、待ってるよ」


 桂はそれだけ言うと、自分の席に戻ってしまった。

 何か事件などが起きたり、シナリオが存在するものがある時以外は、こうして桂と距離を縮めていくのが一番いいのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『新作です……!』
↓のタイトル名をクリックしてください

数々の告白を振ってきた学校のマドンナに外堀を埋められました

『数々の告白を振ってきた学校のマドンナに外堀を埋められました』5月23日1巻発売!!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
数々1巻表紙
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  


『迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について』8巻発売決定です!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
お隣遊び6巻表紙絵
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  


『迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について』コミック2巻発売中!!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
お隣遊びコミック2巻表紙
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ