7話 報告書
煙たい
「・・・では辞めてって言ってるでしょ。」
「わかったわかった、今消すよ。」
(遠坂さんと誰かが話している。)
目を覚ます。まっしろで無機質な天井。視界の隅に点滴がぶら下がっているのが分かる。何かを計測している機械が定期的に音を立てている。
「お目覚めかい、嬢ちゃん。今時の子は【知らない天井だ】とか言わないよな。」
(知らない天井ではあるけど、どういう意味なんだろうか。)
「遠坂さん、ここは、、、」
「ここはアーク内の病室だ。嬢ちゃん自分が貧血で倒れたの覚えて無いか?」
(私、事件を追ってて男性の死体を見て倒れたんだ・・・)
「なんとなく思い出しました。」
「そうか、一応検査したがさっき言ったようにただの貧血だそうだ。もう退院していいそうだ。そうだよな?」
「はい大丈夫ですよ。」
いつの間にか遠坂の横にはナースが立っていた。
「こちらのスーツ、血で汚れていたのでクリーニングしておきました。」
ナースが碧のスーツを持ってきてくれた。スーツを受け取り碧が感謝していると病室の扉がノックされた。
「入るぞ」
扉が開くと萩原の姿があった。手には書類が握られていた。
「桐生、昨日の件で君には報告書を書いて貰う。期限は今日中だそうだ。」
「分かりました。」
事務的なやりとりを終え萩原は病室から出て行った。
「優しくないねぇ。」
遠坂はそう言いながらタバコを取り出し火をつけた。
「ダメだって言ったでしょ!吸うなら喫煙所行って。」
勢いよくナースにタバコを取り上げられてりる様子をみて碧は微笑んだ。
碧は第一課に遠坂と共に戻り報告書をまとめ始める。慣れない作業で碧が報告書を書き終えると外は真っ暗だった。一課のメンバーは萩原だけが残っており、他はもう帰宅したのであろう。碧が大きく伸びをしていると萩原が近寄ってきた。
「見せてみろ。」
報告書の完成が遅くなり萩原は少し高圧的であった。しかし報告書を見る目に余計な感情はなく、流れるように目を通し最後に小さくうなずき報告書から目を離した。
「初めてにしてはいい出来だ。今日はもう帰れ。」
「ありがとうございます。失礼します。」
碧がアークを出ると時刻は21時だった。