パンプキン
一分で読み終わると思います。
白いターバンを巻いた、アラブの小男は言う。
「願いを叶えたいなら、十枚の金貨を払ってもらわなくてはならない」
アラブの男を見下ろしながら、少女は長い金色のまつ毛を伏せた。
「いいわ。わたし、絶対に叶えたい願いがあるの」
少女は不安そうだった。なぜなら、金貨を一枚一枚払うたびに、一つの災難が少女に訪れると、アラブの男から聞いていたからだ。
「ねぇ、十枚を一度に渡すことはできない? そうすれば、わたしも後に引けなくなるから」
「だめだ」
少女の覚悟を一蹴するように男は告げる。
「一枚の金貨を私が受け取る。そして、君に一つの災難が降りかかる。そのたびに君は、次の金貨を払うかどうか決めるんだ。君が十の不幸をその身に受けとめたところで、私は君の願いを一つ、何でも叶えよう」
辛い選択だと少女は思った。たとえ九つの災難を受け止められたとしても、最後で心が折れてしまえば、すべては水の泡になるのだ。
それでも少女はうなずいた。
「わかった。わたし、一枚ずつあなたに金貨を払うわ」
そうして少女が金貨を払い始めると、男が言っていたように、次々と少女に不幸が訪れた。肉親が死に、友に裏切られ、片目を失明した。足も不自由になり、まともに動かなくなった。こんなことが後にも続き、ついに少女は十枚の金貨を払い終えることができた。
「よくやったね、お嬢さん」
そう声をかける男の目元は赤くこすれていた。
「さぁ、君の願いを言ってごらん」
少女は、遠くを見つめる瞳で、ただ町を眺めている。
「忘れてしまったわ。もう、どうでもいいみたい」
男が見上げた少女は、和んだように微笑んでいた。
「わたしの心は満たされているから」
少女が人生に疲れてしまったように見えますが、私の見解では違います。
絶対に必要、絶対に叶えたいというものは、実は幻のようなものかもしれないというお話でした。