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第五話 美女と美少女

 う、腕輪渡してこの世界の事忘れないと殺す? えっ?

 い……いきなり何言っちゃってんのこの人?

 あ、そうか。コレが異世界風ドッキリってやつなのか。多分。


「まっ、待ってくれ!」


 俺を庇うかの様にびっくらこいた顔したレイニスが前に出る。

 イケメン野郎は一旦剣先を地に下ろした直後ーー


「君の事情は分からないけどーー」

『キィィィィィィ!』


 例の蝙蝠が舞い降りて、レイニスの前に飛び塞がる。


「れぇっ!? レイニスッ!!」

「くっ! ファイアーボール!」


 レイニスは行手を遮る蝙蝠に対し、魔法を放って応戦する。

 手から放たれし火の玉が、蝙蝠モンスターに直撃したが、


 パシュン


「ッ!? この魔物もあの蜘蛛と同じ結界を!?」

「無駄だ。お前ではこの世界のモンスターを倒すことは出来ない。死にたくなければそこで大人しくしておけ」


 イケメン野郎の言葉に反発するかの如く、レイニスは返答せず動きかけたが、


『キィィィィィィ!』

「っ!!」


 奴が使役してるっぽそうである、蝙蝠モンスターの瞳がそれを逃そうとしない。

 威嚇の声を上げレイニスを脅し、再度動きを封じた。


 イケメン野郎は再度俺の方へと視線を向ける。


「そういうわけだ。どっちにするかハッキリしろ。俺には時間がない」

「ッ!!」


 再度剣を持ち、俺の喉に刃を向け直すイケメン野郎。


 マジの選択迫られてたよ俺ッ!!

 というか初対面の相手に対して処刑宣告とか物騒な事言い出して、一体何考えてるんだこの人!?


「お、お前……、一体何がしたーー」

「早く腕輪を寄越せ」


 こっちの問いも聞かず、YESかNOかの二択しか選ばせない様にしてきやがった。

 クソッ! 会話にならねえ。


「お前、この腕輪を渡したその後、俺達を殺すつもりーー」

「する訳ないだろ! さっさと寄越せ! 契約してしまったらお前はもう、後戻り出来なくなるんだぞ!!」


 喋ろうとした時、切羽詰まった顔して怒鳴り声を上げてきた。

 まるで俺を巻き込ませたくない様な……そんな感じだ。


 ……コイツ、なんの為にこの腕輪を奪おうとしてるんだ? 


 改めて見ると、やっぱりアイツが身につけてる腕輪、今俺が持ってる腕輪と少し似ている。

 この腕輪も、武器を生み出す力はあるっちゃある。

 ひょっとして、この腕輪もアイツが身に付けてる腕輪と同類的な存在なのか?


 そうだとしたら、この力を独占するのが目的か?


 いや、例えそうだとしたら何のために?

 第一本当にそうだとしたら、今この場で俺を殺せば簡単に手に入る。アイツはそれをしない。

 使役してるっぽそうな蝙蝠も、どういうわけかレイニスを睨むだけで一向に襲ってこないし。


 …………


 やっぱり考えても情報が少なすぎる。第一俺の思考だけじゃ分かるわけもない。

 なんたって万年期末テスト校内ランキング最下位を争ってるわけだし。


 でも、今何をするべきかは理解している。


「分かった。この腕輪はお前に渡す」

「そうか。賢明な判断だ。ならば今すぐーー」

「ただし! この世界から抜け出し、俺達を元の世界に戻してから。それが条件だ」


 そう言った俺はレイニスの方へと目線を向ける。


 そうだ。今はこの世界から脱出する事が先決だ。

  正直言って、転移したばかりの今の俺は弱いし、此処が何処で、どんな状況下も把握できていない。

 渡すの拒んで戦うことになったら、俺が弱すぎた所為でレイニスも殺されお陀仏だ。


 元々俺を追いかけてきたせいで、レイニスがこんな世界に迷い込んじまったんだ。

 追いかけて来て助けてくれた結果死にましたなんて、背負いきれない罪悪感を感じちまうもんだ。それだけは絶対NO宣告。


 第一こんな所に居たら、転生したてホヤホヤピーポーの俺は勿論、ベテラン冒険者であるレイニスもモンスターの餌食になっちまう。

 理由は分からないが、この世界の魔物はレイニスじゃ倒せなさそうだし。

 だから今はこの腕輪をチラつかせて身の安全の保証を確保するべきだ。


 ……と思う。


「……途中から視点があってないぞ。瞳孔が眼球内を彷徨うかの如く動き回りすぎだ」


 ……うん、この言葉からしてイケメン野郎にあっさり見抜かれてました。

 上手くいってくださいと祈ってたのが丸わかりの状態でしたね。


 ぶっちゃけ言って、これは賭けでした。

 だって最初腕輪渡すのが条件とか言ってくる可能性もあったし!

 それを拒んだら強硬手段で大剣で叩き斬られて絶命って可能性もあったし!

 例え言われた通り渡しても、受け取った瞬間に殺しに掛かる可能性も無いとは言えないからねッ!


 そんな事考えてる俺を見て、イケメン野郎が呆れたかの様にため息を吐きやがった。


「……俺はーー」


 そして奴が口を開き声を発した、


 その時だった。


「そこから離れてッ!」

「ッ!?」


 迦陵頻伽(かりょうびんが)の如き女性の大声が響いたのと同時に、イケメン野郎は跳び上がる。

 奴が宙を舞った直後、


「ッ!? セイサク! 動くなッ!!」

「……えっ?」


 レイニスの叫び声が聞こえて、咄嗟に呆気に取られた様な声を出した瞬間だった。

 突如流星の速さで駆ける様な光の一線が、俺の前を通り過ぎたのを目にし〇.一秒後ーー


 バァァァァンッ!


「づぅぁアアッッッ!!?」


 突然すぐそばにあった岩が爆破し、爆風で俺の身体が後方へと飛ばされちゃいました。


「セイサクッ!? セイサクッ!!」

「うぇ……大丈夫……ギリ無傷っす……」


 えっ……今度は何?

 急に吹っ飛んで全身砂埃かかったんだけど?


 ーーとかなんとか思っていたら、


 ズンッ ズンッ ズンッ


 まるで地響きを起こす様な音のする足音が聞こえてくる。

 ……ってか、歩む音が聞こえる度に大地が震えてる様な気がするのは気のせいか?


 ムクリと起き上がり、砂埃を払い落としながら足音の方へと振り向く。


「間に合って良かったわ」


 視線に真っ先に映ったのは、金髪碧眼のした、いかにも貴族嬢と思わしい巨乳女性。

 その隣には人形の様に顔が整ったロリっ子日系人っぽい美少女ーー


 ゴゴゴ……

「……」



 ……を、左右片方ずつ肩に乗せてる、二階建て一軒家程の大きさはある、デッカい岩の巨人でした。


 ……うん、歩いてたのはコイツだね。

 だとしたら地面が揺れてると錯覚したのも納得したわ。だって結構重量ありそうだよこのデクノボウ。


 そんな事思ってる最中、肩に乗ってた金髪お姉さんと日系ロリ少女がヒョイと飛び降りて、俺の前に立った。


「あの……今度はどちら様っすか? まさかアンタらも今跳んでった奴と同じでーー」

「話は後。今はこの世界から脱出する事を優先するわ。着いてきーーッ!!」


 金髪お姉さんが口を動かしてる最中、殺気を感じたかの様な顔に豹変しーー、


 例の大剣を構え迫り落ちるイケメン野郎に、肩に背負ってた長い棒らしき物の先端を向けた。


 パァン! ガキンッ!


 突如聞こえた発砲音と、金属で金属を弾き返した様な音。

 気づけば攻撃体制だったイケメン野郎は、大剣を盾の様に扱う防御姿勢になっていた。

 その大剣の太くて長い刀身の一箇所には、弾丸が当たった様な焦げ跡が付いている。


「また戯言を言いに来たか」


 俺達に向ける表情とは全く違う、冷たい眼差し状態であるイケメン野郎。

 殺気に満ちたその瞳には、敵意以外の感情は宿っていない。


「貴方……まだこんな事をし続けているの? いい加減もうやめなさい。貴方がしてる事は間違ってる。例え真実だとしても、人を殺めてでも得る価値のある物なんてーー」

「黙れッ!!」


 大声で反発したイケメン野郎は、手に持っている大剣を大きく後ろに引き、構え直した。


「今回はお前達に用はない。俺はコイツに用があるんだ。邪魔をするなら容赦はしない。俺の前から消えろ。さもなくば斬るッ!!」


 そう言い放ったイケメン野郎は、先程の勢いのまま、金髪お姉さんに斬りかかる。


「……事情はよく分からないけど、仕方ないわね」


 お姉さんは再度、例の長い棒を担ぎ直し、先端を迫り来るイケメン野郎に向ける。

 今も先端部位から薄い煙が出ているその棒は、岩で造られたようなマスケット銃だった。


 バァン! バァン! バァン!


 お姉さんが何回も引き金を引くたびに、銃口からエネルギーの塊とも言える光弾が、光速の速さで何度も放たれた。


「ッ!」


 イケメン野郎は迫り来る光弾を、反射神経を凌ぐ速度で体を動かし避けていく。

 全て防ぎ避けてはいるが、表情からして余裕が無さそうだ。


 バァン! バァン! バァン! バァン!


 イケメン野郎が避けて、光弾が地面に炸裂する。

 あの光弾の威力は相当なもののようで、地面に当たる度にかなりの砂埃が舞い上がってる。

 当たれば大怪我では済まないだろう。

 爆発によって生じた砂埃によって、視界が一瞬悪くなると、

 砂埃の中からイケメン野郎が飛び出し、一直線にお姉さんの元へと駆け抜けて行き、大剣を振りかざす。


 しかし、


「甘いわよッ!」

 ガキンッ!

「ぐっ!」


 お姉さんはマスケット銃を棍の様の如く振り回し、イケメン野郎の一撃を防いだ。

 そのまま鍔迫り合いの状態になると、 ギチギチッ ギリギリッ と、二人の武器がぶつかり合う音が響く。


そして、数秒後。


 お姉さんが受け流す様に大剣を押し退けると、体勢が崩れたのか、イケメン野郎が後方によろけた。

そこをお姉さんが見逃さずマスケット銃でイケメン野郎をドカっと殴打。


「ぐっ……」


 殴られ怯んだ直後に腹突き、そこから流れで顎を蹴り上げ、 そして最後に、 ゲシッ! と、回し蹴りを喰らわせ、


「ぶふぁっ!!」


 イケメン野郎を吹っ飛ばした。


「くっ! バットウィング!」

『キィィィィィィ!』


 苦戦的表情を浮かべたイケメン野郎は、今もレイニスを見張らせている蝙蝠モンスターを呼びかけた。

 蝙蝠モンスターは即座にレイニスから離れ、今も撃ち続けている金髪お姉さんに襲い掛かる。


「ロックバレー!」


 迫り来る蝙蝠に気づいたお姉さんがそう叫んだ瞬間だった。

 側で突っ立ていた岩巨人が蝙蝠に対し、力の象徴とも言える岩の巨椀で殴りかかる。


 ドォンッ!

『キィッ!?』


 巨大な拳を受けたことで吹き飛ぶも、空中で態勢を整え体制を維持した蝙蝠。


「ぐっ! 貴様ぁ……」

「サーヤ! この子をお願い! 奴は私がどうにかするから!」

「分かりました。マミアさん。君、こっちに来……」

「えっ!? は、はい! じゃあよろしく頼むっすぅ……」


 呼ばれた俺はロリっ子に呼ばれ振り向いた途端、


 彼女は呆然としてると思われるかの様に、丸い目をして俺をジッと見つめていた。

 まるで名前が思い出せない知り合いに会ったような?


 ……あ、あれぇ? 気のせいだろうか?

 俺、この子と何処かで出会った様な気がして……、


「…………セイサク?」


 ……あり? なんで俺の名前を?

 ちょっと驚いて呆然としながらも、首を縦に振る。


「やっぱり!! 本当にあの田中星作っ!? あぁ………もう会えないって……思ってたのに……」


 えっ!!? 笑顔になりかけたと思いきや急に泣き出したんですけど!!?


 なんか変な事言った俺っ!? いや、言ってないよね!?

 ただ名前聞かれて頷いただけでなんで泣いちゃってるの!?


「ちょっ、ちょい待てってーー」

「セイサクッ!」


 ちょっと戸惑い掛けた時、先程まで蝙蝠に見張られていたレイニスがこっちに駆け寄って来た。


「おっ、レイニス」

「怪我はなさそうだな。良かった……。それより、泣いてるその子や、アイツと互角に戦ってる金髪の人は一体?」

「いや、俺も正直言って知らないとしか言いようが……」


 レイニスにどう説明すれば良いか分からずにいると、


『キィィィィィィ!』

「「ッ!?」」


 蝙蝠が岩巨人の攻撃をすり抜け、俺達の方へと迫って来た。

 鳴き声で振り向き、口から牙を剥き出しにした姿を見て俺達は驚いたが、


「カオス・ロックキャノン!」


 気づいた金髪お姉さんの掛け声と共に、彼女の突き出した右手から、長さ五メートル程ある巨大な岩石が飛び出した。

 その巨大な岩石は、迫り来る蝙蝠の背後にに直撃し、そのまま押し飛ばしていった。


 その光景を見た俺とは唖然としていたが、


「ッ!? あの人の攻撃も効いた!?」


 レイニスに至っては別の意味で驚きを隠せずにいる。


 その瞳を今も、イケメン野郎と激戦を繰り広げているお姉さんへと向けたのだった。

10分後、投稿いたします。

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