表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

パンプキン

作者: 紫木さくま

一分で読み終わると思います。


白いターバンを巻いた、アラブの小男は言う。

「願いを叶えたいなら、十枚の金貨を払ってもらわなくてはならない」

アラブの男を見下ろしながら、少女は長い金色のまつ毛を伏せた。

「いいわ。わたし、絶対に叶えたい願いがあるの」

少女は不安そうだった。なぜなら、金貨を一枚一枚払うたびに、一つの災難が少女に訪れると、アラブの男から聞いていたからだ。

「ねぇ、十枚を一度に渡すことはできない? そうすれば、わたしも後に引けなくなるから」

「だめだ」

少女の覚悟を一蹴するように男は告げる。

「一枚の金貨を私が受け取る。そして、君に一つの災難が降りかかる。そのたびに君は、次の金貨を払うかどうか決めるんだ。君が十の不幸をその身に受けとめたところで、私は君の願いを一つ、何でも叶えよう」

辛い選択だと少女は思った。たとえ九つの災難を受け止められたとしても、最後で心が折れてしまえば、すべては水の泡になるのだ。

それでも少女はうなずいた。

「わかった。わたし、一枚ずつあなたに金貨を払うわ」

そうして少女が金貨を払い始めると、男が言っていたように、次々と少女に不幸が訪れた。肉親が死に、友に裏切られ、片目を失明した。足も不自由になり、まともに動かなくなった。こんなことが後にも続き、ついに少女は十枚の金貨を払い終えることができた。

「よくやったね、お嬢さん」

そう声をかける男の目元は赤くこすれていた。

「さぁ、君の願いを言ってごらん」

少女は、遠くを見つめる瞳で、ただ町を眺めている。

「忘れてしまったわ。もう、どうでもいいみたい」

男が見上げた少女は、和んだように微笑んでいた。

「わたしの心は満たされているから」


少女が人生に疲れてしまったように見えますが、私の見解では違います。

絶対に必要、絶対に叶えたいというものは、実は幻のようなものかもしれないというお話でした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ