― キンッ ―
ありがたい事に……
ローファンタジーランキング
日間1位
週間1位
月間8位
四半期16位
と好調を保っておりますm(_ _)m
もう少し……おそらく五十話前後くらいで第一章を〆る事が出来るかと思いますので引き続き応援よろしくおねがいしますm(_ _)m
俺が謎の女と共に遁走して行く先には……見事なフォームで何かの球体を振り回している男が居た。まるで小型の竜巻かと見紛う勢いで男が放ったボーリング玉くらいの球体を、俺は反射的に目で追う。球体は人間が投擲したとは思えないスピードで飛翔し、俺達を追うゴーレムの頭に直撃する。
「なっ?! なんだなんだよアレは?!」
球体はオリハルコンゴーレムの頭に激突した瞬間……激しい火花を撒き散らし、ゴーレムの頭を包み込んだ。堪らずたたらを踏んだゴーレムは不器用に両手で炎を消そうと藻掻くが……炎は益々勢いを増し、ゴーレムの頭は炙り過ぎた中華鍋の如く真っ赤に変わっていった。
「凄い、いや……」
オリハルコンゴーレムがジタバタしてる隙に距離を引き離すバイク。俺はこのままでは男が危ないと思い、タンデムシートから大声で叫んだ。
「ダメだ。やつはフレア関係のスキルを何発喰らってもびくともしなかった」
女は肩越しにチラッと俺を振り返るとバイザーを上げ、
「彼なら大丈夫、そのくらいじゃ壊れないって分かってるからね。君は大人しく後に乗ってなさい。今君の仲間と合流するわ」
そう言った女は、タンデムとは思えないハンドル捌きで少し前を走る大型車両と併走し、男とオリハルコンゴーレムから離れて草原の端に停まった。
「清太郎!!」
俺はバイクから飛び降りた途端、大型車両のドアから飛び出してきた千歳に抱きつかれてしまった。
「バカ!! 無茶すんなよ……死んじゃうかと思ったじゃないか!!」
俺は千歳の振る舞いに何も言えず、続いて車から降りてきた慎太郎に視線で助けを求める。慎太郎は“我関せず”と言わんばかりに、
「隆太はお前のおかげで問題ない。ポーションも効いているし……」
慎太郎はそれぞれのマシンから降りて集まった三人の女性達を見て、
「なんとか救援も送ってもらえた様だからな……ありがとうございます。おかげで仲間を失わずに済みました」
「気にしないで。あなた達を助け……」
俺をバイクで逃してくれた女が慎太郎の感謝の言葉に返事をしている時、ゴーレムの居る方向から連続して大きく大地が振動する。俺は千歳に抱きつかれたまま、彼女達の仲間であろう男に視線を向けた。
そこには……今迄よりもスピードを上げ、頭を真っ赤にしたゴーレムが男に向かって突撃を始めていた。その先には……今度は黒い球体が付いたワイヤーらしき物を頭上で振り回す男が、何かを吠えてオリハルコンゴーレムに手招きをしている?! 俺は焦って女達に、
「おい、アレはゴーレムが自分の質量と頑丈さを利用した体当たりだ!! 俺達が率いたレイドの戦闘車両が、何台もアレで大破させられているんだぞ。あんなちゃちな分銅なんかじゃとても止めるのは無理だ!?!」
それを聞いた三人は口々に男の名を呼んだ様に見えた……が、三人は何事かに頷いてそのまま男を見続けたまま動こうとしなかった。
俺は本当に事態が分かっているのか不安になったが……ちょうどその時、メガネを掛けた女だけがこっちに振り向いて、
「それくらい兄さんは分かってるっすよ。まあ黙って見てるっす。万が一兄さんでもヤバかったら……みんなでトンズラするだけっすから心配無用っす!!」
そう言った女はゴーレムに一人で対峙する男の方を向いて、残りの二人と同じく成り行きを見つめる体勢に戻ってしまった。
そのまま突進するゴーレムから後退る男は、ギリギリまで引き付けたゴーレムの足元に分銅を投げつけてそのまま横っ飛びで体当たりを躱す。足元に絡み付いた分銅と自身の慣性で盛大に転倒したゴーレムは湖畔に突っ込だ。
赤熱化した頭部から爆発的に上がる水蒸気……それを呆気に取られて見ていた俺は、いつの間にか隣に立っていた慎太郎が、
「まさか……そんな方法で?!」
と、呟くのを確かに聞いた。俺には慎太郎が何に気付いたのかとんと分からなかったが……ゴーレムは足元に絡みついたワイヤーを分銅ごと引き千切ると、片膝を湖畔に掛けて身体引き上げる。
俺には、男が何をしたいのかまったく分からなかった。彼がした事は、せっかく爆炎で赤熱化した頭をわざと冷ましてしまった様にしか見えなかったからだ。湖畔から起き上がったオリハルコンゴーレムは黒く焦げついて幾筋かの水蒸気を上げつつも……ダメージなど皆無に見える。
「おい、あれはいったい……」
俺は隣で一心不乱に戦況を見つめる慎太郎に向かって説明を求めようとしたが、慎太郎は男とゴーレムから視線を外さずに、
「今は黙って見てる方がいい。気を抜いたら一瞬で終わるかもしれん」
と言ってまるで取り合ってくれなかった。
完全に立ち上がったゴーレムを見つめる男の手にはゴーレムが藻掻いているうちに手にした棒状の武器らしきもの……おそらく大型のハンマーが握られている。
「本気か?! あんなもんじゃオリハルコンに傷跡すらつかないぞ……」
俺がそう呟いた瞬間……男は立ち上がったゴーレムに向かって走りだした。俺は流石に無謀だと考え……加勢に飛び出そうとするが、その肩を慎太郎が無言で掴む。俺が仕方なく視線を戻すと、肉迫した男へ巨大な拳を振り落とすオリハルコンゴーレム。
あれではいくらオリハルコンゴーレムが鈍重でも、とても避けきれない……筈だった。だが、俺の脳が幻視した光景は訪れず……男はゴーレムの拳の先から、忽然と消え去ってしまった。
ゴーレムは男が消えた事に気付かず……渾身の拳を突き下ろし、地面に放射状の亀裂と猛烈な振動を走らせた。俺は……今度こそ自分の見た物が信じられなかった。めり込んだ拳の上に……今しがた消えた筈の男が突然現れたのだ。
男はそのままゴーレムの上腕を駆け上がり、空中で見事な右打者のフォームをとると……先端が消える程のスイングスピードで、バットよりも長いハンマーを振り抜いた。
ーキンッー
クリスタルグラスを弾いた様な……澄んだ高音が響く。それは巨大なハンマーを金属の塊に叩きつけたにしては、どうにも似つかわしくない音だった。
男はハンマーを片手にオリハルコンゴーレムの側に着地、オリハルコンゴーレムから軽快なステップで距離を取る。オリハルコンゴーレムは男の姿をキョロキョロと探し、離れた位置に居た男へ身体を向けたが……それがオリハルコンゴーレムの限界だった。
俺達を散々追い詰めた金色の巨人……何をしてもまったく意に介する素振りすら見せなかった、鈍重だが頑強過ぎる存在の頭部に一筋の線が走ったかと思うと……オリハルコンゴーレムの頭には、まるで酔った蜘蛛が作った巣の様な……不規則な亀裂が一瞬で拡がった。
そして次の瞬間、数多のエクスプローラーの攻撃を、尽く跳ね返してきた金色のバケツは……まるで氷点下のバナナの様に粉々に砕け散ったのだった。
もし続きが気になるようでしたら……☆☆☆☆☆とか貰えたら嬉しいですm(_ _)m




