不定スキル《アンリアル スキル》 ―アイテムボックス― (改稿版)
現在……月間ローファンタジーランキング22位です!!長期ランキングに居座るのって本当に大変なんですが……これも読者様の応援の賜物であります!!
本当にありがとうございますm(_ _)m
そして……申し訳ありませんが今回のお話は“回想の中で回想する”というややこしい仕様になっております!
読者様によっては拙いところが気になるかもしれません。もう少し腕が上がりました再度改稿いたしますので……何卒ご容赦下さいませ。m(^~^;)m
「おいおい、利平爺さん……いったい何者を招いたんだよ?」
俺はPDに、表門に偽装したゲートの“侵入拒否モード”を発動させた。
あたふたと“司令室(仮)”への階段を降りると……そこには俺より先に利平爺さんが居た。PDから警報を受け取ったのは俺と同じタイミングの筈なのに……
「これはこれは……若いお嬢さんがこの立ち方が出来るとは、大したものですな」
爺さんは、門前のカメラ映像を観て大いに感心(?)している。映像には見覚えの無いブラウンブロンドを腰まで伸ばした女性と……
「鼎さん? 爺さん、今日の来客って防衛省関連だったんじゃないのか?」
「若……来客の素性はお話ししたかと?」
利平爺さんがこっちを半目で眺めてくる……なるほど“じろり”ってオノマトペはこういう時に使うんだな。
「ああっと……そうだ。どっちにしろ鼎さんが同伴してるんじゃ門の前で待ちぼうけって訳にはいかんよな?!」
俺はそのまま司令室(仮)から抜け出して表門に向かおうとするが……
『タキザワ、感覚拡張と筋力増幅の調整を推奨します。デフォルトの調整値では不測の事態に対応不可能だと断言します』
『おいおい、鼎さんが連れて来た人間を何だと思って……って、そう言や人間辞めてるって言ってたか……O.K 開門と同時に並列励起レベル2を起動しろ。まぁ念の為……な』
『了解……』
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【 東京〜N県 リムジン車中 】
《 side 鼎涼子 》
「マダム.カナエは、ムシュ.タキザワとパーティを組んで長いのかしら?」
「いえ、マダム.オルレアン。前回の探検が初めてですね。あと……出来ればただの鼎か……涼子って呼んでもらえるかしら? 日本ではあまり同世代では敬称を付けて呼び合ったりしないのよ」
私は、滝沢君の自宅にほど近いリムジンの中で、クラリス・ド・オルレアンの話し相手をしながら、統括支部長から依頼を受けた時の事を思い浮かべた。
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今回、フランスギルドが誇る最高峰探検者の随伴を依頼されたのは僅か三日前だ。
その日、ギルド本部と同じ御殿場市にある私の拠点の一つに、珍しく鷹山さんが訪ねて来た。私は溜まっていた“富士タワー探検”の動画編集をしていたが……珍しい客人に手を止めて彼を迎え入れた。
『やあ、涼子くん賢者の石の件では世話になったね』
『……嫌味ですか師匠?』
先日、滝沢君に“賢者の石”の譲渡、もしくは貸与の打診を依頼されたのだが……その打診は、すげなく断わられてしまった。
『そうトゲトゲせんでくれ。ほら、土産だ』
そう言って彼が事務所のテーブルに置いたのは、御殿場IC近くの人気店『と○や工房』のどら焼きだった。今の今迄……彼は手になにも持っていなかったのにだ……
『スキルも健在の様ですね師匠……相変わらず油断も隙もない』
『おいおい、人を泥棒みたいに言わんでくれ。コイツは今朝から並んで手に入れたオジサンの努力の結晶なんだぞ』
『どうだか? “世界標準スキル識別項目”に分類不能な不定スキル──通称“アイテムボックス”の中は……嘘か真か時間が止まっているともっぱらの噂ですよ?』
『人の想像力とは実に豊かなものだね』
実は……私は、師匠が現役だった頃の戦闘を一度だけ見たことがある。
それは……たった一度だけ富士タワーに現れた未知の階層不定徘徊モンスター“髑髏巨人兵”が、富士の探検者を相手に暴れ回った時の事だった。
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その日、何の前触れもなく突然現れた漆黒の巨大スケルトンは、数多のスケルトンやゾンビを従え、同じ階層にいたエクスプローラー達を相手に暴れ回った。
これは後の調査で判明した事だが……その時の犠牲者の数は【剣聖】小佐野慶太とそのパーティが討伐した雷獣“鵺”がもたらした犠牲者の数を上回ったという。
厄介なのはガシャドクロだけではなかった。奴が従えた不死者の群れは単体ならさほど怖いモンスターでは無かったが……今回は数が違う。本来アンデッド程度なら一撃で仕留める事が可能なベテランエクスプローラー達だが──終わりの見えない“数の暴力”には結局抵抗しきれなかった。
その後もガシャドクロは数多のエクスプローラーを蹂躙しながら徘徊をつづけ……まだ彼に師事する前の私や奈緒子、そして、その日同フロアに居た事で集まっていた多数のエクスプローラー達に襲いかかった。
それは、たまたま滞在していた階層で“巨大モンスター発見”の報に色めきたった探検者達が、即席で結成したレイドパーティだった。
生き残る為にそこに参加した私達は……自分達の実力を過信していたエクスプローラーがどういう目に遭うかをまざまざと見せつけられる事になる。
一人、また一人と奴等に飲み込まれるメンバー達……逃げるにしても、私と奈緒子が割り振られた場所は、奴を挟んでゲートとは逆の位置だ。
運良くガシャドクロとの戦闘を避けられたとしても、無数のスケルトンやゾンビを退けなければどうにもならない。
『仕方ない……行くわよみんな!』
途切れを見せないアンデットモンスターの波濤を見て……強行突破の覚悟を決めた私達は、私のスキルを盾にしながらアンデッドの群れの中に突撃した。
遠距離攻撃スキルを持つエクスプローラーがガシャドクロに牽制を放ち、近接スキル持ちが退路を切り拓くべく取り囲むアンデット共に武器を振り上げる……
渾身の力を振り絞っての逃走劇……だが、魔法系スキルはガシャドクロに命中する寸前に奴の身体を覆う黒い霧に吸い込まれて消え、近接系スキルホルダー達が放つ強力な攻撃も……余りにも多すぎるアンデッドを倒し切るには手数が足りない。
「無理だ……こんなの勝てっこねぇ……」
全滅寸前……私と奈緒子の命も風前の灯……
彼が現れたのは……まさにそんな時だった。
絶望に心が折れかけた私は、いつの間にか迫っていたスケルトンを前にして、無防備に立ち尽くしてしまっていた。
― グシャ ―
そのスケルトンを──突然現れたジープが、盛大に轢き潰した。
『はっ?? なんで装甲車がこんな所に?!?』
当時……まだタワー内部での車輌運用ノウハウは確立されておらず、まして戦闘に耐える様な車輌を運用しているのは……自衛隊や、巨大企業にサポートされている一部の大型クランだけだった。
(自衛隊? いえ、それなら一台しか居ないのはおかしい。かと言って……大きなクランの人間が私達を助ける意味なんて??)
私達が突然の出来事に茫然としている傍らで……彼はジープの運転席からその場に降り立つと、
『おいおい……シャキっとしな』
その一言だけを残して……アンデッドの群れにゆっくりと近づいて行った。
そこからは……彼の独壇場だった。重火器類は、拠点を作る事が困難なタワーの中では継戦能力の点からエクスプローラー達には不人気の装備だったが……
彼の両手から無限に湧き出る散弾銃と銃弾はスケルトンの骨格を陶器の様に粉砕し、大口径アサルトライフルや手榴弾は、ゾンビの手足を吹き飛ばしてモゾモゾと蠢くだけの肉塊に変えた。
彼は勢いのままアンデッドを蹂躙。巨大な刀槍を振り回して迫るガシャドクロへ対戦車ロケット砲を発射。撃ち出されたサーモバリック弾頭は、スケルトンの分厚い胴鎧に風穴を開け……
その穴に投擲されたリモコン付き爆薬で……露出したスケルトンの背骨を完全に吹き飛ばしてしまった。
その結果……
多大な犠牲者を出した巨大スケルトンは……上半身と下半身が泣き別れになってジタバタするだけの置物と化したのだった……
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一連の戦闘を終えた後……
彼は上下が泣き別れになったガシャドクロの頭蓋骨に新たな爆弾を投擲しようとして……何故か投擲を止め、爆弾を自分の手から消し去ると……こちらを振り返って『おいおい……お前等はオジサンばっかり働かせて良心が傷まないのか?』と言い放った。
(いったい……今の戦闘に私達がどうやって割り込めって言うのよ!!)
私達は、きっと皆が同じ気持ちだったに違いない。だが、それはそれとして……上下泣き別れたスケルトンにとどめを刺すべく動き出す探検者達。
その様子をよそに……彼はほぼ自分が倒したガシャドクロを放置したまま自身のジープに向かって歩きだした。
彼はレイドの後衛の横を通り過ぎながら、『クソっ……あのヤロウ、あんなバケモノの処理をこっちに寄越しやがって。大赤字だぜまったく……』と、呟くと……お礼を言おうとした私達には目もくれずに、他の階層に消えて行ったのだった。
その後、この“髑髏巨人兵”をほぼ単独で討伐した功績によって、彼が日本で最初のギルドマスターに推挙されるのだが……
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「リョウコ? どうしたの? 心ここにあらずの様だけど?」
クラリス嬢は不思議そうに、私から見ても優美なアメジスト色の瞳をこちらに向けて首をかしげていた。
「ごめんなさい……ちょっと昔の事を思い出してしまって……」
「そうなの……あ、好意に甘えてリョウコと呼ばせてもらうわね? 良かったら私の事もクラリスと呼んで?」
「……ええ、分かったわクラリス。それで、今回色々と手を回して“彼”にアポを取ったみたいだけど……彼は“賢者の石”は手放さないと思うわよ?」
「ええ、確かにその打診は目的の一つだけど……私自身の目的は少し違うの。まぁそれは、相手次第って所なんだけど……」
クラリス嬢はそう言って言葉を濁した。リムジンの車窓は、既に彼の住む集落の近くを映している……
(はぁ……面倒な事にならなければいいけど。鷹山さん……恨みますよ)
今回の同行、賢者の石の譲渡交渉が不首尾に終わったからといって、引き受ける必要は無かったのだが……
『おいおい……そこを頼むよ。ほら、今度は季節限定の抹茶羊羹も奢ってやるから』
『私、どんだけ和菓子好きなんですか! そんな事じゃなくて……』
そんな軽口を叩いているうちに……なんとなく押し切られてしまったのだ。パーティも解散して長いと言うのに……私は、改めてクラリスに向き直り、
「貴方の真意は私には分からないけど……一つだけ忠告しておくわ。彼はこの国には珍しく権力や権威におもねらないタイプの人間よ。誠実に接すれば敬意を持って対応してくれるけど……敵対したり無礼な人には容赦しないタイプだから、それだけは心しておいてね」
私は、対面に座る優美な“生きる伝説”に、私が知る彼の取り扱い方法を教えた。
「……プライドを持って生きる人は好きよ」
彼女は……そう言って軽く苦笑いをすると、車窓に目を移して長閑な風景を眺め始めた……
お世話になっております鰺屋です。
この度は誠に不甲斐ない事で……読者の皆様には本当に申し訳ない限りです。
ですが……鰺屋はこのまま諦めたりはしません。必ずこの作品をグウの音も出ない様に仕上げて奴らの鼻をあかしてやります!
そして……そのために読者の皆様の応援をお願いしたいですm(_ _)m
舌の根も乾かないうちに恐縮ですが……やはりどんなアクションをするにも読者様の支持が一番大きな力になるので……
勿論作品を気に入っていだけたらで結構です!
イイね、ブックマーク、評価☆、レビュー……
本当にどんな事でも構いません!!
何卒……
応援のほどよろしくお願い致しますm(_ _)m




