第一話「仔犬が導いた縁」
「ケイニスマイナー・クリソプレーズ!」
アスケラが唱えた瞬間、マジックジェムから無数の光の粒が解き放たれ、その光が仔犬の形を作り出しました。
「お願い、仔犬さん。私が進むべき道を教えて」
「ワン!」
プリズムのように輝く毛を持った仔犬は嬉しそうに吠えたあと、光の粒をこぼしながら森の奥へと駆けていきます。
アスケラはその仔犬のあとを必死に追いかけました。
――数十分後……。
「え……、ここ……?」
着いた先は、森の奥深く。
周りには沢山のビーズが実った木、ぼうぼうに生えた毛糸の草。
全く管理のされていない、荒れた場所でした。
「本当に、ここなのよね……?」
「ワンッ!」
仔犬は自信ありげに答えたあと、またもや光の粒へと変化し、そのまま弾けるようにして消えました。
「でも……、ここ、何もないわよ……」
アスケラが小さな溜息をついたとき、
「うわわっ!?」
「ひゃぁ! え、えっと、大丈夫!?」
「……?」
遠くから声が聞こえました。
「心配だわ、行ってみましょうか……!」
アスケラは少し駆け足で、声のした方向へ向かいました。
「ナシラ、痛くない? 大丈夫?」
「いてて……、大丈夫大丈夫! ちょっと滑ってこけただけだから! シェアトは僕みたいにならないように、気を付けてね?」
「うん……。というか、もうホントにびっくりしたよぉ……」
「えへへ、ゴメンゴメン!」
そう言うと、黒色のイヌのぬいぐるみ『ナシラ』はヒョイと立ち上がりました。
「待ってナシラ! せめて魔法はかけさせて!」
白色のイヌのぬいぐるみ『シェアト』はすぐさまマジックジェムを取り出し、唱えました。
「ライラ・ペリドット!」
すると光の粒は琴の形を作り出し、一人でに音楽を奏ではじめました。
琴が奏でる旋律は、まるで星たちの歌声のよう。
聞いていると、痛みや疲れがとれる感覚がします。
ナシラはその音楽に耳を傾けました。
「シェアトありがとう、痛みが引いてきた!」
「そんな、これも魔法のおかげだから……! でも、この力もいつ使えなくなるか、分からないんだよね……?」
「……あなた達、マジックジェムが使えているの?」
「!? 誰っ!?」
二人は声のする方向へ振り返りました。
「待って、私は敵じゃないわ。安心して」
アスケラはそっと木の陰から出ました。
「私はアスケラ。あなた達の声が聞こえたから、探しにきたの」
「……本当に? 敵じゃないのなら、マジックジェムを見せて」
「? 分かったわ」
アスケラは、首から下げているマジックジェムをシェアトに手渡しました。
ナシラがそれを確認したあと、自らのマジックジェムを掲げ唱えました。
「テレスコーピアン・タンザナイト!」
光の粒は望遠鏡の形を作り出し、望遠鏡はナシラの体へと取り込まれました。
ナシラはその後、アスケラのマジックジェムを見て言いました。
「……うん、この子は『コラプサー』の一味じゃない」
「コラプサー……?」
アスケラは首を傾げ、二人に問いました。
「ナシラ、アスケラさん知らないみたいだよ」
「だね……。敵じゃない事は分かったし、話してあげるか……」




