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桜の振り袖  作者: 白百合三咲
3/5

正反対のさくら

 翌日わたくしは中庭で花壇の花を積んでいました。使用人が普段手入れしてくださるので花も美しく咲き誇ってます。

その時


Dreaming of home dear old home

Home of my childhood and mother


どこからか歌が聞こえてきました。

dreaming of home and mother

それはアメリカの歌曲でイギリスの女学校に留学していたときも習ったものです。

懐かしい歌声に導かれていくとリボンの少女がいました。濃い桃色の生地に白い鳥の模様が入った着物を着ていました。歌声だけでなく英語もきれいだわ。


Off when I wake this sweet to find

I've been dreaming of home and mother.


「素敵な歌声ね。」

わたくしが声をかけるとリボンの少女はわたくしに気づきます。

「お母様。この歌はイギリスの学校で習ったんです。曲名はdreaming of home and mother 故郷と母の夢というそうですわ。 」

「ええ、知っているわ。お母様も留学していた時に習った歌ですもの。」

「お母様、わたくしは遠い異国でお母様や日本のことを思い浮かべておりましたの。わたくしのお母様はどんな人だろうと。」

「うふふ、わたくしは貴女の想像通りのお母様だったかしら?」

「ええ、勿論ですわ。ブルーに蝶の刺繍が入ったドレスが似合う優しくて美しいお母様ですわ。」

「まあ、それは良かったわ。」

「ねえ、お母様も一緒に歌いましょう。ね?」

「ええ、いいわよ。」


Home dear home childhood happy home

When I played with sisters and with brothers.

It was the sweetest joy that I did roam

Over hill and through dale of mother.









その日の夕食はわたくしは夫と2人のさくらと4人で取ることにしました。

わたくしの向かいの椅子を執事に引かれ2人が席に着きます。わたくしの向かいには簪の少女。今日は丸襟の黒いドレスを着ています。今日の昼に庭で歌を歌っていたリボンの少女は夫の向かいに座りました。

 ほどなくしてスープが運ばれてきました。2人のさくらは一番外側に置かれているスプーンを取りスープを口に入れます。

お皿のスープが少なくなると両手でお皿を持ち音を立ててないように口に注ぎます。

2人ともテーブルマナーはできているようだわ。


「失礼致します。空いたお皿はお下げしても宜しいでしょうか?」

「ええ、お願い。」

まずはリボンの少女が答えます。

「お願いしますね。」

簪の少女も答えます。

「あの、それからスープ美味しかったですわ。ありがとう。」

簪の少女はメイドにお礼を言いました。

「メイドへの労いの言葉を忘れないのはいいことだ。」

夫が簪の少女を褒めます。 

「はい、お父様。修道院では他者への感謝の気持ちを忘れないようにといつも院長先生がおっしゃっておりました。」 

彼女は口数は少ないが他者への思いやりはあるのだろう。




 その夜夫がわたくしの部屋を訪れました。

「暖子、どうだ?どちらが本物のさくらか分かったか?」

「いいえ、今のままではどちらも本物に見えてしまうわ。でも」

「でも?」

「明るくて社交的なリボンの少女と無口だけど他者を気遣える簪の少女。全く正反対だけどわたくしはどちらも好きですわ。」

「そうだ、暖子。私にいい案があるのだが。」

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