Tower on the 理不尽……②
『アクセスありがとございます。ピルグリム・コロニアル社製、最新テラフォームユニット“プラネットディレクター”は貴方の思い描く新たな未来を創造するお手伝いを致します』
「………は? 何だ今の?」
俺はせり上がってきた陳列台にもう少しだけ近づき、透明な部分を確認する様に覗き込むと……そこには形容しがたい光彩を放つ鉱物が置かれていた。周囲を改めて見廻し、誰も居ない事を確認すると、改めて奇妙な鉱物を観察する。
「今のはいったい……」
『操作方法の解説が必要ですか?』
俺はまたも不意に話掛けてくる誰かの声に驚いてその場から後ろに跳ね跳んだ。
「誰だよ? どっかにカメラでもあんのか?」
若干声を上擦らせながら問い返す。
『私はお客様の起動された製品“プラネットディレクター”のユーザーインターフェースです。私の本体はお客様の眼前にある鉱石……いわゆるダンジョンコアと呼ばれる物です。製品解説が必要ですか?』
????なんだってんだよ……いやここがタワーの中だってのは分かってるけど……製品?コア?テラフォーム??
「すまん……俺には君の事が全く理解の外なんだ。とりあえず君が何者か教えて……欲しい」
『了解致しました。私は惑星を改造し新たに入植可能な環境を整える為に開発されたテラフォーミングユニットの最新バージョン、製品名“プラネットディレクター”です』
「………それは一応さっき聞いたよ。俺が知りたいのは“誰が”君を作って此処に置いたか?って事なんだけど……」
正直未だに理解しかねている。テラフォーム? 環境改造?
実は10年前に突如タワーが地球規模で林立した時、世間ではあらゆる噂がまことしやかに囁かれた。いわくその中にあった一つの大きな勢力が『タワーは地球を征服しようとする異星人の兵器だ』というものだ。
『私は自分がピルグリム・コロニアル社の製品である事は記録されております。しかし販売されてから初めて起動された為にユーザーが未登録であり、現在この場所に設置されている理由は分かりかねます。テラフォーミングを開始されますか?』
「ちょっと待て!! それはちょっと待て!!! いいか、俺が良いと言うまで絶対にテラフォームとか始めるなよ! 絶対だぞ!」
『オーダーコマンドを確認。プリセットテラフォームシークエンスは一時中断されます。それでは先にユーザー登録を行って下さい』
ええい……分からん。いったいタワーって何なんだ? マジで宇宙人(?)が設置した戦略兵器なのか?
「とりあえずユーザー登録って何か説明してくれ」
『コマンド確認。ユーザー登録について。ユーザー登録はプリセットデータにある志向環境がユーザーの求める環境に適合しない場合、コアに生体情報を記録しその求める環境を再登録及びチューニングする為の機能です。これらの機能により本ユニットはあらゆる環境設定に対し抜群の対応性を持つ事に成功しました』
コイツ……ちょいちょいと自分が有能だとアピールして来やがるな。だけどこんな未知の機械(?)にヘソを曲げられたらたまったもんじゃない……ここは一つ穏便に進めよう。
「分かった。じゃぁ君がテラフォームを実行するとどうなるのか教えてくれないか?」
『コマンド確認。テラフォームシークエンスについて。現在本ユニットはプリセットシークエンスを実行する為のエネルギーしか保持しておりません。本ユニットは志向する環境が登録され、テラフォームシークエンスが実行されたと同時に保持エネルギーを使って原生生物を調査する為の擬似空間を形成し、生体エネルギーを収集すると同時にその特性に対して抗生生物を生み出し、原生生物の駆除を行います』
「何だって?!」
『また他のテラフォームユニットがエネルギーの収集において先行している場合、これを妨害、破却する為に有効なアイテムを生成し本ユニットから更に難易度の高いユニットへ攻撃対象を変化させる様に促します』
………なんてこった。マジでこいつら地球への侵略者じゃねーか。
『最後にテラフォームに必要なエネルギーポテンシャルに達した瞬間、形成した擬似空間を最大規模まで拡充し、惑星その物の環境を完全に変換します。この時点でテラフォームが完成となります』
なんてこった……タワーってめちゃくちゃやばい代物じゃねーか。こんなのどうすれば……あっ!
「質問がある。もし他のユニットがもう少しでテラフォームを終える段階に差し迫ったとしたら……それを停止させる方法は有るのか?」
『コマンド確認。ユニットの強制停止について。現在発売されている全てのテラフォームユニットは惑星環境改善保護法第65条において暴走事故を防ぎテラフォーム技術が及ばない程の荒廃を招かない為の安全措置としてコアを破壊した瞬間、保持エネルギーを譲渡し全ての機能を停止する様に設計する事が義務付けられています。従ってユニットが形成する擬似空間を踏破しダンジョンコアを破壊すればそのユニットは安全かつ完全に停止が可能です』
なんてこった……これ、やばいなんてもんじゃないぞ。確か現在地球に存在してるタワーって100を超えてるはずだよな……駄目だ地球終わった。くそ!どうにかなんねぇのか……
『説明を終了しますか? その場合はユーザー登録に移行しま……』
待てよ……地球滅亡のピンチってのは変らないけど……この“プラネットディレクター”を……
「最後の質問だ! もしユーザー登録された環境志向が現在の環境と全く同じなら君のテラフォーム技術とエネルギーはどう作動する?」
『コマンド確認。環境保全モードについて。もし現在の環境がユーザーの志向に合致し、大きな変化を必要としない場合、擬似空間は最小限しか形成されず保持している技術とエネルギーは環境保全に必要なサイクルを新たに形成しユーザーの認証を得て運用されます』
「その時もし他にテラフォームユニットが稼働してた場合は??」
『その場合、収集と稼働出来る全力を以って既存ユニットの破壊シークエンスを実行します』
もし続きが気になるようでしたら☆☆☆☆☆とか貰えたら嬉しいですm(_ _)m