間章 エリクシル狂騒曲……⑤
おまたせしましたm(_ _)m
今回で間章は終了です。皆様応援本当にありがとうございましたm(_ _)m
第二章を始めるまで少しだけお時間頂きますので悪しからず御了承下さい(笑)
開始はツイッターと活動報告の方で告知しますのでそちらも気にしていただければ嬉しいですww
そんな?? 何で亡くなった筈のお祖父様が???
わたくしは確かに滝沢某とかいう男の家に……
『ほう、ワシを前に気もそぞろとはの……その歳になっても落ち着きの無い所は治っておらんのぉ』
『嫌だわ……お祖父様。わたくしもそれなりの歳でございます。お祖父様のお膝に乗っていた頃のわたくしではありませんわ』
わたくしの前に座るお祖父様……そんな筈は無いのに……どうしても目の前に居るお祖父様は夢や幻には見えない?!
『ふふ、そんなに不思議か?』
わたくしの心を見透かした?!
『百合江よ……人間歳を重ねるとな……大事な人間がひょっこり現れる事などそう珍しい事でもないのだよ』
そんな馬鹿な……でも?!
『そっ、そうかも知れませんわね……でもどうしてまた今になって……』
『さてそれよ……実はワシも……己の事などさっぱり分からんのよ。まぁの……本当は現世も幽世も箍が緩めば幻と変わらんのかも知れんがなぁ……うん? どうした百合江よ、おかしな顔をしとるぞ?』
ああ……この喋りかた。それに現世と幽世のお話……間違いない。お祖父様だわ! わたくし瞳に……熱い物が溢れ頬を伝う感触が伝わってくる。
『とうした……百合江の心がワシを呼んだのだぞ? 遠慮はいらんぞ百合江、ワシに聞いて欲しい事があるのではないか?』
『お祖父様、本当はわたくし……』
ああ……この世と、あの世も含めて唯一人わたくしを無償で愛でてくださったお祖父様……そこに居るはずのない大切な人に……わたくしは……
――――――――――
「えげつないな……身内の姿を利用するとか」
俺は眼前に現れたジイさんに、赤裸々に自分の境遇を語るオバチャンをモニター越しに見ていた。
「この程度の事で驚かれては困りますな。こやつの“自分語り”には出て来てはおりませんが……PDが集めた情報ではこの小娘、数多の人間に大小様々な悪さをしておりますれば……」
「確かに……このオバチャンここで聞いてるだけでも、自分の事を棚にあげて好き放題言ってるっすね」
俺の隣でオバチャンのモニターをしていた莉子ちゃんも渋い顔をしている。
「だからって洗脳しちまって良いって訳じゃ……」
俺の言葉に利平爺さんは……
「ふむ……若、試みに一つ問いますが……“洗脳”とは具体的にどんなものだとお思いですかな?」
「えっ……そりゃあ……あれだろ? 今までの考え方とか信条とか、そういうのをぶっ壊して新しい考えを吹き込むとかなんとか」
俺の答えに軽く頷く利平爺さん……
「それも間違いでは御座いませんな。しかし……人間の精神とは、あれでいてなかなかに強靭なものです。その証拠に……人は自分の考えを理屈で覆されても即座に相手の考えを受け入れたりはせんでしょう? だからこそ極限状態に追い込むなり、下世話な手管になれば薬を使う様な輩もおりますな……しかし、無理に捻じ曲げた心というのは、それこそ簡単に砕けてしまうものです」
おいおい……大丈夫なのか? 俺としてはちょっと脅かして俺達に余計なちょっかいを掛けない様になれば良かったんだが?
「ククッ、心配召されますな若。儂は何もこの小娘を壊してしまおうなどとは思うとりません。昔……儂の知る最高の情報将校がこんな事を申しておりました。『洗脳? そんな物を持て囃すのは人の心を知らぬ愚か者だけだよ。人はね……自分が気付いたと思った事しか受け入れたりしないのさ。だからこそ……僕らは相手の話を聞き、思索へ促し、肯定しつつ疑わせ……そして説得するんだよ。そうして気付いた事を……人はけして疑わないんだ』 と」
…………爺さんの話を聞いた俺と莉子ちゃんは絶句してしまう。それってただの洗脳よりもっとヤバいんじゃ?
「ククッ、御心配召されますな若。先程も言ったとおり壊すつもりはありません。ほんの少し若に無礼を働いた報いをくれてやるだけですわい」
利平爺さん……あんた自分の事をただの整備兵だって言ってたよな? 莉子ちゃんに視線を移すと莉子ちゃんは無言で首を振っている……莉子ちゃんもこんな利平爺さんは知らない様だ。
「ああっと……まあやりすぎない様にな」
俺はそれ以上詳しく聞くのを止めた。自分が始めた事とはいえ……ただでさえ世界中からアクセスされるサイトの管理や、接触をはかってくる人間の選別など、他にもしなければならないことが押し寄せて来ているのだ。オバチャンの説得くらい人に任せてもバチは当たるまい……当たらないよな?
―――――――――――
その日遅く……俺は探検者協会の理事を名乗るオバチャンに、形だけは非の打ち所がない丁重さで……
「そういう事ですので……申し訳ありませんが“賢者の石”をお譲りする事は出来ません。今後、ギルドからの勧誘には同じくお伝え頂ければ幸いです」
と伝えた。そして……変化は劇的だった。
『勿論ですわ!! 秋人様の重大かつ崇高な目的に邁進する貴重なお時間を……無理・無駄・無為に日々を生きる凡俗共が邪魔をするなど!! まさしく万死に値する大罪!! 不肖この百合江が……』
そこまで言った時、横から彼女の口を抑えて前に進み出てきたのは、あの幸の薄そうな秘書さんだっ……た? あれ? この人……あの秘書さんだよな?
『マスター滝沢……失礼しました。滝沢様、本日は貴重なお時間を割いていただき、誠にありがとうございました。御安心下さい、葉山理事が滝沢様にご迷惑をおかけすることは……金輪際御座いませんので……本日は長々お邪魔して申し訳御座いませんでした。それでは……今日はお暇させていただきます』
そう言った秘書さん(?)はオバチャンを車の後部座席に蹴り込んで自らは運転席に乗り込むと……俺ですら“そんな開け方で大丈夫なのか?”と思わせるアクセルワークで、来た時と同じメンバーと共に闇に沈んだ山道を引き返して行った………
『PD……お前……あの秘書さんに何をした?』
『……御本人がどうも今の職場環境に不満を抱いている様でしたので……』
『PD??』
『少し説得しただけですよ。ご自身に“探検者”としての適性がある事や、それがとても得難い資質だと……もし今後、彼を何処かの“タワー”で見かける事があったとしたら……もしかしたら凄腕の“探検者”として活躍されているかも知れませんね』
『おい……お前まで“説得”なんて言い出すのかよ……』
俺の頭には……一瞬“我慢してオバチャンの相手をしていた方が良かったんじゃ……”なんて事が浮かんだが……俺は慌ててその考えを打ち消して闇に沈んだ仮称“滝沢家タワー”の門をくぐった。
――――――――――
後日、涼子を経由して“国”から賢者の石の譲渡、または研究への協力要請を打診されたのだが……この日以降、日本の探検者協会の理事会が、俺に直接コンタクトを取る事は二度と無かった。
実際は統括支部長の鷹山氏や、佐渡ヶ島ギルドの神山さん達には……涼子を経由して世話になったり、こちらから力を貸したりする関係を継続する事になるのだが……
それは語るには、また別の機会があるだろう。
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蛇足ですが……どうも後書きには、作者の他の作品を宣伝してもいいみたいなので、お目汚しですが乗せておきます! お時間あれば是非……m(_ _)m
トランスファー “空間とか異次元とかってそんなに簡単なんですか?”
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マシニングオラクル “AIが神を『学習』した世界”
https://ncode.syosetu.com/n5138fv/




