表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

second


あたしは高いところが大好き。


別に理由なんて考えたことなんてないけど、理由があるとしたら空に近いからかも。


人がこの世を去ったら逝く場所。


あたしはいつになったら逝けるのかな。


いつもそんなことを考えてる。


自殺するほどでもないけど、必死こいて生きていたい世の中でもない。


まぁ、みんなそんなもんでしょ。






 ・・・

「茜、どこに行ってたの?」


「別にー。」


いつも通り答えた。


「相変わらず素っ気無いねー。」


友人の一人、美樹がいつも通り言った。


「それより今日はどうするー?」


「てか、たまにはたくま君とデートしてあげれば?」


たくまかぁ。


正直めんどくさい。


自分が会いたい気分じゃないのに何でデートしなくちゃいけないの。


「今日はたくま用事あるんだって。」


「そうなんだ。じゃあ、今日もあたしがデートしてあげるよ。」


男は都合いい時だけ会えばいい。


女は時間つぶす時にいればいい。


そんなもんでしょ。


「誰が用事あるってー?」


「たくま・・・。」


たくまがメールの返事もよこさない薄情な彼女の元へ来ていた。


「俺今日用事あるって茜に言ったっけ?」


「あれぇー、聞いたような気がしたなぁ。」


本当にめんどくさい。


「何だ。たくま君用事ないならデートしてきなよ。」


めんどくさい。


「もちろんデートするよな。」


めんどくさい。



都合いいときだけ会えればそれ以上の関係なんか望まない。


それ以上の感情なんか望まない。


「さっ、茜行こうぜ。」


一人で家にいるよりはましか。


「わかったよ。たくま行こう。」


明るい口調で合わせた。




 ・・・


いつものカラオケ。


いつもの選曲。


いつもの声。


いつもの程よい明るさ。


たくまはいつも通りのデートを楽しんでいた。


あたしはいつも通りずっと友人たちにメールを打っていた。


「茜ー、茜も何か歌えよ。」


「んー。気が向いたらね。」


「茜の歌声好きなのになぁ。」


好きとか言われると気持ち悪く思う。


そんな感情を軽々しく口にしてほしくない。


「絶対歌わない。」


「えぇー、何で!?」


「気が向かない自信があるから。」


「なんだよそれぇ。」


たくまが残念そうにつぶやいた。


「飲み物とってくる。」


あたしはカップを持って部屋を出た。


気が楽になった。


誰かといるのはすごく疲れる。


何もしていなくても疲れる。


それでも一人でいるよりはまし。




「何にしようかな。」


ドリンクバーにはたくさんの飲み物があって迷う。


寒いからほっとココアにしよう。


ボタンを押す。


「・・・あれっ」


ココアが出てこない。


こういう時が一番イライラする。


ほしいものがほしいときに手に入らないのが気に入らない。


良く見るトランプがついている。


[エラー]


めんどくさい。


ちゃんと店員は補充しときなさいよ。


それが仕事でしょ。


まったく。


ドリンクバーに店員を呼ぶ呼び出しボタンがあった。


ピンポーン・・・


・・・


「はーい。少々お待ちください。」


少し待つと店員が来た。


「どうしましたか?」


「エラーになっちゃったんですけど。」


「申し訳ございません。すぐに補充しますね。」


「はーい」


たくまのとこに戻ろうかとも思ったがまた来るのもだるいからここで待つことにした。


店員を見ているとなんとも不器用な様子だ。


必死に作業している姿もなんだか面白い。


思わず笑ってしまった。


なんだか見ててかわいい人だな。


「何らしくないこと言ってんのよ、あたし。」


「どうしました?」


「あっいや、独り言です。」


「そうですか。面白い方ですね。」


にっこりと店員が微笑んだ。


ドキッ・・・


ドキドキドキ・・・


「あっ・・・。」


なんだろう。


あたし急にドキドキしてる。


この店員に胸きゅんしたってこと?


そんな感情あたしにはいらない。


そんな感情気持ち悪い。


そんな感情めんどくさい。


今のはただの錯覚だよ。


そう、錯覚。


「まだですか?」


「あっすみません。不器用なもので。・・・もしよろしければお部屋のほうへ運びましょうか?」


「お願いします。」


そう言って早歩きで部屋に戻った。


めんどくさい。


人と接するのはめんどくさい。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ