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【累計700万PV突破!】タワーオブチューン “人類で唯一人ダンジョンを攻略した男” ☆第10回ネット小説大賞『コミックシナリオ賞』を受賞!!  作者: 鰺屋華袋
第一章 塔の破壊、承り〼

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全知覚情報共有最大並列励起

いつも本作を応援してくれている皆様……ありがとうございますm(_ _)m


とうとう本作の総合PVが150万アクセスを突破しましたm(_ _)m


更にブックマークは6000を超え、相互評価ポイントも24000ptを突破……


皆様の応援で勢いが付き過ぎてしまい、第一部の〆が50話をすこし超えそうです(^~^;)


長々と申し訳ございませんが……どうぞお付き合いの程よろしくお願いいたしますm(_ _)m

 ピクリともしなかったティラノもどきの瞳が“ギョロ”と俺の方に向いた……


 今の今まで……なんの生気も感じさせなかった瞳孔が縦に引き絞られ、透明のまぶたの様な物が横に引かれて瞳の上から消える。俺の背筋に強烈な悪寒が走り……


「逃げろ莉子!!」


 俺はヤツの足元に居た莉子に向かって叫ぶ。同時に眼前に迫るティラノもどきの頭突きをハンマーでガード……だが、如何せんウェイトが違い過ぎる。半ば強制的に後ろに飛ばされるが……用心に残していた筋力増幅のおかげでかろうじて着地には成功。


 だが……間一髪間に合ったガードの隙間から、強靭なティラノの足に跳ね飛ばされる莉子の姿が俺の視界に飛び込んで……


「莉子!!」


 そのまま地面に向かって放物線を描く莉子を……俺は絶望的な気分で知覚する。


(間に合わん!!)


 俺からはどうやっても間に合わないタイミング……その刹那の瞬間、涼子が俺の目にも霞む程のスピードで莉子を抱き留めた!


「【防壁(プロテクトウォール)】!!」


 莉子を抱きとめた涼子が……おそらく彼女の持つスキルを発動し、莉子と環奈を包む様に半透明のドームが形成される。


「滝沢君!! こっちは暫く保つ!! 莉子ちゃんを処置するからソイツを引き付けて!!」


「頼む!!!!」


 俺は、涼子が莉子を抱き留めた瞬間に、PDにエネルギー転換増幅を()()発動する様に指示していた。


『了解!』


 PDの短い返答と共に、体感出来る全ての感覚が【最大並列励起状態】に置き換わる……


 眼前の爬虫類ヤロウは、デカい身体を揺すって起き上がり……俺と涼子達を見比べる。ヤロウ……どっちが喰い易いか品定めしてやがるのか? 


 俺はキョロキョロと首を振るヤロウの気を引く為に、自分の周りの床にハンマー(破壊王)を叩きつけた。


 ― ガキン! ガキン! ガキン! ー


 連続する鈍器の衝突音にヤロウが警戒感を強める。とりあえずは莉子達からこちらに注意を引く事には成功するが……


『PD! ヤロウには一酸化炭素が効いて無いのか?』


『不明です。詳細を確認する為に知覚共有を申請します』


『全て許可する!!! 全力で奴の弱点をサーチしろ!!』


『了解……全知覚情報を共有、同時に運動能力の最適化を実行します』


 PDの宣言と共に、俺の知覚がPDの制御下で共有されていく。一瞬……俺の全ての神経網に、得体の知れない()()()が絡み付く不快感が襲った。


『感覚野への仮想バイパス形成を完了。奴の身体情報から弱点をサーチ……来ます! 回避を!!』


 俺が振り回していたハンマーを止めた途端に、ヤロウはこちらに向かって突っ込んで来る。動き自体は捕食動物(プレデター)特有のしなやかで素早い動きだが、限界まで感覚が鋭敏化している俺には知覚は可能だ。だが……


「ヤロウ……でか過ぎるぞ」


 ヤロウのスケールがでか過ぎる。一つ一つの動作がこうデカいと、回避や接触のタイミングを計るのすら困難だ。俺は必然的にマージンをとって躱さざるを得ない。


『視覚情報から抜粋、ヤツは事前予測した通り獣脚類の特徴を備えており、呼吸器の構造を考えれば、今も()()()()()()()()()()()()()()()()()()


『受けててこれか?!』


 俺は、ヤロウが振り回す顎と尻尾を躱すのがやっとで攻撃に移れずにいる。


『ヤツが計算どおりに被害を受けて無いのは“タワー”が【ドラゴン】を形成する過程で爬虫類……おそらくワニ目の特徴を取り込んだせいだと推測されます』


 俺はぎりぎりでヤロウの攻撃を躱しながら、少しずつ涼子達からヤロウを引き離す様に立ち回っていく。正直、感覚増幅が無ければPDの言葉もろくに聞けなかった事だろう。ただな……聞こえるからって余裕があるわけじゃないんだよ!!


『簡潔に!!』


『ヤツは呼吸をしていません。血液を気嚢(肺)に循環させずバイパスさせて体循環のみで行動してると推測されます』


 ヤロウ……息を止めて我慢してたってのか? 


『……分かった!! 現在の一酸化炭素の濃度は?』


『既に人間ならば耐えられる濃度まで低下していますが……高効率に進化した獣脚類の気嚢(肺)には、まだ危険な濃度です』


『それだけ分かれば充分! ヤツが()()()()()()()()()()()()()()!!』


――――――――――


「逃げろ莉子!!」


 滝沢さんの突然の大声……


 恥ずかしいけど……私はすっかり最後のフロアボス(ドラゴンなんて呼ばれてたけど……本当は恐竜だったみたいだ)が死んだものと思いこんでいた。


 石の床に横たわった……とてつもなく大きな爬虫類。私はあまり爬虫類は好きでは無いので、死んだボスには近づかなかった。結果的にそれが私と莉子ちゃんの命運を分けた。


 滝沢さんが叫んだのとほぼ同時に……莉子ちゃんは、鋭利な爪を備えた巨大な脚を躱せないと判断したのだろう……咄嗟に抱えていたボストンバッグを迫る脚に叩き付け、そのバッグが挟まった状態で跳ね飛ばされた。


「あっ!!」


 私の目には、空中を飛ぶ莉子ちゃんがスローモーションの様に見えた……が、私の思考もスローモーションが掛かった様に何も出来ない。こうなると、見えているのが余計に煩わしい。眼前の事実に思考が追い付かず“莉子ちゃんの側に行く”と、決める事さえ思考のキャパが食われて上手くいかない。


 私は莉子ちゃんが床に打ちつけられる姿を幻視して思わず目をそら……しそうになった時。今まで自分の側に立っていた筈の涼子さんが、莉子ちゃんが落ちてくる所へ間一髪滑り込んで、その身体を……抱きとめた!?


 あんな細い身体で飛んでくる莉子ちゃんを抱きとめるなんて……


「環奈ちゃん!! こっちへ!!」


「ハッ……ハイ!!」 


 色々驚いて止まってしまった思考を、ムリヤリ動かして涼子の側まで走る。涼子の腕の中の莉子ちゃんは……爪の攻撃を完全には防げなかったのか、上着を真っ赤に染めてぐったりしている。


「【防壁(プロテクトウォール)】!!」


 私が(そば)まで来た事を確認した涼子さんは、莉子ちゃんを抱えたままスキルを発動した。これ多分……防御のスキルの中でも相当難しいやつだ。


「環奈ちゃんお願い! ここを押さえて!」


 オロオロしっぱなしの私が何も出来ないでいるうちに……涼子さんは、ガスマスクを投げ捨て、寝かせた莉子ちゃんの右肩から脇にかけて走る傷を、ポーチから出した医療用シートを被せて圧迫していた。


「はい!!」


 私は莉子ちゃんの上半身を染める血を見て……彼女が本当に()()()に立っていると理解した。知り合って短いながらとても良くしてくれた莉子ちゃんが死ぬかも知れない……いや!! 違う!!


 ここにはA級エクスプローラーの涼子さんも居る! それに……滝沢さんが!! あの滝沢さんが居るんだ!! きっと……絶対なんとかしてくれる!!


「そう……上手いわ。そのまま強くシートを押さえて。今からポーション使うから」


 そう言って涼子は腰のポーチからアンプル型の容器を取り出した。樹脂製容器のキャップ部分を、勢い良く折り取った涼子は……ガーゼを持つ私の手を持って一瞬傷を露出させ、アンプルの中身を勢い良く傷に流しこんだ。


「ぐぅっっ!!」 


 痛みが走ったのか……莉子ちゃんが呻き声をあげる。涼子は、シートを持ったままの私の手をもう一度傷にあてがい、


「そのまま押さえてて!!」


 と指示する。私は、ポーションがかけられた傷を、そのまま圧迫して止血を続けた。


 ポーションが効果を発揮したのか目に見えて出血量が減っていく。だが……涼子さんの顔色は冴えない。


「いけない……傷が深すぎる」


 そう呟いた涼子さんは……チラッと滝沢さんの方に視線をむけた。


 その時の滝沢さんは……オリハルコンゴーレムと戦った時の様に、凄い勢いで消えたり現れたりしながら、巨大な恐竜を引き付けていて……


「さすがね……」


 最後のフロアボスを翻弄する滝沢さんの姿を見て……涼子さんはそれだけ呟くと、アンプルに残っていたポーションを勢い良く口に含んだ。


もし続きが気になると思っていただけましたなら……是非ブックマークや下にある☆☆☆☆☆のクリックをお願いいたしますm(_ _)m


少しだけ蛇足を……


ティラノサウルスが生息していた白亜紀ですが………一部の古生物研究の成果から、地球全体の二酸化炭素濃度が現在の5倍近かったと推測されています。当然平均温度は今よりかなり高く……植物は旺盛に繁茂していたそうです。(それらが現在の石油や石炭等になっているそうで……)


 更に植物を主食とする草食恐竜も栄え、それを捕食する肉食恐竜も大型化の一途をたどるのですが……二酸化炭素濃度が今よりべらぼうに高いのに彼らはどうやってその巨大な身体を維持していたのか?


 その答えとして有力視されているのが、現在の鳥類にも見られる“気嚢”を使った高効率の循環器システムです。詳しい事は省きますが、鳥類が酸素が極端に薄い高空でも活動出来るのを見ればご納得頂けるかと(笑)


 更にもう一つ……このシステム、作中にあった一酸化炭素中毒等の中毒性ガスには逆に弱いという特徴があります。


 昔、炭鉱にカナリアなんかを連れて入ってたのはこのシステムを逆手にとった警報装置だった訳です(非道ではありますが(-_-;))


 少し長くなってしまいましたm(_ _)m


 ティラノもどき君が何故耐えられたのかは作中にて軽く語られていますが……詳しい説明は次回の後書きにでも書きますので……


 という事(笑)で、次回もよろしくお願いいたしますm(_ _)m




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― 新着の感想 ―
[一言] 薬液を直接体内に打ち込んできた歴史の有る人類が「ポーションインジェクター」の発想に行き着かないのが不思議! まあ、そこら辺の意識のブレイクスルーは主人公がコレから先でやってくれそうだけど。 …
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