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第七話 女神の様な人

 此処は、俺とレイニスが出会った例の路地裏。

 そのすぐ近くの煉瓦の壁にある、隙間を裂いてるかの様に展開している光の輪から、


「ふっ、」


 最初にイケメン野郎。


「ッ、」


 その次に元金髪だったお姉さんが姿を現す。

 そしてーー、


「「「ぶわぁああああッ!!?」」」


 俺、レイニス、サーヤの三人が滑り倒れる形で姿を現した。

 その直後、例の光の輪は静かに閉じて球体となり、そのまま消滅したのだった。


「皆大丈夫ッ!?」

「「うぅ、はい……なんとか……」」


 お姉さんは真っ先に俺達の方を見てくれたけど、正直俺はそれどころじゃない。だって……、


「お二人さん……ちょっと……退いてくんない?」

「「あっ」」


 レイニスとサーヤの下敷き状態になってて、押し潰されそうになってますから。


「ご、ゴメンセーちゃん! すぐに退くね!」

「わ、悪い、セイサク」

「いや……別にいいんだけど……」


 慌てて二人が俺の上から移動した直後、


 ジャキッ! と言う金属同士が擦れる音が耳に入ってきた。


「動くな」

「「ッ!?」」


 それは後ろから聞こえてきた。

 恐る恐る振り向くと、イケメン野郎が例の大剣を構えて俺達を睨んでいたのだ。


「危機を凌いだから再度要求する。腕輪を渡せ。今なら命だけは助けてやる」

「ッ!?」


 こ、コイツ! まだ諦めてなかったんかい!


「ちょっ、貴方ッ!?」

「貴様もだ。マミア」

「ッ!?」


 お姉さんの言葉を、視線だけで制止させた。

 その表情には有無を言わせない程の威圧感があった。


「さあどうする? 俺としては貴様らが腕輪を差し出しさえすれば見逃すつもりだが?」

「……」


 どうするって言われても……、こんな状況でどうしろって言うんだ。


 ……と、あの世界に居た場合ならそう思ってたが、


 俺は即座に背後の路地裏の出口の方へ振り返り、こう叫んだ。


「強姦魔だァァァ! 強姦魔がウチの巨乳お姉とまな板ロリっ子の妹を犯そうとしてるぞォォォ! 誰か助けてくださァァァい!!」

「なッ!? ちょッ!? 貴さーー」


 大声を出して俺の行動に驚くイケメン野郎。

 だけど気にしない、気にしません。

 だって俺はまだ死にたくないから!


「おまわりさーーん! ここに変態がいーー」

「貧乳言うなァァァッ!!!」


 ガブッ!


「アギャッ!?」


 突如サーヤが背に乗って来て俺の頭噛みやがった!


「やっぱり君ってセーちゃんでしょ!? いっつも私のを見て貧乳とか言ってため息吐いてたし! そう言うところは変わらないんだから!!」

「イダダダダッ! なんの話だよお前ッ!? ってかコレ何処か懐かしい様なイダダダダッ!!」

「なっ、何やってるんだ二人共! 今はふざけてる場合じゃーー」


 執拗に頭部噛みまくるサーヤに、悶え苦しみ頭を振りまくる俺。

 危機的状況の中で俺達二人のコント染みた行動に対し、レイニスが声を掛けた時ーー、


「なんだ? 何の騒ぎだ?」

「確か強姦魔とか聞こえた様なーーえ? どう言う状況??」

「えっと……強姦魔って、頭噛まれてる人なのか?」

「あれ、この頭噛まれてる人って確か……」


 路地裏の入り口付近から聞こえて来た複数の人の話し声。

 そこにはもう、人集りが出来ていた。


「チッ! 運のいい奴だッ!」


 舌打ちしながら、イケメン野郎が武器を下ろした直後だった。


「おいッ! そこで何をしているッ!」

「ッ!?」


 路地裏入り口付近にいた数人の衛兵が、こちらに向かって来たのだ。

 それを確認してか、イケメン野郎は踵を返し、


「今度会った時、必ず腕輪を俺に渡せ。契約はするな。忠告を破った場合は俺に殺される覚悟をしろ」


 そう捨て台詞の様な事を言いを残し、その場から立ち去った。


「ふぅ……助かっ……た……」


 レイニスがサーヤを引き剥がし、イケメン野郎が逃げた事を確認して安堵した直後、


 ドサッ


「せぇッ!? セイサク!!」

「セーちゃん!? ねぇ! セーちゃんどうしたの!?」


 ……なんかすっげえホッと安堵した瞬間、急に力が入らなくなって倒れちゃったよ。

 視界も段々暗くなって行く。


 ……これは……アレだな。

 多分、安心したせいで一気に疲れが来たのかも……。


 俺は薄れて行く意識の中、俺の瞳に最後に映ったのは、


「セーちゃん! ねぇ! セーちゃんってば!!」


 ……………彩……綾(さあ……や)………?


 ーーーーだったあの子の顔だった。






「……したらダメ」


 どこからか穏やかで、優しそうな声が聞こえ目が覚める。

 起き上がって辺りを見渡すと、何もない真っ黒な空間だった。


 確か俺って、突如現れた黄金輪を潜って、変な自然環境の異世界に行ったんだよな……。

 それで妙なイケメンに脅されて、金髪の女性に助けられて、紅い魔物に襲われて、あの光輪まで逃げてきて……その後どうなったんだ?


っていうか……ここどこ?


 過去のヨーロッパ風。混沌とした自然環境。そして次は何もない真っ黒空間な異世界?

 うん、次から次へといろんな世界に転移して大変だな俺も。

 この次は真っ白な世界にでも飛ばされちゃうんじゃないだろーな?


 っと、訳わからない事を考えてたら。


「モンスターと契約する事だけは絶対にダメ」


 再びどこからか聞こえてくる穏やかな声。

 さっきの声と同じ感じがするから、多分同じ人が話しかけてきたんだろうけど……。


「モンスターと契約したらもう、後戻りはできない」

「うっさいなぁさっきから。一体だーー」


 誰だと言おうとしたその時、俺の目の前に現れた一人の人物。

 それは、羽衣みたいな白い衣装を着た一人の美少女だった。


 ……ちょっと見ただけで文句言う気持ちはどこかに吹っ飛んでました。


 女神級に綺麗な容姿や顔に惹かれ、我を忘れて無言のまま見続けていた。


 不思議な美少女だ。


 説明が難しいが……こう……、

 なんとなくだが、転生前や転生後に見た人達とは違う……何かを醸し出してる気がする。


 まず銀髪の透き通ったロングヘアに、控えすぎず出過ぎずと言った素晴らしいボディ。

 女神様がよく着るような神聖な白い衣装に身を包ませている。


 それだけでも印象的なのだが、それ以上に惹きつけられた物がある。


 髪の色と同じように、透き通った銀の瞳だ。


 それはまさに、人の眼球ではないと断言できる。

 かと言って、それ以外の動物や魚類など、もはや生き物自体の目ではないんじゃないか?

 例えるとするのなら、別次元の何かのような……。


「モンスターと契約すると、取り返しがつかない運命があなたを待っている」

「え?」


 突然謎の少女がそう告げると、その姿は徐々に薄くなり始めた。


 にしてもこの人、俺に謝りたいような悲しい顔してるというかなんというか?

 何処かで会ったことあるのか?

 でも俺、この人とは間違いなく初対面ですからね。


「お聞きしたいのですが、あなた様は俺……あ、いや、僕とどこかでお会いしたこーー」

「早く戻ってあげて。あなたの帰りを待ってる人がいる場所へ」

「え?」

「そして絶対に、モンスターと契約だけはしないで」


 俺の問いに答えず、ただ悲しそうに微笑みながらそう呟くように言った直後、完全に姿が消えた。


 え? どうなってんの?


 そう思った直後、俺の意識はまた遠退いて行った。

10分後、投稿いたします。

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