神魔十大霊器 ―神剣レーヴァテイン― (改稿版)
お世話になっております鰺屋です。
皆様に応援して頂いている本作は現在……
総獲得ポイント数 44,604 P !
ブックマーク数 9,500 件 !!
総ページビュー(PV) 693 万 !!!
に到達しました!!
これは……偏に読者の皆様の応援のおかげです!
これほど読んでいただける事が力になるとは……私事ながら悲しい事が起こらなければ気付けなかったかもしれませんm(_ _)m
この場をお借りして……読者の皆様に謹んで御礼を申し上げます。
誠にありがとう御座います!!
そして、今後もなんとか皆様に楽しんで頂ける様に精進していきたいと思っております。
何卒……今後とも応援、よろしくお願い申し上げますm(_ _)m 鰺屋 華袋
彼女は軽く苦笑いをすると、私から視線を外して車窓に映る風景を眺め始めた。
(ふう……どうにも読めない娘ね。だいたい滝沢君に会ってどうするつもりなの? 彼はコアを手放す気は無いと明言しているのに……)
彼女の視線は長閑な田園に向いているが……私には、彼女の瞳には外の風景は映っていない様に思えた。
その証拠に……目的地が近づき車窓が深い森に遮られても彼女は視線を戻さなかった。
それから暫くの間……リムジンは深緑と木影に遮られた狭い山道を、ギリギリのラインで通り抜けて目的地を目指し走り続けた。
それにしても……
「ココを毎日通ってるなら……あの運転技術にも頷けるわね」
そんな感想がつい口をついてしまう。それ程に彼の自宅へ通じる道は酷かった。
舗装されているのが不思議な道を暫く走り、一際大きなカーブを過ぎた時……薄暗かった視界が不意に明るさを増し、急に道幅が拡がる。そして、
「何よ……これ?」
私達の乗るリムジンの横に現れたのは……広大な敷地を示す白い土塀とその上に並ぶ、鋭利な忍び返し……
土塀に並走する道を走るリムジンは、個人宅の敷地に沿った道とは思えない時間を進んだ後、やっと到着した入口らしき大きな門の前に止まる。
「目的地に到着しました」
車内スピーカーから運転手の物と思われる声が流れる。
そう言えば……酷い道を進んで来たにも関わらず、リムジンの中に居た私達が、さほど不自由を感じなかったのは、この運転手の腕のおかげだろうか?
リムジンに乗り込む前に紹介された少々陰気な男は、探検者協会に所属する職員らしいが……この腕前を見ると鷹山は私も知らない有能な人材をまだまだ抱えているらしい。
それから車外に出た彼は、私達を外に誘うべく後席のドアノブに手を掛け、重いドアが滑らかに開いて……
「やっと到着みたいね……クラリス………クラリス?」
私は外に降りるべくフランスから来た同行者に声を掛けたのだが……
彼女は、目の前に現れた門を凝視したまま微動だにしない? 車外では運転手がドアを開けたまま無表情で立っているが……視線は(何故降りない?)と語っている。
「どうしたのクラリス?」
彼女は声を掛けた私に振り返り、私の顔を見て……??
「リョウコ……貴方にはアレが見えないの?」
彼女は、先程迄の物憂げな表情とは打って変わり、驚きを抑えきれない声で私に質問して来た。
「あれ?? えっと……何の事?」
そう言った私に少しがっかりした様に彼女は表情を曇らせる。自己主張と自己完結が基本のフランス人らしい反応だが……
彼女は状況を把握しかねている私に業を煮やしたのか……意を決した様に車外に出ると、フレンチブルーのパンプスを踏みしめて巨大な門の前に仁王立ちになり……
「見て分からないの? C'est comme une porte de l'enfer ! (これは……まるで地獄の門じゃない!) 」
と早口で捲し立てた……
私はとりもなおさず彼女を追い掛け車外に飛び出した。
「ちょっとクラリス! 」
彼女の様子は尋常では無かったが……私には彼女が興奮している理由がさっぱり分からない。
一方、彼女の様子とは対照的に……私達が車外に出た事で自分の仕事が終わったと認識したのか、運転手は静かに後部座席を閉めて運転席に戻ってしまった。
「もう! いったいどうしたって言うの……え?」
時間にして一秒にも満たない……それこそほんの一瞬、運転手に視線を向け、その視線をクラリスに戻すと……彼女は肌見離さず抱えていたケースを背後に投げ捨て、その中に収まっていたと思われる黒い剣を鞘から抜き放とうとして……?!
(?!?!?!!!!)
「やめて! 何でいきなり神剣を抜こうとしてるのよ!!」
私は慌てて彼女を止めようと彼女を背後から羽交い締めにしたのだが……
(ウソ?! 何処からそんな力が??)
どう見ても私より体格の劣る彼女が……剣を片手に門へ近寄ろうとするのを止められない?! 私は背後から触れた彼女の力が、私の腕力を遥かに上回っているのを確信した。
私は力尽くでは彼女を止められない事を悟るが、それでも彼女を離さずに背後から語りかける。
「やめなさい!! 貴女は世界に六人しか居ない天魔スキルの一つ“断罪の天使”の保持者なのよ!! そんな人が“タワー”の外で神魔十大霊器なんか使ったらどうなるかくらい分かるでしょう!!」
私が言った事が伝わったのか、門に向かおうとした彼女の動きがにわかに止まった。だが、まだ神剣は彼女の手に握られたまま鞘には収められてはいない。
なんとかスキルを使う前に止めないと……彼女のスキルが噂通りの代物なら……どんな規模の災害となるか予測がつかない!
「おいおい、人ん家の前で何をしてるのかと思えば……物騒な得物振り回してどういうつもりなんだ?」
私がなんとか穏便に事を治めようとしている時に……今、一番聞きたくない声が聞こえてしまった。
「出てきたな!! この塔の悪魔め!! こんな地獄の門を呼び寄せてしまうなんて……残念だけどお祖母様の心配は杞憂ではなかったのね!!」
――――――――――
【 日本 N県 N市 郊外 】
― 滝沢邸 門前 ―
《 side 滝沢秋人 》
(おいおい……何がどうなってんだよ?)
俺はカメラに映っていた知り合いと……同行してきたらしい少し小柄な女性が大門の前でもみ合ってるのを見て困惑する。しかも初めて顔を合わせた外国人に、いきなり悪魔だのなんだのと責められるとは……
『PD……お前が言ってたのはあのデカい剣を持った女の事か?』
『イエス!! 対象はただの人間では有り得ない膨大なエネルギーリソースを保持しています! 概算でもこちらの貯蔵量の数倍は確実です。タキザワは私との契約で一般的探検者とは比較にならない程効率的にエネルギーを運用出来ますが……油断したら殺られますよ?』
『おいおい……マジかよ』
俺は未だに涼子ともみあっている女を改めて観察する。どうも見たところ腕力では涼子を圧倒してる様に見えるが……
「なるほど、無理やり振りほどいたら彼女が傷つくから困ってるのか……」
俺が彼女の不自然さに気付いた時、今度は涼子が、
「滝沢君、一度家に戻って!! 私がこの娘を説得して落ち着かせるから」
と言って俺に一度門内に引っ込む様に促したんだが……
「待て!! 逃げるつもり?! 108の災厄をこの惑星にばら撒いた悪魔め! 今こそ我らオルレアン家の末裔がお前を成敗してくれる!!」
???
「おい……今お前なんて言った?」
――――――――――
【アメリカ NY州 マンハッタン島】
― マウントサイナイ病院 ―
《 side 神山奈緒子 》
シンプソン女史は特に気を使う様子もなく5thアヴェニューから院内に入ると、プラザカフェでラテを3つとオーガニックのサンドイッチをテイクアウトした。私達は病院に入って行く女史のあとをついて歩いていたのだが……
「ここ、子供の姿が多いっすね?」
「ええ、このマウントサイナイはマンハッタンでも有数の病院で……しかもここは小児病棟だから……」
そう答えたシンプソン女史は、少しだけ表情を曇らせ……持っていたラテとサンドイッチの袋を私と莉子ちゃんに渡した。そのまま病院の外に出た彼女は…… 5thアヴェニューの車の群れをかき分け、セントラルパークに入って行こうとする?
「待ってMs.シンプソン、そこは……」
私の懸念が伝わったのか……シンプソン女史は急に腑に落ちた顔を見せて、
「ああ……大丈夫よ。セントラルパークの“タワー”は南半分に有るから。こっち側にはアメリカ全国の支部を統括する“開拓者の方卓”の本部と……なんとか呑み込まれずに済んだ、残りのセントラルパークがあるだけよ」




