6話 血
碧と遠坂がビルの中を捜索し始め約15分。ビルの5階の捜索を終えた時、遠坂が碧に注意喚起する。
「やつはおそらくこの上の屋上にいる。俺を先頭に階段を上りやつを処分する。」
互いにうなずき碧は遠坂を前に階段を上り始める。階段を上り切り屋上に出る扉を前に再び互いに合図をとり遠坂が勢いよく扉を開け叫んだ。
「大人しくしろ!!」
遠坂が叫び拳銃を構えた先には追っていた男性の後ろ姿があった。
「両手を挙げ、ゆっくりこちらを向け。」
その言葉に反応するように男性は両手を挙げ、ゆっくりと遠坂の方に向き始めた。ゆっくり、ゆっくりと顔が見え始め、不気味に薄ら笑いをしている男性は完全にこちらに体を向けると、碧に向かい勢いよく走った。碧は恐怖に思考が支配され、拳銃を構えるどころか子鹿のように足を震えさせながら立つのが精一杯の様子だった。
「嬢ちゃん撃て!!!」
そう言いながら遠坂は拳銃を発砲し、男性の右太ももを撃ち抜いた。しかし男性の足は止まらず勢いよく血が流れながらも碧を人質にした。ナイフを取り出した男性は碧の首元に近づけ、脅すように吐き捨てる
「俺を見逃し、逃走手段とカネを用意しろ。そうしたらこいつを解放する。」
男性は足を撃たれ血が止まる気配はないが息を荒くして遠坂の返事を待つ。すると遠坂はその要求を素直に飲み拳銃を足下においた。男性が大きく深呼吸をした瞬間、拳銃の発砲音と硝子の割れる音が同時に鳴り、男性は電池が切れたように碧にもたれかかった。割れた硝子の向こうには萩原が立っていた。
「嬢ちゃん大丈夫か!?」
「えぇ、一応、、、」
遠坂が碧に駆け寄ってくるが後ろの萩原からは厳しい声が浴びせられる
「桐生、どうして撃たなかった。今回は運が良かったが、取り逃がす可能性や君自身が殺されていたかもしれない。」
「はい・・・すみません。」
うなだれた男性の死体をみて碧は正常な思考が回らなかった。男性から流れる血が碧の靴に触れた時、碧の脳はパンクしその場に倒れた。