一流は、ナンパを語る
『食物に対する愛より、誠実な愛はない。』 byバーナード・ショウ
『君、1人~?暇してる系~??』
『可愛いね~、健康的な見た目でタイプだわ~』
「いや、別に…」
私はボソっと返す
こんな見た目してるから遊んでると思われて仕方ないが
ダルいなぁ…
ってか、誘い方が若干古くないか??
チラッっと、アイツを見る
まだ、道の端で膝を抱えながらブツブツ考え事をしている…
ダッッッッル…!!
コイツが一番ダルいぞ…
『いいじゃん、いいじゃん~♪ 俺らと遊ぼうよ~☆』
『お腹空いてない? なんでも奢るよ?』
「別に空いてないっすから…」
嘘だ、かなり腹は空いている…
朝飯も抜いてるからな~
男達も、なんとなく調子ずいてきた
シカトするか…
「ん?」
一瞬、我に返り 辺りを見回すと小春氏が何やら見知らぬ男性たちと話している
友達か…?
いや、ナンパか!
コハルさん、やはり 男性を惹きつけるポテンシャルを持っている
彼女をメイドとして、鍛え上げれば 文字通り看板メイドになってくれる事 間違いないだろう!
しかし、気まずいな…
どのくらい私は 思考の海にダイブしていたのだろう?
呆れた彼女が、私より彼らと遊びに行く可能性は充分にある。
どうしたものか…
「隠れ家的な美味い飯屋知ってるんだ~、ねえ 君、行こうよ~♪」
「!?」
私は、その言葉を訊き 一瞬にして距離を詰めた
「それはどこにあるんですか!!!!!!!!?????」
渡りに船だ!彼らは東京が地元だろうか?
数年、日本を離れていた私より彼らの方が 美味しい店には明るいだろう
やったぜ!!
『え?ええ?えっ…? なに、彼氏さ~ん? あっスミマセン お邪魔しちゃって…』
『彼女さん超マブくて、1人かと勘違いして~、ウザい事してスンマセンした!』
「はっ!?いや、彼女じゃ…!!」
いきなり近づいて来たフランス野郎に、ギョッとしてたのも束の間
私は、ナンパしてきた男達に訂正を入れる
「そんなことはいいんですっ!! どこですか!? 隠れ家な美味しい店!? 是非案内をお願いしたくッ!!!!!」
『『すっ!すんませ~~~~~~~~~~ん!!!!!!!』』
2人が、こいつの迫力に圧されて逃げて行った…
悪い奴等じゃなかったんだろ、ギラギラ眼を輝かせたコイツにビビリ一目散だ
「あっ!!!!!!! なんで!? 待って!!!!! 置いてかないでっ!!!!!!!!」
こ、こいつ…マジか
店の情報の為にこの熱量…あたしの事なんて眼中無しじゃねえか…
「くそ、おしい事をした せっかく生きた情報を手に入れられるチャンスだったのに…」
私らは、なんと結局 コンビニの弁当を買う事にした。
そうでもしないと、コイツはまた迷い出すし、何時間かかるかわからない
実際に、コンビニでもコイツは30分の長考を見せた
途中、いい加減にしろと私が引きづらなきゃ まだやっていただろう…
「しかし、コンビニとは盲点だった 日本特有のコンビニ文化 お弁当類の進化は最近目覚ましい、価格は割高、容器の底上げなんて良くない噂も聞くが… 味を確かめられる良い機会ですよ
自分はお高くとまっていないつもりでも、ついついコンビニ弁当はスルーしてしまう
自戒を込めた食事が出来そうだ。」
コンビニで飯を買うだけで、どんなめんどくさい思考してんだよ
ダルさが天井知らずだな…
「隠れ家的な店も知りたかったが、二人のナンパ師に感謝ですね。」
少しカチンと来る
「へぇ~、余裕じゃん… やっぱ本場の愛の国フランスじゃナンパなんて日常茶飯事ってか?」
私のフランス知識、というか偏見はここまでが限界だ
皮肉も弱い
「そんなことはないですよ、日本でも言われる”セクハラ”の概念は世界中で浸透している
いわゆるマッチョなナンパ、強引で男らしいみたいのは歓迎されなくなりました。
フランスでは今は”ドラゲ”という言葉がニュアンスとして正しいかな?
もう少し、センシティブに踏み込むなら”セドゥイール” 発音はお許しを…
セクハラ批判の浸透は、セクハラの純粋な被害者を守る抑止にはなりますが
それによる、男性と女性との分断を強めた。
相手のパーティーで着ていたドレスを褒めたらセクハラなんて、極端過ぎてどうかしている
それは、恋愛が起こる機会の喪失に他なりません
フランスで出来た知り合いの中には、ナンパがキッカケで結婚までした夫婦がいました。」
『お、おう…』
私は、聞いた事を後悔し始めていた
「日本のマンガ・アニメ文化の悪い点の一つですが、ことさら ナンパ=悪と 極端に表現し過ぎています。
主人公が、女性を悪質なナンパから助ける舞台装置として便利なんでしょうが
ナンパする事が悪なら
私の出会った夫婦は”悪人”ですか?
2人には、可愛いお子さんも これまた2人いる。
旦那さんが、勇気を持ってナンパしなければ 誕生しなかった命だ
世の中、出会いの機会は限られています。
街の中で偶然通り過ぎた相手こそ、運命の人かもしれない
悪質で強引なナンパが悪いのであって、全てのナンパを悪質行為と断ずるのは多様性の観点からも問題だ。」
「…う、うん わかったよ…」
「セクハラという言葉は、さらに気弱な男性が女性にアタックする挑戦権まで侵害し始めている
そもそも、世の中の半分以上の男性は女性に告白も出来ない繊細なハートの持ち主も多いんです。
褒めたらセクハラなんて、人間関係を構築する上での重要な潤滑油を排除するようなモノ
料理でいえば、油をひかないフライパンだ!
少し、不快に感じてしまうような女性もいるかもしれないが それで男性からのアプローチを全て封殺してしまうなんて愚の骨頂ですよ
男性だって、女性からの何気ない言葉で日々傷ついている。
合わない部分があっても、そこから関係を進める為に 相手を褒めたりするのが有効的で友好的な手段なのに……、政治うんぬんではなく こういうセクハラという概念の一人歩きの方が少子化を進めて来たんじゃないですか?
イクメンなんて言葉が生まれる前の方が、ベビーブームという観点からすれば健全に子供たちが誕生していた。
そして! デート、食卓、家族の団欒、そこには必ず料理があった
膨張したセクハラ意識は、料理を楽しむ機会すら奪っているんですよ!!!!!!」
まだ、続くんか…? これ…
『あれ~? こはちーじゃん!』
「ゲッ!!!!!!」
面倒事は続く…
私の、クラスメイトが そこに居た。