一番熱いコンテンツ
昨日はお休みしてすいませんm(_ _)m
なんとか更新出来ましたので〜〜
家人に見送られて出発した俺と莉子ちゃんは一路佐渡ヶ島へと向かった。
利平爺さんと莉子ちゃんが突貫で仕上げてくれた高機動車は、湧き上がるトルクと四輪操舵の恩恵で、デカい図体に振り回される事もなく、まずまず快適と言っていい乗り心地だ。
「コイツはちょっと驚きだ。正直もっとゴツゴツしたもんかと思ってた」
フェリーの乗り場に到着した俺は、新たな相棒の感触に上機嫌だった。
「そいつは良かったっす。ここまで無言でハンドルを握ってたから、もしかして気に入らなかったかとドキドキしたっすよ……」
助手席の莉子ちゃんは、俺の感想を聞いて胸を撫で下ろしていた。直江津港に着くまで、コイツの癖を把握するために集中していたから要らぬ心配を掛けたようだ。
「心配させて悪かった。想像以上の仕上がりで夢中になってたよ。コイツならタワー攻略の強力なアシストになるのは間違いねぇな」
俺はフェリーへの乗船待ちをしている車列に、相棒を並べながら太鼓判を押した。
「一応、兄さんの計画を聞かしてもらったから、そっちは心配してないっすけど……マジで大丈夫っすかね?」
莉子ちゃんが口にした懸念に俺よりも先に返答したのは、新たな相棒のセンターコンソールに収められたPD謹製の車載端末だった。
『心配無用です。前回の入塔時に私がクラッキングして得た情報から、佐渡ヶ島タワーを形成している機体はステラリモデロ社のコーション2型だと判明しております。こんな旧式マシンに遅れを取る私ではありません』
コイツは、高機動車を使う事が決まった時にPDの本体から渡された物で、ご丁寧に取り付け説明書まで付属されていた。PDいわく高機動車の各種機能を集中的に管理運営するためのインターフェイス兼、俺の持つ端末のバックアップらしい。
「いきなり喋りだすからビビるっすよ。いやそれは何回も聞いたから分かってるっすけど……あたしは講習を受けただけの新米エクスプローラーっすからね。やっぱり緊張はするっすよ」
利平爺さんだけでなく、莉子ちゃんも既に俺が体験したことを全て知っている。というか、この車載端末を取り付けるには知って貰わなければ無理だし……
「まぁ、今回はもう一人強力な助っ人もいるしな……おっと乗船が始まったな」
前方で動き出した世紀末仕様のトラックに続いて……俺は高機動車を乗船タラップに進めた。金曜日のこの時間でも、周りは拳○親衛隊みたいな車両だらけだ。佐渡ヶ島タワーが出来て以来、フェリーもほぼ24時間航行になっているので、この込み具合もさほど不思議では無いのだが……
「正直、周りの車達を見てたら一体どんな所に行くのか……まあウチの子は見た目はともかく、そこらの有象無象に負けやしないっすけど」
「はは……それは頼もしいな」
この子はやっぱり利平爺さんの孫だわ……
――――――――――
俺達は車から離れてフェリーの受付で手続きを済ませた。今回、俺も莉子ちゃんも直接タワーには向かわないので、スポーティな出で立ちではあるものの普段着のままだ。
周りにはマッドでマックスなヤツや、拳○親衛隊みたいなヤツ、はたまたスター・○ォーズのストー○・トルーパーみたいな装備の一団など多種多様なエクスプローラー達が思い思いに到着迄の時間を潰している。
手続きが済んだ俺達もロビー横の自動販売機でコーヒーとコーラ買い込み、ベンチで雑談していたのだが……俺は何かムズムズした物を感じ、視線を上げて周囲を見回した。
周りは相変わらずの人混みだったが、その中のある人物が俺に視線を向けているのに気づいた。隣に立つ男から、何事かを囁かれた彼女は席を離れて俺達の方に歩いてくる。
上下の繋がったワインレッドのジャンプスーツにショートヘアを切り揃えた黒髪の女性……スーツのウエストには多数のポーチが機能的に配置され、体の要所にはインナー式のプロテクターが見て取れる。俺は、至近距離で自分を凝視する見覚えの無い女性を無視するわけにもいかず、仕方なく話し掛けた。
「ええっと……多分初めて会ったと思うんだが……俺に何か用か?」
そう問われても、じっと俺を凝視する彼女。今度は、その様子を見てた莉子ちゃんが少し強い調子で……
「ちょっと……ジロジロ見て失礼っすよ。なんとか言ったらどうすか!」
彼女はそこでハタと我に返った様子で、ゆっくり口を開いた。
「ごめんなさい。さっきあっちに居る男から聞いたんだけど……あなたが噂の新しいレコードホルダーかしら?」
「は?、いや何のこ……ああ!! もしかして1stと2ndの間のスロープのことか?」
「ええ」
「確かにそれは俺だが……」
俺は少し困惑しながら答えた。
「そう……初めまして。私は貴方の前のレコードホルダーだった鼎涼子という者よ」
「え?? 鼎涼子?? マジッすか??」
彼女の自己紹介を聞いて、俺よりも莉子ちゃんが飛び上がらんばかりに驚いている。
「なんだ莉子ちゃん。この人の事知ってるのか?」
「というか……なんで兄さんは知らないんすか? この人、富士タワーで一番高い階層に到達してる正真正銘のトップエクスプローラーす!! この人のオンボードカメラを使った配信は、1000万再生オーバーを連発してる今日本で一番熱いコンテンツなんすよ!?」
へぇ、そんな有名人だったのか。その割にはあんまり周囲の人間は騒いでないが……
「なんでそんな微妙な顔してるっすか!! いや、すみません鼎さん。兄さんがした失礼はこっちで良く言って聞かせますから……良かったらあたしと握手して欲しいっす」
「いいわよ。でも、もう少しだけボリューム落としてくれないかしら? 一応顔出しはNGにしてるから……ね?」
彼女はグローブを外しながらウインクして、すっと右手を差し出した。莉子ちゃんは大喜びしなが両手でしがみつき、彼女の右手をブンブン振り回ししている。意外とミーハーだったんだな……
「それで……その富士タワーのトップエクスプローラーである鼎さんが、俺なんかに何用で?」
「……あんまり構えないで欲しいわね。佐渡ヶ島に出向いているのはギルドからちょっとした要請を受けたからだし。この船に乗ったのは完全に偶然よ。で、佐渡ヶ島ギルド所属の知り合いとフェリーで雑談してたら、久し振りに私が残したレコードが更新されたって聞いたから……どんな人物かと思ってたら、たまたま乗ってるって言うじゃない?」
どうも俺は彼女の興味を引いてしまったらしい。出来ればまだ目立つ行動はしたく無かったので当たり障りの無い返答でお茶を濁しておく事にした。
「前回はたまたまだよ。似た様な道が地元に多いから慣れていただけで……それに、タワーの攻略には何の関係も無いさ……そうだろ?」
「あら、確かに佐渡ヶ島は2nd以降のフロアが転送型だから、2nd以降ではドラテクは重視されないわ。でも、タイムが1st〜2nd間にしかないお遊びだったとしても……あそこのタイムが速い人って結構な確率でトップエクスプローラーになってるのよ? それに……あのタイムは結構攻めたつもりだったんたけどな?」
そういう事は早めに言っておいてくれよ……
もし続きが気になるようでしたら……是非☆☆☆☆☆貰えたら嬉しいですm(_ _)m




