間章 オリハルコンの秘密……④
なんと昨日に引き続き……
PV200万アクセス突破記念で二話同時に更新してます(笑)
この話は二話目ですのでお間違いなきよう……
よろしくお願いたしますm(_ _)m
「よおし、お前等の気持ちはよく分かった……俺が全員泣いて連れて帰って欲しくなるようにしてやる!」
九頭竜はこめかみに青筋を浮かび上がらせ、愛用の杖……栄光の錫杖をこちらに向けた。修行僧が持っている錫杖型の杖の先端には、赤い球体が嵌め込まれており、スキルを強烈に増幅するその球体は……嘘か真か、サラマンダーの眼球だと噂されている。
「伽羅羽……ちょっとコイツラに灸をすえてやるから……邪魔すんなよ!」
「……いいのですか清太郎? ただでは済みませんよ?」
全メンバー9000人を誇るクラン“東京ソフトセイバーズ”……そのセイバーズθのリーダーが伊達ではない事ぐらい……俺だって良く知っている。
「そうかもな……だけど伽羅羽さん。あんたからも俺の後ろにある岩くらい見えてるだろう? もう一度思い出してくれ……俺の持ってるのがオリジナルのデュランダルって事をさ」
俺の背後にある真っ二つの巨岩……こいつをハッタリに使う。本当はこのまま戦闘になったりしたら……チャージもしてないのに彼女達を止められる筈がない。
俺のハッタリに伽羅羽が僅かに眉を顰める……九頭竜は既に得意の火炎系スキルの準備を終えてこちらを睨め付ける。一触即発の空気の中での無言の駆け引き……
「あんたなら分かる筈だよな?……後ろの岩がどうやって出来たのか? このままデュランダルだけをもって引いてくれるなら……この聖剣デュランダルの本当の力の引き出し方も教える。そうだな……脱退届けに詳しく書いて送るよ」
俺の提案に伽羅羽は僅かに逡巡する。そして、
「信用していいのでしょうね?」
「伽羅羽!! そんな必要はねぇ!! 引きずって帰りゃ済む話だ!!!」
伽羅羽は……無言で九頭竜の一歩前に出て手で彼を制す……刹那二人の視線が交錯し……
「………〜〜チィッッ!……」
盛大な舌打ちと共に、九頭竜がスタッフを下ろした……
「ああ……勿論だ。今回の事は俺達が原因だからな。それに……俺達も小佐野さんに受けた恩まで忘れたわけじゃない」
俺のセリフに無言で頷く伽羅羽……俺はデュランダルを鞘に戻してそのまま伽羅羽に投げ渡した。
伽羅羽は流れる様にデュランダルを受け取り……そのまま後ろを向いてこの場から去って行った。九頭竜も……地面に唾を吐きつけ俺達を睨んでから伽羅羽の後に続き……
「……行ったか?」
後ろから慎太郎が確認する。
「……ああ、もう気配は去ったと思う」
そう言いながら後ろを振り向くと……三人がその場にヘタリこんでいた。正直に言うと俺もその場に倒れてしまいたいくらいだ。彼等が現れてから……長く見積もっても三分程度だろうか……だが、俺達が感じている疲労感はとてもそんなものではなかった。
「あれが……9000人の頂点か……」
俺は一番近くにいた慎太郎に手を貸して立ち上がらせる。慎太郎は立ち上がった瞬間……
「このバカヤロウ!!! こんな所で脱退なんか言い出しやがって……お前はいつも無計画すぎるんだよ!!」
盛大に慎太郎に怒鳴られてしまった。横目には頷く二人の姿……
「すまねぇ……」
俺は他に何も言えず……三人に謝罪する事しか出来なかった。
――――――――――
その後……俺たちは吉見さん達の元に戻り、巨人の解体作業を手伝う事にした。実際、周囲には新たなゴーレムは殆ど姿を見せず、同行してきたメンバーの殆どは解体に注力する事が出来た。
「ふう……とんでもないな、こいつは……」
負傷した身体をおして作業の指揮をとる吉見さん。リーダーにありがちな横柄さも無く、気さくな人柄もあいまって彼の人望は高かった。実際、これだけの数のパーティがレイドに参加してくれたのは、偏に彼の人望のおかげだ。
吉見さんの指揮と、錬金や解体に適したスキル持ちの尽力もあり、あれだけ俺たちを苦しめたオリハルコンゴーレムは、昼過ぎにはバラバラにされて輸送の途に付く事が出来た。
俺たちは途中何度かの休憩を挟みながら、今は三階層の安全帯で最後の休憩を取っていた。
「吉見さん……お疲れ様です」
一人みんなの輪から離れ、トラックの運転席でタバコをふかす吉見さん。俺は缶コーヒーを持っていって声を掛けた。
「おう、清太郎……どうした? なんかあったか?」
「………?!」
吉見さんは、俺の様子がいつもと違うと一目で気付いたらしい……なんて眼力だ。
「………良く分かりましたね。俺……そんなに分かり易いっすかね?」
吉見さんは無言で助手席を指差し、俺に隣に乗るように促した。俺が助手席に座って缶コーヒーを差し出すと、
「クククッ……バカ言うなよ。そんなの俺に分かるわけねぇだろ。上の階層からこっち、お前の腰から自慢の逸品が消えてるからよ……カマ掛けてみただけさ」
缶コーヒーを受け取りながら、にっこり笑う吉見さん……
(かなわないな……)
「実は……」
俺は九階層での出来事を、デュランダルの作動原理の一件を除いて聞いて貰った。黙って聞いていた吉見さんは、俺の話を全て聞き終えると……
「おう……そうか。良かったじゃねえか」
「えっ?」
吉見さんは缶コーヒーをトラックのダッシュボードに置くと、新しいタバコに火を付けて………
「ふぅー……だから良かったじゃねぇか。誰も死なずに済んでよ。お前等は、一昨日からこっち、いつ死んでもおかしかねぇピンチの連続だったんだぜ? それがお前……元々お前の物でもねぇ剣一本手放して“厄が落ちた”と思えば……こんな重畳なこたぁねえよ」
俺は吉見さんの言い分に驚いた。
「勘違いすんなよ。お前等はデュランダルなんぞ比べもんになんねぇ武器をまだ持ってるんだぜ? 分かんねぇか? ……“若さだよ”……“時間”と言い換えてもいい。お前等は、俺達がもう取り戻す事が出来ねぇ若い時間をまだタップリと持ってんだ」
俺は吉見さんがタバコの煙を吐き出しながら話してくれた事に衝撃を受けた……若さ……経験が足らず、力も足りず、知恵も足らない若造の自分が、唯一持っている武器……
「お前等が……これからもタワーに挑戦するつもりなら、デュランダルなんか目じゃねえアイテムが見つかるかも知れねえ、その時間を鍛錬に費やせば、相手がデュランダルを持っていようが問題にならねえほど強くなれるかも知れねぇ……いいか? オッサンの時間と若造の時間は違うんだ。それを肝に銘じて……これからの事を仲間とようく相談しな。オッサンの俺に言えるのはそんだけだ」
「………はい。ありがとうございました」
俺は……吉見さんに礼を言ってトラックを離れた。
―――――――――
その後……佐渡ヶ島タワーはあの人によって攻略され、全世界に林立する“タワー”の正体が暴露された。
世界は“タワー攻略時代”へと大きく流れを変え……俺達も、その流れに大きく関わっていく事になる……
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蛇足ですが……どうも後書きには、作者の他の作品を宣伝してもいいみたいなので、お目汚しですが乗せておきます! お時間あれば是非……m(_ _)m
トランスファー “空間とか異次元とかってそんなに簡単なんですか?”
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マシニングオラクル “AIが神を『学習』した世界”
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