田舎道じゃイノシシやシカが飛び出して来たらアクセルを踏めと教えられるぞ?
少し更新遅くなってしまいましたm(_ _)m
先程見たらPVがもう130万アクセスに届こうとしてました……
……本当に遅くなってごめんなさい(_ _;)
「俺の【鑑定】では……あの滝沢って男、何のスキルも持っていないと出てるんだよ。あの男は……間違い無く何もスキルなんか持っちゃいないんだ」
確信を込めた声で慎太郎が断言する。だが、それはあり得ない。もし慎太郎の言葉が正しいとするなら……タワーの中で必死に足掻いてた俺達は……皆は……
「なぁ、俺は直接見てない分多少冷静なんだと思うんだが……多分、これは今の俺達に判断出来る様な事じゃないんじゃないか?」
俺は隆太の言葉にハッとした。
「俺達ってさ……小学生の頃に突然タワーが世界中に出来てさ、驚いたのは間違いないんだけど……変にワクワクしなかったか? ほら何て言うか……ゲームでしかあり得なかった様な世界が突然手の届く所に現れたっていうか……だけど、タワーの中って現実離れしてるけど……当然コンティニューはないじゃんか? 俺達ちょっとタワーが何なのかを考え直してみるべきじゃないか?」
そう呟いた隆太の言葉に……俺達は改めて考えさせられる事になった。暫くの静寂、だがどう考えれば良いのか、思考にとっかかりが見つからず俺は愕然とする。ほんの暫くの静寂だったが……おもむろに慎太郎が、
「確かに……今は隆太の言うとおり、少し立ち止まってみる必要があると思う。少なくとも……あの滝沢って男が、この“佐渡ヶ島タワー”で何をするのか……それを見届けるまではな」
――――――――――
【佐渡ヶ島タワー攻略13時間前】
― Sun 06:45 八階層出口 ―
八階層出口を出発した俺達は、吉見や公知青年達にオリハルコンゴーレムの搬送を託し、一路九階層出口があると考えられる“古代遺跡フィールド”へ向かった。
九階層には、オリハルコンゴーレムが象徴するように、多種のゴーレムに分類されるモンスター(どう見ても自律思考ロボットに見える物から、何故動いているか皆目分からない彷徨う鎧まで)が、未だ主の居なくなった階層を徘徊している。
俺達は例の如く環奈の“気配察知”を頼りに、殆どのモンスターを避けて進んでいたが……ここに来て進路上の避けて通れない所に徘徊するモンスターが現れた。
俺は利平爺さんが高機動車に装備してくれた高張力鋼管製グリルガードで、泥と木のゴーレム跳ね飛ばし、倒れたゴーレム達を容赦なく大径ブロックタイヤで轢いてそのまま進んだ。
『鼎さん、進路に幾らか障害物が出来たから対応頼む』
『了解……って、あなた車でモンスターを撥ねたり轢いたりするのにまったく躊躇がないわね……』
『……走ってる車に傷が付くのは仕方ないからな。気にしない事にしてる』
「『………』」
何故かオープンチャンネルの全員が絶句する。なんでだ? 田舎道じゃイノシシやシカが飛び出して来たらアクセルを踏めと教えられるぞ? 莉子ちゃんなんかは利一さんにそう教わってないのか?
俺は、みんなが“触れずに流すのが優しさ”的な空気を出すのが腑に落ちなかったが……車の傷と同じく気にしない事にした。
そうやって暫く進むと……起動前のオリハルコンゴーレムが居る場所に到着する。聞いていた話では、手形の付いた大きな石碑があってその石碑に手を当てると、オリハルコンゴーレムが起動する仕掛けになっていたらしいんだが……
そこには既にオリハルコンゴーレムは無く、ポツンと残った石碑が円形の広場に残っているのみだった。俺達は石碑の前に高機動車を停めて全員で外に出る。追走していた鼎も、停車したバイクから降りて、俺達は全員で石碑の前に集まった。
オリハルコンゴーレムの石碑には、まったく理解出来ないが文字らしき紋様が刻まれており、その下にある手の形に彫刻された窪みは、内側からぼんやり光っている。
「これ……触るとオリハルコンゴーレムが起動するスイッチだったらしいんだが……どう思う? やっぱりこれがゲートのスイッチか?」
俺は全員に意見を求める。というのも、ここまで1st〜2nd間のスロープ以外は、入口と同じ様な前方の見えないアーチ方のゲートで(理屈はさっぱりだが)通り抜けると次の階層になる方式だった。それが……ここに来てこのタイプの装置に変わってる意味はなんだ?
「滝沢君……多分だけど、コレ転送型のゲートだと思う」
俺の疑問に涼子がおずおずと答える。
「私にも確信は無いんだけど……富士の十二階層にもこんなタイプのゲートが有るのよ。ただ……」
「………ただ?」
俺は涼子が言いあぐねているのを見て嫌な予感を憶えた。
「そこのゲートはトラップでね……スイッチのあった広場に居たものは全員が別の部屋、所謂モンスターボックスってやつに転送されたのよ。そこにはモンスターが大量に待ち構えていて……そいつ等を全部仕留めないと外に出られなかったらしいのよね……」
なるほど……涼子が躊躇う理由が分かった。だが、周囲を見廻しても廃墟になった遺跡らしき物があるだけで、今迄のような“ゲート”らしき物はない。今はこの石碑を試すしか無さそうだ。そんな風に考えて居た時、俺のイヤホンにPDから通信が入った。
『タキザワ、私の端末を取り出して石碑の紋様をカメラで撮影して下さい。解読出来るかもしれません』
俺は黙って端末を取り出しさも当然の如く石碑を撮影する。莉子ちゃん以外の二人は、俺が突然スマホで写真を撮ったのを見て、どうした事かと思っているみたいだが……俺は無言で端末を操作する振りをした。
『解析終了。これは間違いなく十階層への転送型ゲートです。転送先にはモンスターは居ないようですが、鼎氏が言うとおり移動は一方通行の様です』
俺はイヤホンから聞こえるPDの解析結果を聞き、見た目にはさもスマホを操作したかの様に装って、
「このスマホには俺が色々とアプリを仕込んでおいたんだが……“暗号解析アプリ”によると、どうもこれが十階層へのゲートで間違いないみたいだ。転送先にはモンスターは居ないみたいだがゲートは鼎さんが言うように一方通行らしい」
……俺は、苦しい言い訳をして二人に説明する。環奈は無邪気に俺の言う事を信じてくれた様だが……涼子はジト目でこっちを見たまま無言だ。
「……まあ仕方ないわね。今はそういう事にしといてあげるわ」
涼子は溜息と共にそう呟いた。とりあえず態度を保留してくれたらしい……その様子を見ていた莉子ちゃんは、片手をこめかみの辺りに手をあてて頭痛を堪える様な顔をしていた……
「………済まない。みんな聞いてくれ……この先は十階層、この佐渡ヶ島タワーの最終階層だ。昨晩も軽く話したが、俺は十階層の奥に居るドラゴンを仕留める自信も算段もある。ただ……一応皆に最終確認をしたい。この九階層で見た様に不測の事態は十分に考えられる。だから……莉子ちゃんも含めて、ここに残って貰っても構わない。心配しなくても、俺が3日を過ぎても戻らない時には、吉見さん達に迎えに来てもらえる様に話はつけてある。良く考えてみてくれ」
俺は一息に言いたい事伝え、全員の意思確認をする。俺以外の三人は……それぞれ顔を見合わせて途端に笑い始めた?!
「兄さん……今更っすよ。みんなとっくにその気になってるんすから……ほら、さっさとゲートを作動させて下さいっす」
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